音楽ゲーム、通称「音ゲー」。日本ではアーケード筐体やスマートフォンゲームを中心に根強い人気が続いている同ジャンルだが、近年は台湾からも独自の音ゲーが多数登場していることをご存知だろうか。Rayark Internationalの『Deemo』などはその代表格であり、日本の音ゲーではあまり見られない独自の世界観が魅力となっている。

そして2016年夏、台湾の新設スタジオNoxy Gamesは、新しい操作感を持つ音楽ゲーム『Lanota』をiOS/Androidにて発売した。

『Lanota』の最大の特徴は、その円形のレーンだ。ノートは円の中心部から流れてくるので、プレイヤーはノートが円の外側に重なった時にタップすればいい。アーケード筐体の『maimai』と似たような内容かと思いきや、『Lanota』の円形のレーンは拡大縮小したり回転したりと躍動感たっぷりに動く。この動きがプレイ中の楽曲や背景のストーリーと合わさり、今までにない共感覚を味わえるのである。

また、前述のRayark産の音ゲーよりもしっかりとしたメインストーリーが描かれるのも『Lanota』の特徴だ。『Lanota』の世界は「アル・ニエンテ」とよばれる大異変により人類が滅亡しかけている。プレイヤーは旋律の才能を持つ少年リツモと、機械工作が得意な少女フィシカの旅を追うことになる。2人はフィシカが開発した装置(=円形のレーン)を使って、地上に存在するエネルギー源「ノタリウム」を調律していくのだ。

そしてもう1つ、『Lanota』の特徴といえば、公式Twitterアカウントがいい意味で“ぶっきらぼう”という点だろう。プレイヤーや開発者のアカウントとフランクな態度でコミュニケーションする様子は、ほかの公式Twitterアカウントにはない魅力がある。今回はプランナーがTwitter上で突然「切腹しよう」と宣言した事件に「プランナー切腹賞」を贈る……という名目にかこつけ、Noxy Gamesと『Lanota』に関する取材を敢行した。

 

――今回は「プランナー切腹賞」という、とんでもなく馬鹿げた賞を受けていただきありがとうございます。

Noxy Games サウンドディレクター 呉 俊秀氏:
そうですね(笑)。

――ゲームプランナーのSYMさんのツイートと、公式のやり取りは衝撃的でした。ちなみにプランナーさんはなぜ『Lanota』の公式アカウントとは別にTwitterをやられているんでしょうか。

俊秀氏:
『Lanota』はメインストーリーがあるので、物語や曲の開発が他の作品とくらべて長くなってしまうんです。だからTwitter上で情報発信ができない期間ができてしまって、それを防ぐためにプランナーにツイートしてもらうようにしました。

――そのプランナーが切腹しようとした理由は?

俊秀氏:
SYMさんは社用とは別に個人のTwitterアカウントを持っているんですね。その個人アカウントであるツイートをするつもりが、間違えて公式のアカウントで誤爆してしまったんです。そのあとに誤爆の件で「切腹しよう」と発言しました。

――なるほど、ではあれは反省のツイートだったんですね。

https://twitter.com/sym_lanota/status/799826284033388544

――『Lanota』の公式Twitterアカウントは非常にシニカルというか、毒舌で面白いと思っていました。ほかの公式アカウントではあり得ないぐらい鋭いツイートをしますよね。

俊秀氏:
正直なところ僕個人の感覚だと、あれを嫌がる人もいるんじゃないかなあと思ってるんです。

――確かにギリギリのラインではあると思います。でも新鮮で、僕はあの感じ好きですね。

俊秀氏:
なるほど、尖っている感じというか……。

Noxy Games プランナー  SYM氏:
最近はちゃんと反省しています、暴言が多すぎなんで(笑)。

※『Lanota』の公式Twitterアカウントは社員全員で共有されているとのこと(編集部注釈)。

俊秀氏:
だって公式アカウントで「お前」って無いでしょう(笑)。

――ほかではまず無いですね(笑)。でもその斬新さがいいです。

https://twitter.com/sym_lanota/status/793807624420544512

――……コホン、では真面目にゲームのお話をさせていただければと思います。まず『Lanota』の魅力を日本人のプレイヤーにお伝えいただけますか。

俊秀氏:
ほかの作品とくらべてプレイ感覚が違う、新しいタイプの音楽ゲームですよね。RPG的なエッセンスもあります。

――『Lanota』の特徴といえば、まずは物語の中で「調律装置」として登場してくる丸いレーンですよね。日本だと『maimai』という音ゲーがあって、あれも丸いレーンですが、こちらはぐるぐると動き回ります。このレーンを思いついた経緯は?

俊秀氏:
実は最初、『Lanota』は普通の音楽ゲームだったんです。昔からある伝統的な“上から落ちてくる”レーンのデザインで、下の判定ラインは半円でした。それをひとまず試しに作ってみたんですが、遊んでみると何か物足りないなと。じゃあ判定ラインが円形だから試しに円を動かしてみようとなって、それがすごく新鮮だったんですね。それで採用しました。

――『Lanota』のレーンは曲と連動して動いて、背景にあるストーリーも躍動感たっぷりに伝えますよね。僕は「Prism」という曲が好きなんですが、あれも曲のテーマである“歩く”を譜面とレーンの動きで巧みに伝えています。

SYM氏:
ありがとうございます。「Prism」は私が譜面を書いたんですが、確かに曲を聞きながら歩きましょうという感じの譜面を目指しましたね。

――譜面だけでなくレーンが動き回る演出を考える、というのはなかなか大変そうに思えます。

Noxy Games 社長 凃 (トゥ)氏:
この会社の開発者は全員ハードコアの音ゲーマーなので、譜面の書き方はだいたいわかってるんですよね。まず譜面をデザインして、あとで円形のレーンのアニメーションをエディットする感じになります。時間はかかりますけど、そんなに大変ではないですよ。

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――『Lanota』に登場しているアーティストの方々を教えていただけますか。

俊秀氏:
まず仲良くさせていただいてるヒゲドライVANの皆さんをはじめ、DJ’TEKINA//SOMETHINGさん、Massive New Krew、カラスヤサボウさんや、な音の台湾をこよなく愛する風雅なおとさんとbakerさんなど、ほかにもたくさんの方が協力してくれています。

――日本人の方が多いですよね。ゲーム中の曲も日本語で歌っているものが多いです。

俊秀氏:
半分以上の曲が日本人によって書かれていますね。「音ゲー」って、アニメとかJRPGみたいな感じで、日本でまず出来たものと思っています。日本から伝わったものなので、自然にプレイヤーも東南アジアに集中している。なので今まで音楽ゲームをプレイしてきたプレイヤーは、きっと日本のアーティストもしくは歌手の方がすっと耳に入るんじゃないかなあと。

――では台湾で配信されているバージョンは歌詞が台湾語だったり、というわけではないんですね。

俊秀氏:
はい、日本で配信されているバージョンとまったく同じです。

■参加アーティスト一覧
・Tiny Minim – https://www.facebook.com/tinyminim/
・カラスヤサボウ – https://twitter.com/tghgworks_krsy
・yanagi – http://yanagi.ash.jp/
・小林未郁 – http://miccabose.com/
・な音 – http://ameblo.jp/baker-naoto
・Triodust – https://www.facebook.com/Triodust
・emon(Tes.) – https://twitter.com/emon316
・Yukino
・Massive New Krew – http://massivenewkrew.com/
・bermei.inazawa – http://www.studio-campanella.com/
・茶太 – http://chata.moo.jp/
・ヒゲドライVAN – http://higedrivan.net/
・Powerless – http://powerlesssounds.tumblr.com/
・DJ’TEKINA//SOMETHING – http://djtekina.club/
・3R2 – http://www.3r2music.com/
・SIHanatsuka – https://twitter.com/sihanatsuka
・マチゲリータ – http://machigerita.com/
・void(Mournfinale) – http://mournfinale.com/
・kalon. – https://twitter.com/maple_kalon
・makou – http://www.makou.com/
・小林友美 – https://twitter.com/myon_35
・Tatsh – http://tmccd.web.fc2.com/
・小田ユウ – https://twitter.com/odayuuu
・Moose – https://twitter.com/moose827
・DJ OKAWARI – http://www.djokawari.com/
・ARForest – https://twitter.com/tmdghks7288
・jioyi – https://twitter.com/jioyi_

――『Lanota』は今年夏に発売されましたが、同作を開発したNoxy Gamesがどのように設立されたのか、経緯を教えていただいてよろしいですか。

俊秀氏:
もともとNoxy Gamesの社長はプログラマで、それを本業としていました。でも1人の音ゲープレイヤーとして、自分の音ゲーを商業作品として作りたかったんですね。そこで先ほど話していたプロトタイプを作ってみて、みんなに遊んでもらった反応を見たら、これでいけるんじゃないかという気になって。

いま会社にいる5人は、みんな音ゲー仲間というか、だいたいが知り合いなんです。みんなでサウンド担当やシナリオ担当、SYMさんはプランナー担当と決めていきました。グラフィック担当も友人からの紹介ですね。そうやって集まったみんなはまだ若いし、ならいっそ会社を作ってみようじゃないかと(笑)。

凃氏:
開発者のみなさんはだいたい20代ですね、うちの会社で一番年上なのはシュウさんです(笑)。

俊秀氏:
僕だけ30代です(笑)。

――好きなゲームを作るために集まって、というのは確かにインディーゲームの開発スタジオという感じがしますね(『Lanota』は東京ゲームショウ2016のインディーゲームブースに出展されている)。ちなみに皆さんの腕前はどれぐらいなんでしょうか?

俊秀氏:
『beatmania IIDX』でしたら、社内全員SP十段以上で、2人が全曲HARDクリアかな。 ほかに『ギタドラ』のトップランカー決定戦アジアエリアのファイナリストや、『DJMAX TECHNIKA』公式国内大会ワンツートップなどがいますよ。

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――先ほども少し話が出ましたが、台湾で音ゲーはどう楽しまれているんでしょうか。

俊秀氏:
稼働しているアーケード筐体の種類は少ないかもしれませんが、ほぼ日本と差がないんじゃないでしょうかね。さっきお話した『maimai』は動いてますけど、『チューニズム』はまだこちらでは稼働していませんね。

――台湾の音ゲーは基本的に日本の音ゲーが稼働しているんでしょうか。

俊秀氏:
今はそうですね。アーケードだけじゃなくて、モバイルも日本と変わらないんじゃないですかね。『スクフェス(ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)』とか、『デレステ(アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ)』とか。台湾産ではRyarkの『Deemo』とかもあります。

――台湾で音ゲーシーンが始まったのはいつごろですか。

俊秀氏:
いつからでしょうね。Noxy Gamesでは僕の音ゲー歴が一番長くて、1999年初頭からプレイし始めました。その時も日本と同じく『beatmania』があって、『ダンレボ(ダンスダンスレボリューション)』が爆発的にヒットして、日本みたいに社会現象になって。最近の世代でいうと、『jubeat』辺りから始めた方が多いんじゃないかなあ。スマホではさっき言ったRayarkさんのゲームや、音ゲー要素がある育成ゲームもありますし、そこから入ってくる人もいるんじゃないですかね

――1999年代ぐらいから、というのは少し驚きです。『beatmania』が五鍵の時代ですよね。

俊秀氏:
そうですね、五鍵時代ですね(笑)。

――台湾産のアーケード音楽ゲームは、いままで無かったんでしょうか?

俊秀氏:
おもにIGSという会社が色々リリースしていましたね。それとRayArkの前身であるHYPAA Studioも作っていました。今でも稼動しているタイトルはIGSさんの『DANZ BASE』というダンスシミュレーションゲームですね。

――日本の音ゲーと台湾の音ゲーを比べると、台湾の音ゲーは世界観が独特なものが多いですよね。『Lanota』のようにキュートだったり、童話的だったり。

俊秀氏:
SYMさんも同じ意見なんですが、日本ですでにやっているから、それにぶつからないように、ほかの道を模索しようというのがまずあるじゃないでしょうかね。でもRayarkの『Cytus』なんかは今までの音ゲーの路線を続いている感じはしますよね。でもやっぱり『Deemo』から大きく変わったのかなあ。

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――『Lanota』では定期的に新規コンテンツが配信されていますが、次のアップデートはどうなるんでしょうか。

俊秀氏:
次のアップデートはおそらく1月中旬になります。

SYM氏:
いま必死に頑張って作っています。次のアップデートは、Twitterで言っていたように大々的な変化があります。

――もしよければヒントを……。

俊秀氏:
まず新しいモードというか、コンテンツといっていいかな、新コンテンツが追加されます。

SYM氏:
メインストーリーもサイドストーリーもない、新しいコンテンツです。

俊秀氏:
『Lanota』ではメインストーリーとサイドストーリーの開発が伸びることが多いんですね。その最大の原因の1つが、イラストとストーリーを用意しなければならないという点なんです。それにストーリーがあるので、ステージの楽曲もお話に合わせなければならない。そういう形になると、楽曲の方向性が限定されてしまう感じになります。新しいコンテンツでは、開発がもっとスムーズにできて、プラス楽曲の幅も広くできるようになるんじゃないかなあと考えていて、それが今度のアップデートで追加されますね。

――楽しみです。僕はMasterのさらに1つ上の難易度が入るんじゃないかと心配でした(笑)。

SYM氏:
いやいやいや、それはさすがに、殺人譜面が増えてしまう(笑)。

俊秀氏:
あと日本でこの記事を見ている方が来られるかどうかわからないんですけど、1月20日から台北ゲームショウに『Lanota』を出展します。東京ゲームショウ2016の時みたいに、新しいノベルティを配ったり、試遊も用意してたりしますんで、もし来られる方がいれば、ぜひうちのブースに遊びに来てください。

――Noxy Gamesの今後のプランはいかがでしょう。

俊秀氏:
次のタイトルがどうなるかはまだ決定してませんが、まず『Lanota』のストーリーを最後まで伝えたいと思っています。

――難しい質問だとは思うんですが、『Lanota』は全部でいくつのチャプターを想定されているんですか。

俊秀氏:
ちょっとわからないですね(笑)。

SYM氏:
物語は最後まで考えていて、しっかりとしたボリュームがあります。ただ現実的に考えた場合、それをどこまでゲームとして提供するのかは、まだ決めてないんですね。

――ありがとうございます。これからも開発を頑張って頂きたく思います。自分は「cyanine」のMasterをクリアできるように特訓します……ちなみに、みなさんクリアはされてるんですか?

俊秀氏:
SYMさんは「cyanine」のMasterはフルコンボです。

SYM氏:
みんなハードコア音ゲーマーなので(笑)。自分が書いた譜面だから、自分でフルコンボできないのは嫌ですね。すべての譜面は、自分がフルコンボした後に正式採用されます。

――すごいですね。僕は「cyanine」のMasterを見た瞬間、「どうかしてる」とつぶやいてしまいました。

SYM氏:
でも楽しいですよね(笑)。

たびたびSYM氏がアップしている「アップデートが延びているすべての元凶」。なおネコは4匹飼っているらしい Image Credit: @SYM_Lanota
たびたびSYM氏がアップしている「アップデートが延びているすべての元凶」。なおネコは4匹飼っているらしい Image Credit: @SYM_Lanota