『フォートナイト』から考える“ガチャに頼らない”課金モデル構築。射幸性ビジネスからの脱却によりゲームプレイに好循環を生む試み

今年3月に入り、国内版の配信およびモバイル版の招待受付が開始された『フォートナイト バトルロイヤル』。累計プレイヤー数4000万人超えと怒涛の勢いに乗る本作を、他のバトルロイヤルゲームから区別する上でよく注目されるのはゲームプレイの要となる建築機能であるが、マイクロトランザクション(ゲーム内少額課金)にルートボックスが含まれていないという、マネタイズ面での明確な違いも存在する。

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同ジャンルの先駆者である『H1Z1』『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)はいずれも提供アイテムの内容がランダムで決まるルートボックスを有料販売しており、これまで「バトルロイヤルゲームの少額課金=ルートボックス販売」というのが主流であった。また『フォートナイト バトルロイヤル』の運営元であるEpic Gamesとしても、同作と同じF2P(基本プレイ無料)タイトルである『Paragon』および『フォートナイト』のPvEコンテンツ「世界を救え」にて、ルートボックスを中心とした課金モデルを採用してきた実績がある(「世界を救え」の早期アクセス版は有料販売されているが、正式リリース時にはF2P化する予定)。

つまりバトルロイヤルというジャンルから見ても、Epic Gamesという企業が手がけてきたF2Pタイトルの先例から見ても、ルートボックスを除外するというのは予想外とも言える、思い切った方向転換なのである。本作は発表当初から『PUBG』の影響を隠さず前面に出しており、『PUBG』の開発元が「ゲーム体験の複製」を懸念する声明を出したこともある(関連記事)。 確かにゲームデザインの中核部分には類似性が見られるが、課金モデルとしては全く異なる路線に進んだのである。Steamマーケットプレイスを活用している『PUBG』『H1Z1』のようなユーザ同士の取引活性化を図れないという違いもあるが、そうした事情を差し引いても、これまでルートボックス販売を定常的に行ってきたEpic Gamesが新しいマネタイズ手段に舵を切ったという事実は注目に値する。ではなぜ、ルートボックスを入れないという判断に至ったのか。本稿では、現在の課金モデルに至った経緯と、そのメリットについて考察していく。

 

「世界を救え」から始まった脱ルートボックスの流れ

運がなくても、時間をかければ目当てのアイテムが手に入るように改良されていった

脱ルートボックスに関しては、PvEコンテンツ『フォートナイト』(世界を救え)で浴びた批判がきっかけとなり、射幸性に頼らないアイテム提供手段の模索が始まったというのが一番の要因ではないだろうか。つまり『フォートナイト』(世界を救え)の反省を踏まえて構築されたのが『フォートナイト バトルロイヤル』の「バトルパス」およびゲーム内ショップのアイテム直販売というわけだ。

2017年7月に『フォートナイト』(世界を救え)の早期アクセス販売が開始されてからというもの、コミュニティからは同作のルートボックスに対する不満の声が寄せられていた。ルートボックスの中身は、ゲーム内キャラクターの成長に直結するアイテムとなっている。具体的にはレアリティ毎に性能が異なる操作キャラクター(ヒーロー)、武器設計図、能力補正ユニットなど。F2Pタイトルとしては一般的だが、本作の早期アクセス版は本体有料で販売されているという事情や、アイテムの引きが弱いと攻略効率に大きな差が出るという歯がゆさが影響し、発売初期の段階から、どんなプレイヤーでも確実に前に進めるよう成長システムのメス入れが求められていた。

ルートボックスの購入に必要なゲーム内通貨「V-Bucks」はログインボーナスやクエスト報酬としても配布されているため、少額課金システムを利用しなくても時間をかければキャラクターを育てることができる。ただし成長速度は緩慢であった

同作のエグゼクティブ・プロデューサーであるZak Phelps氏は、そうした課題を認識している旨、7月下旬に公式フォーラム上でレスポンス文を投稿している。かなり早い時点で成長システムの改善に向けた取り組みが始まっていたのだ。その後は、高レアリティのヒーロー/設計図を確定で入手できる期間限定イベントの開催や、低レアリティユニットの合成による高レアリティユニットの取得、クエスト報酬アイテムを使ったヒーローのレアリティ上昇、ゲーム内通貨によるヒーロー/アイテムの直購入など、欲しい物を確実に手に入れるための道筋が次々と切り開かれていった。

2017年11月にElectronic Arts/DICEの『Star Wars バトルフロント II』がゲーム内課金要素の一時停止を発表した翌日には、運要素に頼らないアイテム取得方法のさらなる追加を計画している旨、念を押すような告知を出している。『Star Wars バトルフロント II』が軌道修正を余儀なくされた直後に発表したのは単なる偶然かもしれないが、結果として『フォートナイト』はルートボックス騒動に巻き込まれることなく成長を遂げていった。そして後述するように、シーズン毎に切り替わる販売アイテムの品揃えや、ゲームをプレイすることで期間限定キャラクターをアンロックしていく仕組みは、『フォートナイト バトルロイヤル』の課金モデル形成にも生かされている。

無償ゲーム内通貨で購入するイベント限定/ウィークリーアイテム

マスメディアに糾弾材料を与えない

2017年9月に発表された『フォートナイト バトルロイヤル』は、約半年の間に破竹の勢いで成長を遂げていった。今では累計プレイヤー数4000万人を超える大ヒット作として世界中で親しまれており、欧米国ではマスメディアに取り上げられる機会も増えつつある。

英国のトーク番組「This Morning」では、「I Lost My 10-Year-Old Son to Fortnite(私は『フォートナイト』のせいで10歳の息子を失いました)」というタイトルのインタビューにて、息子のゲーム中毒を懸念する一般人の母親が出演。彼女の息子はこれまでにも複数のゲームをプレイしてきたが、『フォートナイト バトルロイヤル』を始めてからというもの、約束したプレイ時間の制限を守れなくなり、ゲーム以外のアクティビティに関心を示さなくなったと、同作が子供の私生活に悪影響を与えている旨を主張していた(該当動画リンク)。また北米の情報番組「Good Morning America」も、同作のせいで子供たちがゲーム中毒になってしまうのではないかという、親目線の意見をまとめた特集を組んでいる。

このように、『フォートナイト バトルロイヤル』は『Pokémon GO』配信当初の熱狂振りを彷彿とさせるバイラルヒットとなったわけだが、本作は昨今のトレンドとなっているルートボックスの是非、ゲームの暴力性、性的表現の糾弾といったトピックからは距離を置いている。先述した「Good Morning America」はゲーム内における暴力表現規制の必要性を主張するドナルド・トランプ大統領の話題から『フォートナイト』の危険性に話につなげているが、蓋を開けてみると本作の暴力性を批判する特集にはなっていない。『フォートナイト』特有の問題というよりは、ビデオゲーム全般に言える「ゲームのやりすぎ」問題に終始している。番組に出演した臨床心理士Jonathan Fader氏の意見も、何事もやりすぎは禁物で、子供たちが適度なプレイ時間を保てるよう親がバランスを取るべきだという無難な着地点に収まっている。むしろ同作で求められるコミュニケーションの多さを、ゲームを遊ぶメリットとして挙げているくらいだ。

過度な暴力表現や性的表現、射幸心を煽るルートボックスとも無縁な『フォートナイト バトルロイヤル』は、マスメディアとしてもセンセーショナルな叩き方をしにくいタイトルなのだろう。かくして本作は、ゲーム業界を取り巻く各種騒動に巻き込まれることなく、そして大きなマイナスイメージをつけることなく世界的なヒット作へと成長を遂げていった。アメリカやカナダで販売されるゲームのレーティングを行なっている非営利団体ESRB(Entertainment Software Rating Board)による『フォートナイト』のレーティングは「T(13歳以上)」。対象年齢の低いタイトルゆえに過度な暴力・性的表現を含んでいないのは当然として、企業としての先例に反してルートボックスを除外するという判断に至ったのは、先見の明があったと言えるだろう。それもこれも、『フォートナイト』(世界を救え)の開発チームが、ルートボックス騒動が本格化する前からランダム報酬に対するコミュニティの不満を感じ取り、別のあり方をいち早く模索し始めていたから成し得たことなのかもしれない。

 

プレイする理由を与え続ける課金システム

プレイすればするほど報酬がアンロックされる「バトルパス」

では脱ルートボックスを図った『フォートナイト バトルロイヤル』の課金システムはどのような内容で、プレイ体験にどのような影響を及ぼしているのだろうか。先述したトーク番組「This Morning」に出演した少年は『フォートナイト バトルロイヤル』から離れられない理由として、「複数のレベルや新しいスキン」があることを挙げており、マッチ自体を楽しむだけでなく、友人とアイテムのアンロック進捗を競い合うという側面があることを示している。マッチ中の展開の面白さだけでなく、課金システムそのものがプレイし続けるインセンティブを与えているということになる。

本作の課金システムは、約2か月半のシーズン毎に発行される「バトルパス」と、ゲーム内ショップでのスキンアイテム直販売の2つに分けられる。前者は950「V-Bucks」で販売されており(PSストアでは1000「V-Bucks」=1080円)、所有しているとプレイを重ねるごとにシーズン限定の報酬アイテムを受け取れるようになる。いずれもコスチューム、グライダー、ツルハシ、エモート、バナーアイコンといったゲーム中のアドバンテージにならないスキンアイテムである。これらはマッチをプレイすることで得られる経験値、デイリー/ウィークリーチャレンジのクリア報酬、もしくは「V-Bucks」の消費により取得できるバトルスターを集めることでアンロックされる仕組みとなっている。

デイリー/ウィークリーチャレンジをこなすことで報酬を確実にアンロック

「バトルパス」にも、ゲーム内ショップにもランダム要素は含まれておらず、欲しいアイテムを獲得するための道筋が明確。「バトルパス」によりアンロックできる報酬は全部でおよそ2万2000「V-Bucks」相当と充実しており、一度購入すれば、遊べば遊ぶほど報酬を得られる喜びが湧き出てくる。欲しいアイテムの獲得という、ゲームの勝利とは別途用意されたゴールに到達するためにプレイし続けるわけだ。

メインターゲットであろう若年層には約1000円という手頃な価格で「バトルパス」を楽しんでもらい、可処分所得に余裕のあるユーザにはゲーム内ショップを通じてさらなる選択肢を提供する。直購入できるアイテムは一品につき500〜2000「V-Bucks」の価格帯に収まっており、コスチュームは『PUBG』『H1Z1』のような部位別ではなく一式セットで購入できる。『PUBG』の有料ルートボックスに含まれるアイテムの提供割合は最高レアリティのもので0.1%ほど。全ての部位を揃えるにはかなりの運か、マーケットプレイスを通じた高額購入が必要となる。そう考えると、F2Pの『フォートナイト バトルロイヤル』の方が、本体有料の『PUBG』よりも安上がりで済むかもしれない。

コミカル&ポップな世界観ゆえ、動物の着ぐるみ、宇宙服、甲冑などスキンアイテムも遊び心満載。リアル路線の『PUBG』よりもインパクトがあり、品揃えも豊富

「バトルパス」の報酬アンロックに繋がるデイリー/ウィークリーチャレンジは、特定の武器を使って敵を倒すことや、特定の場所を探索することを求める内容となっており、普段とは違ったプレイスタイルに挑戦するきっかけにもなっている。中にはお宝探しや謎解き要素のあるチャレンジもあり、他のプレイヤーと死闘を繰り広げるバトルロイヤルモードに、別レイヤーの楽しみ方を重ねている。またチャレンジの内容はデイリー、「バトルパス」の報酬はシーズン毎に更新される。課金システムの利用が、ゲームそのものを遊び続ける理由、今遊ばなくてはならない理由に繋がっているのだ。

もちろんスキンを購入しなくとも、無料で思う存分遊べる。ただロビー画面や観戦モードを通じて他プレイヤーのコスチュームやエモートを目にする機会は多く、「自分も欲しい」と思わせるための種はしっかりと蒔かれている

ルートボックスを課金制度から切り離す動き

欲しい物を手に入れる術が明確で、それがゲームを楽しむことと結びついている。しかもアップデートにより実装されるスキンアイテムは相対的に見て「安い・早い・多い」と三拍子揃っている。収益化という観点から考えた場合、このやり方がルートボックス販売よりも効果的なのかはわからない。だがクリーンなイメージを保つことや、ゲームそのものを楽しんでもらうことには大きく貢献しているのではないだろうか。

以前弊誌では、「欲しいものを手に入れるまでの道筋を明確にする」という観点から『モンスターハンター:ワールド』のゲームデザインを評価する流れを紹介した(関連記事)。本稿で触れた『フォートナイト バトルロイヤル』は、マネタイズという別の側面からランダム性を除外し、それをゲームの面白さに繋げようと試みているように思える。ルートボックス騒動以降のゲーム業界においては特に注目に値する事例ではないだろうか。

つい先日には、ルートボックス騒動の発端となった『Star Wars バトルフロント II』が、スキンアイテムの直購入という、ランダム性を排した形でのゲーム内課金要素の再実装を果たした(関連記事)。問題視されていたルートボックスに至ってはゲーム内通貨で購入できず、課金モデルから完全に切り離した形での機能提供に落ち着いている。ゲームデザインという観点からも、マネタイズ化という観点からも、ランダム報酬の緩和・排除というのは2018年以降のゲーム業界におけるひとつのキーワードになるのかもしれない。

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