30歳の父親である私が再びやり込む『MOTHER2 ギーグの逆襲』 – MOTHER2 at 30 その1


たとえ今はゲーマーでなくとも、子供のころにプレイしたゲーム、熱中したゲームがあるのではないだろうか。グラハム・アーサーはグローバル版AUTOMATONの編集ライターであり、妻と2人の子供を持つ30歳の父親だ。少年のころ、彼は任天堂のゲームに没頭しており、当然のように『MOTHER2 ギーグの逆襲』をプレイしていた。北米で1995年『EarthBound』として発売された『MOTHER2』を、当時の思い出を振り返りつつ、また25年という長い年月が経ったことを実感しつつ、アーサーがやり込みプレイする。

 

MOTHER2 at 30

海外のニッチなゲーマーに「一番好きな昔のゲームは?」とたずねると、返ってくる答えはさまざまなのだが、その中で一番よく出てきて、飽きるほどみんなが「すごい!」と言ってきた答えは、おそらく『MOTHER2 ギーグの逆襲』(海外での呼び名は『EarthBound』)だろう。

いわゆるヒップスターに愛されるゲームなのに、ゲーマーと話している時にタイトルを挙げても、うざったいと反感を買われたりしない。「あれ、昔やってたよ」と告げればすごくかっこいいけど、だからといって「やったことない」という人に対して誰も批判したりはしないという不思議な存在だ(私の今までの経験上では、だが)。1990年代にNintendo Powerという雑誌を愛読していたため、『MOTHER2』のことは当然知っていたので、英語版をかなり楽しみにしていたし、それに「擦ると匂いが出る」という全く聞いたことのない攻略ガイドも、すごく面白いなあと思っていたのを覚えている。

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一応言っておくが、今のは作り話などではない。公式の攻略ガイドの裏には「Scratch-and-sniff(擦ると匂いを放つ)」式のカードが付いていて、何の匂いなのかを当ててハガキを送れば、ピザの匂いのするエアーフレッシュナーが当たるという企画も実際にあった。今となってはその攻略ガイドも、ゲームのパッケージもゲームのカートリッジ自体も、eBayだと数百ドルにも及ぶ高額なセットなのに、もう持っていない。当時のSNESカートリッジは、サンディエゴのどこかに住んでいる人が今は持っているはず。当時、友達とよくゲーム交換したり、貸し出したりしていたため、うちの母がカートリッジにマジックで私の名前を書いてくれたのを覚えている。他人の名前が書かれてるのに、それでもそのサンディエゴの人が喜んで買ってくれたことは、このゲームの凄さとその価値の証明の一つとも言えるだろう。

私からすると『MOTHER2』とは極めて少数の「ほぼ完璧なゲーム」の一つである。(「ほぼ完璧」というのは、私にとって完全に「完璧なゲーム」は、やはり『Snoopy’s Silly Sports Spectacular』だから。日本ではなぜか『ドナルドダック』となっている)世界中を回って仲間を集める。さまざまなへんてこスキルを身につける。究極の悪から世界を守る。最終的に物凄く面倒くさくて何回もやり直さなきゃいけなくなるラスボスとの生死をかけた闘いに挑む。親しみがありつつも、やはりちょっとワケが解らないというストーリーライン。アホかというほど経験値稼ぎして難易度を落とすのもあり、必要以上にさらなるエリアを探検して面白いアイテムと会話を楽しむのもあり、そして気が向いたらスピードランに挑戦するのもあり。グラフィックスはちょっと幼稚っぽく、ユーモアは皮肉った感じで、時に声を出して笑うほど面白く、そして「友情」や「忠義」、「愛情」などのテーマが強く、泣ける場面もある。

ゲーマーにはさまざまなタイプがいるが、いまだに「いや、お前はこのゲームには向いてねーなあ」と、はっきり言える人に出会ったことは一度もない。確かに世の中には、『MOTHER2』が好きでない人はいる。私だってそういう人に会ったこともあるかも知れない。もしかすると、そういう人を遠い田舎のところまで連れて行って、浅い墓穴に埋めたことだってあるかも知れない。ともかく、どんな人に出会っても、「とにかく一度だけでもいいから『MOTHER2』をやってみてよ」とおススメしなかったことは、一度としてない。

今になって一人前の男になった私は、とうとうガキに戻って子供っぽい遊びにあらためてハマる時がきた。私は妻、子供、そして借金を抱えているからこそ、やはり子供の頃ハマッていたモノをもう一度遊びたくなってきた。少し前のある日のこと、米国任天堂が許可をし、『MOTHER2』がニンテンドーeショップにダウンロード可能なWii Uタイトルとして登場した。もともと『MOTHER2』ファンでない人は知らないだろうけど、ある意味、任天堂と『MOTHER2』のファンベースは、昔からかなりの愛憎関係にある。

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シリーズの第3作の英訳版や『MOTHER4』と勝手に名付けられている海賊版続編など、いわゆるファンプロジェクトを作ろうとする人を止めることは難しい。なぜか『MOTHER』と『MOTHER3』は欧米でリリースされておらず、遊べるのはいまだに『EarthBound(MOTHER2)』のみとなっているからだ。それに「Wiiや3DSに移植してください!」、「正式な英訳版のリリースを!」、「ありえないぐらい高いファングッズを買わせてくれ」など、任天堂はファンの声を全く聞いてくれない。ほかのSNESタイトルより価格的がいくらか高いにもかかわらず、『MOTHER 2』はニンテンドーeショップでのリリース以降ずっとベストセラーに入っているので、任天堂はシリーズの他タイトルをもうそろそろいい加減出してくれるかも、と私は勝手に思っている。というか無駄に期待しているだけという可能性が高い。『MOTHER3』が、いつかバーチャルコンソールで遊べるようになったら、完全に気が狂うまでは言わないが、正直その日の仕事はバックレるだろう。

と、本題からちょっと脱線してしまった。

とにかく、私はこのゲームを死ぬほど遊んできた。10年間、少なくとも年に一回は最初からクリアまでやるような習慣がついてしまった。最初からスタートするたびに、ゆっくり細かく遊んで色々なレアアイテムを拾っていくか、とりあえずできるだけ早くクリアしてやるか、硬貨を投げて表か裏かで決めている。今のところ、こういったようなレアアイテムでちゃんと手に入れたことがあるのは「おうじゃのつるぎ」のみ。そしてつい最近分かったのだが、ずっと前から探していた「ガッツのバット」がなかなか発見できなかったのは、任天堂が説明書で間違った説明を記載していたからだ。ケラーケンが「ガッツのバット」を落とし、ケラーケンバイオが「伝説のバット」を落とすと書かれているが、実際は逆のパターンが正しい。

チクショウ。

とにかく、『MOTHER2』はもうダウンロード済みで、仕事の量はハンパない(もうマジでホームレスに憧れてしまいそうなくらい……)のだが、とりあえず今回は生まれて初めてのクリア100パーセントに挑戦しようと思っており、本年度のプランというか目的は、下記の通りにしようと思う。

  • 各食べ物を少なくとも一回ずつ食べること
  • 各ホテルに少なくとも一回ずつ泊まること
  • 落とされるあらゆる武器を全アイテム取得すること
  • 「ゴヂラ・ジェフ」を決めること(!!)
  • 「はえみつ」なしで「ゲップー」を倒すこと(!!!)

最初の2点はかなり面倒くさいし、最後の1点は普通に不可能かも知れない。まず1つ目に関しては、ある時点でジェフというキャラクターを操作することになる。こいつはストーリーのタイムライン的に、主人公たちよりずっと先の未来に居るキャラクターだ。それで、ジェフとしてショップに入ると、すごいアイテム(ゴヂラのバット)を見つけるのだが、お金もATMカード(ゲーム内ではバトルに勝利すると主人公のお父さんが勝利金を振り込んでくれる仕組みになっている……すばらしいでしょう?)も無いため、そのバットが買えない。で、そのバットがどうしても欲しいという、どこかの誰かが思い付いた技がある。何度も何度もそこらにいる敵キャラのカラスとの戦いを繰り返し、敗北すると落としてくれるクッキーを何個も何十個も何百個も売り続けると、いつかはそのバットがやっとなんとか買えるようにお金を貯めることができるらしい。何のためにそこまでするのかというと、まあ、とりあえずゲームの前半を楽に征服するためだ。はい、それだけ。

そして上記のゲップーの件に関しては、待ったく別問題である。ゲップーとは巨大なボスキャラで、前に現れる別のボスに勝利すると落とされる(要するに、取得しないことがほぼ不可能な)「はえみつ」というアイテムが唯一の弱点である。そのはえみつをゲップーに与えると、その戦いが笑えるほどやりやすくなってしまう。

はえみつを与えるまで、ゲップーは味方全体ダメージや状態異常を与えてきたり、自動完全回復したりする。要するに、はえみつなしでゲップーを倒す方法はというと、1ラウンド、あるいは運と腕が物凄く良ければ2ラウンド中に、強烈な攻撃で完全にHPをなくさせることだ。これに成功した人はどこかに存在するだろうけど、私はその中の一人ではない。しかし、私の人生に終止符が打たれてしまうまでは、おそらく50年間ほどの長い年月が残っているだろうし、試行錯誤の時間ならまだまだたっぷりあるわけだ。

だからまあ。

やってやろうじゃないか。

ゲームを進みながら、ほかにもファンが考えたいわゆるサイドクエスト(例えば、「バルーンモンキーを牙のみで倒せ」、など)が存在するかどうかなど、色々ググってみようと思っており、何か面白そうなのがあれば、それも企画に加えて進行しようと考えている。

私はとある大任務をまかされた(と勝手に思い込んでいる)男なのだ。最悪で最高に無意味な大任務。「『MOTHER2』100%を目指せ」という私の宿命へようこそ。

その2へ続く。

[翻訳 James R. Mountain]

[校正 Shuji Ishimoto]

MOTHER2 at 30」は、グローバル版AUTOMATONに掲載された「EarthBound at 30」を和訳したものです。雰囲気が伝わるよう、一部の過激な言葉はあえて原文に近いものにしてあります。