『Destiny』 上手く混ぜられた“ゲームカクテル”

 

4-Hour Impressionは、ゲーム開始後4時間段階での印象をお伝えするファーストインプレッション企画です。第11回は、PS4/PS3/Xbox One/Xbox 360の豪快な縦マルチリリース(ただし現状Xboxについては海外のみ)が予定されている『Destiny』ベータ。9月11日の発売に向け、7月18日から27日までの10日間βテストが実施されていました。本稿執筆にあたってプレイしたのはPS4版。

 


よく混ざっている

 

『Destiny』はBungieが放つ渾身の新規IPで、おおむね『HALO』と『Borderlands』と『ファンタシースターオンライン』を合身させたうえで現代的でシームレスなセッション参加システムをまぶしたタイトルです、非常にできが良いので発売日が楽しみです。

と、冗談めかして決着させてもあながちピンぼけでもありません。高めに見積もっても本作は『HALO』をベースとしたハック&スラッシュであり、「どこかで見たアレとコレ」の感想が出るのは自然ですらあります。

ただし『メタルスラッグディフェンス』のインプレッションでも述べたとおり、創意工夫の多寡がゲームの価値に直結するとはかぎりません。『Destiny』はベータの段階ですでに高い品質に到達しており、ごくごくシンプルな「プレイしていて楽しい」を実現しています。

 


"ゲームカクテル"の材料

 

Bungieの作品なのですから触感が『HALO』に似ていることは減点要素たりえず、むしろ安心感を与える加点ポイントです。「パッドでFPS」の最先端に『HALO』が、いやBungieが鎮座していると再認識させられます。

ベースが『HALO』であるならば何を混ぜても大丈夫というわけではない……『Destiny』からはそんな慎重さと繊細さも感じられます。上述のようなタイトル群と比較されることを見越しているにちがいありません。

FPSとして、MOとして、ハクスラとして、SFとして、次世代機の代表作として。それぞれの基準で対抗馬と比較したとき、本作は大きく劣る点がほぼ見受けられません。最近「隙のない」ゲームが増えてきた印象がありますが、『Destiny』は文句のないAAAでありながらそれを実現しました。

似ているゲームとしてまっさきに挙げられるであろう『Borderlands』と比べても、根幹部であるFPSとして勝り、広がりのあるハクスラとして(ベータにもかかわらず)劣るとも思えず、それらを支えるグラフィックスやサウンドについても一枚上手と評価するのが妥当です。「数年前の前世代機タイトルとの勝負なのだから勝って当然」と考えてはなりません。『Borderlands』ほどの個性を打ちたて人気を博したタイトルと並べられることは、それだけで驚くに値します。

世の中「混ぜて振っただけ」のマズいカクテルのようなゲームが星の数ほどあります。『Destiny』はそのような素人の雑な仕事ではなく、入念に各素材をマッチさせるよう腐心した形跡が見受けられます。

 

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意外な相性のよさ、PS4パッド

 

FPSに適したパッドといえばXbox360コントローラー。無論人それぞれ趣味趣向はありますが、初代『HALO』が世に出て以来多数派の意見はなかなかくつがえりませんでした。しかし世界はあらたなフェーズへと突入しているのかもしれません。つまり、DUALSHOCK 4でのプレイが快適だったのです。

コントローラーについてPS4がPS3から進化した点は数多くあります。どうやら、アナログスティックの改善はプレイヤーにとくに大きな恩恵をあたえそうです。親指が接触する部分を見なおした結果どうなったか。ありていに言ってしまえば、「Xbox 360コントローラーに追いつき追い越した」です。Xbox 360でFPS/TPSをプレイしていればしているほど、その恩寵を強く感じられることでしょう。

Co-opプレイは、基本的にはハクスラらしくまったりとした進行です。しかし、ときおり登場する刺激的な調整の敵は本気のFPSプレイングを求めてきます。そのさい、DUALSHOCK 4はプレイヤースキルをゲーム内キャラクターへ存分に伝えるでしょう。もはや「コントローラーでプラットフォームを選ぶ」時代ではなくなりつつあるのかもしれません。

 


対戦したいと思える

 

正直に告白すると、『Destiny』にはほとんど期待していませんでした。友人が来宅し勝手にPS4を起動してベータをインストールし「あとでマルチやろうぜ」と言ってくれなければ、たぶん本当にスルーしていました。『HALO』シリーズはほぼすべてプレイしているにもかかわらず、です。

新規IPだからといってなめていたわけでも、『Borderlands』が嫌いだったわけでも、PS4を起動するのが面倒だったわけでもありません。なぜか見逃していました。汗顔の至りです。

『Destiny』ベータをひととおりプレイして自分のなかにある感情がわきあがり、ひとり驚きました。それは「対戦したい」。FPS対戦をほとんどコンソール機ではせず、PCつまりマウスとキーボードで挑んできた私にとって、それは革命的な心理状態でした。

個々が異なる装備を持ちこむ以上、けっして平等な対戦にはなりえません。『Battlefield』シリーズでは、この"不平等さ"がプレイヤーにストレスを与えていました。他方本作ではおそらく、ハクスラで気持よくアイテムをかき集め、対戦で"実戦投入"し、あれこれと試行錯誤することになるのでしょう。そんな楽しみがはっきりとした輪郭をもって伝わってきます。

ActivisionとBungieの10年を担うタイトルとして、すでに片鱗をうかがわせる『Destiny』。あらたな"鉄板"が生まれようとしています。

 

ただ、字幕がやたら読みづらいのだけはどうにかしていただきたいところです。非表示にせざるをえません。
ただ、字幕がやたら読みづらいのだけはどうにかしていただきたいところです。非表示にせざるをえません。