『Age of Mythology: Extended Edition』 / 帰ってきた神話の時代


4時間あればイナフだ。プレイ開始後4時間段階での感想をお届けするのが[4 Hours Impression]です。第4回はSteamで5月9日にリリースされた『Age of Mythology: Extended Edition』(以下『AoM EE』)。タイトルのとおり名作RTS『Age of Mythology』(以下『AoM』)のリメイク版で、エキスパンションの『The Titans』の内容も含まれています。

 

プレイヤーも神話級だった時代

『AoM』が登場したのはじつに10年以上前の2002年。金字塔としての『AoE』シリーズを打ち立てた Ensemble Studios の新作であり、前作『Age of Empires II: The Conquerors』(以下『AoC』)までとは異なり、「神話」の要素を織り込んだ世界観が路線変更でした。ただし(上級者目線はともかく)ゲーム自体は従来のものを踏襲しており、慣れたプレイヤーならば簡単に入り込めたことでしょう。ちなみに後にリリースされた『Age of Empires III』(以下『AoE3』は、RTSの根幹部分に大きくメスが入っていました。

さて、情け無用の対戦ツールとしての『AoM』、じつは日本のゲーマーにとって大きな意味を持つタイトルでもあります。それは、”HALEN”と名乗るプレイヤーの存在です。今でこそe-Sportsという形でゲーム競技シーンが盛り上がっていますが、彼はその世界に2000年代初頭から身を投じていたのです。

今でも検索すればHALEN 氏の華々しい成果はいくつか出てきます。World Cyber Games 2002 『AoC』部門ではなんと優勝の栄冠を勝ち取っています。グローバルに遊ばれるタイトルにおいて、世界の頂点付近に日本人が仁王立ちしていた時代があったのです。しかし、彼は翌年のWCG2003の『AoM』ではふるいませんでした。その理由の詳細は Game Watch 誌のインタビューをご参照ください。伝説的なやりとり Q:「それでも世界レベルの試合はセトでなければ勝てない?」 A: 「勝てないです」は、安田のゲーム観に大きな影響を与えました。

しかしながら、結果はともあれ HALEN 氏が RTS プレイヤーとして世界にたいし存在感を当時から放っていたことは疑いようがなく、すなわち日本人プレイヤーも神話級だったのです。

 

初心者としてプレイしてみて

歴史の時間はここまでにして、『AoM EE』の話。正直にお伝えすると、私は『AoM』をろくにプレイしていませんでした。当時買うには買ったのですが、RTS 初心者としてはハードルが低くなく、対戦はおろか AI 相手でも『シムシティ』めいたプレイ以外できず、面白さを理解するにいたりませんでした。買ったゲームソフトは卒業のおりに大学の後輩にあげてしまいました(手違いで起動ディスクだけを渡してしまったのがいまだに忘れられません)。

RTSにのめりこめないまま時は過ぎました。そんな私に訪れた契機は『AoE3』。一新されたゲームシステムは、素人目にはどちらかといえば単純化したように映り(ようするに簡単そうに見えた)、中世をテーマとした世界観も好みであり、さらにマッチング・ロビー機能等も当時としては充分でした。

 

私が初めて真面目にプレイしたRTS、それが『AoE3』。
私が初めて真面目にプレイしたRTS、それが『AoE3』。

 

さて、『AoE3』でそれなりにRTS慣れし、『Age of Empires Online』という悲劇も乗り越えた私が『AoM EE』に挑み直後いだいた感想は「難しすぎ」でした。そもそもRTSにふれたのが久方ぶりだったということを差し引いても、ゲームシステムが難解であると感じるのは当然であったように思えます。もともとシビアなゲームなのだから当たり前といえば当たり前なのですが、スタート地点は「頭をかかえる」でした。そして今なおかかえたままです。

 

新規勢が挑めるのか?

『AoM EE』をほぼゼロベースからスタートするにあたり、上述のとおり敷居は低くありません。ソロでいきなりクイックマッチの大海原にこぎだせる豪の者はともかく、常人ならばまもなく心が折れてしまうことでしょう。

しかも、なにせ一昔のタイトルです。すくなくとも日本語の攻略テキストはインターネット上にあまりなく、定石の戦術を探し当てることすら一苦労。真面目に調べるとなると英語であたるほかありません。さらに、現状(5月13日現在)日本語が正常に表示されないバグがあり、”難度”に拍車がかかります。

では(私のような)初心者がどのように『AoM EE』に挑むべきか? 答は2つあります。まず、レーティングに影響するような真剣勝負を避ける。残念ながら、敗因を理解し学ぶことすらできず敗北することが自明だからです。せめて AI を徹底的に蹂躙できるようになるまでは挑戦しないのが精神衛生によいと思われます。

もう1つ、こちらの方が大事なのですが、同作をプレイするフレンドを複数見つけること。たとえば4人いれば2vs2のチーム戦もできますし、敵AIをサンドバックにする(される)4vs4もできます。これはRTSに順応するにあたり非常に重要です。

 

お祭り騒ぎ的な遊び方。
お祭り騒ぎ的な遊び方。

 

なぜかというと、h2h(head to head、一対一の対戦。タイマン)とくらべて”責任の所在”が曖昧になるからです。勝てば単純に嬉しく、負けても「自分のせいで負けた……!」と自責の念にかられる度合いも薄まります(あくまでも薄まるだけで、戦犯は戦犯たりえるのですが)。

志の低さここに極まれりといった風情なものの、本身で抜身のゲームに相対するにあたり、それくらいの心構えのほうがバランスがとれているというものです。もっとも、すでに経験を積んだ先達に教えを請うのがベストなのですが、それこそ現実的ではありません。

よほどの上級者でなければ、RTSといえば定石を覚えることからすべては始まります。なればこそ、定石があきらかでない(ように思える)うちは、エンジョイ勢から入るほうがよさそうです。

 

初心者オブ初心者向けTips

やや蛇足気味ですが、「RTS? なにそれ? DOTA系と何が違うの?」な向きのために、はなはだ簡易ではありますが基礎の基礎をお伝えしておきます。

まず、いわゆる内政(各資源を増やす行為全般)は「止めない」ことが最大のポイントです。”農民”は常に活動していなければなりません。逆にいうと、アイドル状態の農民が発生するのは避ける必要があります。そのために、常時「待機農民を指定するキー(デフォルトでは”.”)」を連打するとよいでしょう。ただし、”.”キーはホームポジションからすると押しやすいとは言いがたい位置にあります。他のキーをアサインするか、可能であればマウスの何らかのボタンにバインドしてしまうのがオススメです。

戦闘は、ひとまず相性うんぬんは後回し,。まずはランチェスターの法則がすべて、という認識をたたきこみましょう。何もかも捨て去って要約すると「数が多いほうが勝つ」です。これはつまり同じ操作量の相手と対戦する場合、「相手の軍隊にあきらかな数的優位がある場合、撤退する」です。無意味に軍を摩耗させるのではなく、撤退し、引きこもり、相手の兵站を伸ばし、頭数をそろえた段階で反撃するのです。最悪なのは、各個撃破されてしまうこと。上級プレイヤーは、ほぼ全員が心眼レベルの撤退スキルを持っています。斥候・偵察が重要であるというのは、これにつながります。

 

地獄開始!
地獄開始!

 

さて……。私のような初心者が申しあげるのも気がひけるのですが……、良き『AoM』ライフを! 胃が痛くなるような殺しあいを楽しみましょう。