参加者が主催側とともに「アクセシビリティ」について考える「アクセシビリティキャンプ」。「第10回 アクセシビリティキャンプ東京」は、「目が見えなくともスト2はできる。全盲ゲーマーと対戦!」 と銘打ち、「ビデオゲームとアクセシビリティ」がテーマに据えられた。今回は前回お伝えしたイベントレポートに続き、さらに詳しく視覚障害者の方々にインタビューを実施。目が見えない・見えづらい世界でいかにビデオゲームを楽しんできたのか、そしてアクセシビリティの意味について訊く。

※同インタビューはイベント実施前に収録したものとなります。

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左から中根さん、伊敷さん、辻さん、諸熊さん、伊原さん。それぞれ中根さん、辻さん、諸熊さんが全盲、そして伊敷さんが弱視で、晴眼者の伊原さんはイベントで司会役を担当した。視覚障害を持つ4人のプロフィールはconnpassのイベント詳細にて確認できる。

――今回なぜ「アクセシビリティキャンプ東京」でビデオゲームをテーマにしようと考えたんでしょうか。

伊原さん
飲み会でゲームの話が出て、辻さんが『ストII』をやるらしいという話に衝撃を受けたんです。僕が小学生ぐらいの頃に『ストII』が流行っていて、僕もやり込んでたんですね。学校から帰ってきたらカバンを放り出して、とにかく『ストII』しかやってないというぐらい。だから画面からの情報を得ずにプレイできるというのが、純粋にすごい気になってしまって。他にも『ロードランナー』ができるとかいう話もあって、びっくりするわけですよ。もちろんアクセシビリティの専門家としてコンサルティングをしているので、どういうことなのかという論理的な理解はできるんですけど、どうプレイしてるかというのは、やっぱりこの目で見てみたい。ゲームを好きな面々が、辻さんたちが実際にプレイしている姿を見てみたいという、純粋な知的好奇心から始まっている部分があります。そしてせっかくなので、我々だけで見るのではなくて、みんなに見てもらおうという形で話が進みました。

――『ストII』は今回のイベントタイトルにもありますね。実際に辻さんはどのように『ストII』をプレイされるんですか?

辻さん
もともと格闘ゲームが好きだったんですけど、確か初代『ストII』の後の『ストIIターボ』以降から、画面だけじゃなくて音の動きでキャラクターが表現されるようになってきまして。スーパーファミコンのマシンパワーが良くなって、自分が左から右に歩いていけば、それに伴って自分のキャラクターの足音と声も全部右の方に寄っていくみたいな、音でも画面の状況が把握できるようになった。それで、これはもしかすると視覚に頼らなくても上にいけるんじゃなかろうか、高みに僕もたどり着けるんじゃないかと。もう学校も休みまして夜通しですね、ご飯食べたらまた親に怒られつつゲームに向かって。

たとえば『スーパーマリオブラザーズ』で「1-1」をクリアすることはできるんですけど、全体は無理なんですね。でも初めて一部分だけじゃなく、全体をクリアすることができるんじゃないかと思わせてくれたゲームが『ストリートファイターII』だった。頑張ればエンディングにたどり着けるんじゃないかと。その頃から自分がやるゲームに対する価値観が変わりましたね。

実際に『ストリートファイターII』は1人プレイモードをクリアしたことがある辻さん。エンディングは「思っていたよりも大したことなかった」と笑いながら語っていた

――格闘ゲームって画面全体を使いますよね。音の情報だけでは、一度ずれてしまうと全部ずれてしまうんじゃないかと思うんですが。

辻さん
そこまで深くは考えてないというか。たとえばですけど、波動拳みたいな技って、自分の方から相手の方にさーっと音が流れていくような感じで動くんですね。あるいは空中を飛んでいくみたいな技もあるじゃないですか。そういう音を聞いて、なんとなく右の壁のそばまで行ったんだろうなとか、ちょっと真ん中より右ぐらいにいるのかなあとか、その辺をある程度把握してるんです。だから苦手なこともあって、『ストリートファイター』系ではあまりなかったんですけど、当時同じようにプレイしていた『餓狼伝説』というゲームは、場外があるんですよね。それはどうしても厳しかったです。

――他には『電車でGO!』をプレイされている方もいると、イベント概要で読ませていただきました。

中根さん
僕がプレイしたのは初代PlayStationで出た一番古い奴と、その次のですね。けっこう原始的というか、車内放送の声が出るタイミングが大体この辺とか、あとそのタイミングからレールの継ぎ目が何個分の時に止まれば大体いけるのかというのを、トライ&エラーでひたすらやる。楽しいっていうか、もう修行だよね。

辻さん
できちゃうと何でもないことかもしれないけど、あとちょっとがダメだったみたいな時に、そこを埋めていくのが楽しかったですね。

――達成感を求めている?

中根さん
達成感なのかな。達成感なんでしょうね、きっと。でもそこまでやり込むと、達成感とかっていうんじゃなくて、機械的にやってる感じにだんだんなってくる。苦行になる。眠いんだもん。眠いけどプレイして。でも達成感なんでしょうね、やっぱり根本的にはね。

辻さん
当時、ゲーム音楽とかミュージックテープとかCDとかが流行っていて、そういったゲーム音楽を聴きながら、この音楽をゲーム内で出すにはどうしたらいいんだろうとか考えた事はあります。たとえば『グラディウス』というシューティングゲームだと、ステージによって曲が変わるんですけど、自分が好きなこの曲を出すには何をしたらいいだろうとか。

――『グラディウス』にも挑戦されたことがある。

辻さん
挑戦はしたんですけど、どこから弾が来るかわからないので、どうにも。

諸熊さん
弾が無音で、しかもいろんな方向から飛んでくるので、避ける術がないですね。しかも画面端の上下にぶつかったら終わっちゃう。裏技でバリアを無理矢理出して弾を無効化し続ければクリアできる気もしますけど、あんまり裏技ばっかりやるのもどうかと思いますし。

――諸熊さんはどのようなゲームを遊んでこられたんでしょうか。

諸熊さん 「丸暗記すれば『ポケモン』が遊べることが分かってしまったんです」

諸熊さん
私が長く遊んでいるのは『ポケットモンスター』ですね。私は中学生の時に失明したんですが、失明する前がちょうど初代の『ポケモン』が流行ってた時期で。ずっとやりつくしていた結果、マップを暗記しちゃったんですよね。入院してる時は眼帯つけていたんで前が見えなかったんですけど、その時から暗記すれば『ポケモン』が遊べることがわかってしまった。中学生時代ずっと遊んでいて、高校になって友達も『ポケモン』をやるようになってからは、対戦するためにいろいろ育てたり厳選(※)するようになりました。

※ 厳選: 欲しい能力をもったポケモンを手に入れるため、孵化や捕獲を繰り返す作業のこと。

大学に入ってからは退いていたんですけど、3年くらい前に『ポケモン』の新作が出て、またやってみようかなとニンテンドーDSごと買ってやっている感じです。失明する前からRPGばっかりやっていたので、そういったものが好きですね。他にも格闘ゲームだと『ソウルエッジ』っていう『ソウルキャリバー』の前進をやったりとか、あとは知人が遊んでいた『ドラゴンボール』とか『幽々白書』をやったりしてました。

――RPGはマップやクエストがあるので、目が見えないと敷居が高いのではないかと思うんですが、どのようにプレイされているんでしょうか。

諸熊さん
まず1つは、Webで攻略サイトを見まくってます。「スクリーンリーダー」という、ホームページとかの内容を読み上げるソフトがあるんですけど、そういったものでどこに行けば何が起きるのかといった情報を攻略サイトから集めます。そのあとに実況動画を見て、他の人がやっているものからヒントを得る。最後に自分で実際にやってみて、いろいろ試行錯誤していくいう感じでやってます。昔から攻略本をけっこう見ていたんですけど、いまは同じくらいの情報がWebに載っているので便利になったなと思います。

弱視の伊敷さんは画面に近づくとなんとか文字が見える。『ドラクエII』では復活の呪文を間違えることも多かったが、『ドラクエVI』をプレイしたときに文字が大きくなったのが嬉しかったという

伊敷さん
僕は中学生の時に『ドラクエII』にハマって、ひたすらやりましたね。やっぱり修行なんですけど、ロンダルキアの洞窟でどこで落ちるのか全然わからなくて、ひたすら試すしかなかった。落ちてこのマスはダメだと覚えて、また別の方向に1マス進んで、その繰り返しですね。

伊原さん
お話を伺いしたときにも思いましたが、完全にTASのアプローチなんですよ。人間TASみたいな。トライ&エラーを繰り返して、リセット&リセットで覚えたら、最短ルートでクリアするっていう。

※ TAS: 「Tool Assisted Speedrun」、あるいは「Tool Assisted Superplay」とも。ツールを利用してゲームをプレイし、通常では不可能なスピードランやスーパープレイを研究する行為のこと。

――失礼ながらRPGは難しいのではないかと思っていたんですが、想像の斜め上でした……。

伊敷さん
相当時間をかければできますね。でもシューティングゲームやレースゲームなんかは難しいですね。状況が刻々と変化するランダム性が強いゲームだと、どうがんばってもできない。

――状況再現しやすいゲームなら、時間をかければできると。

中根さん
昔のファミコンの時代であれば、動きが比較的パターン化されているんで、できますね。

辻さん
ファミコンの時は『ファミスタ』とか、音の違いでボールなんかの速さもわかったんで。

伊原さん
ランダム性が強くても、サウンドデザインがしっかりしてるとできるみたいな。

辻さんは他にも『ポートピア連続殺人事件』に挑戦したものの、NPCの声が男性か女性かぐらいしかわからなかったという

――ゲームをプレイする上で、視覚障害があってもプレイしやすくなるデザインは他にもあるでしょうか。

諸熊さん
フルボイスでメニューを読むとか、文字を大きくするとか、BGMの大きさを調整できるとか。あとは逆に、最近のゲームはBGMがよくできてるんですけど、金管楽器とかがうるさくて、歩いてる音は聞きづらいんですね。『ポケモン』でも実はそういうことがあって、『ポケモン』にはなぜか音量の調整機能が付いていない。だから残念ながらヘッドホンをつけて、すごい集中して聞かないといけない。いちおう最近の『ポケモン』ですと、自転車に乗ると比較的うるさくないBGMが鳴るようになったんで、できるだけ自転車で移動するようにしています。早く移動するとかじゃなくて、BGMがうるさくないように。ジムの中とかうるさい上に、自転車に乗れないので困ったりします。でも、なかには足音が歩いてる場所で音が変わったりするジムもあったりするんで、「ここは快適だな」と思いながらプレイしたりしてます。

――そういえばみなさんが挙げられているのは比較的古いゲームが多いですが、ここ最近の作品はプレイされていますか。

辻さん
僕は視覚障害者向けに作られたゲームを最近やることが多くて。昔はできるゲームがそれなりにあったんですけど、最近は画面がリアルになればなるほど、昔ほど音の動きに頼らなくてもゲームが進められるみたいな感じになってきたのかな。たとえば野球ゲームの球の音を1つとってみても、昔はビューンとシンプルな音でボールの速さまでわかっていたけど、今はリアルな音なので判別するのに使えなくなってしまった。そういう意味で、昔よりは一般のゲームをやる機会は減ってきたかなとは思います。

中根さん
視覚的な表現力が高まってきたので、それを補うための音という形じゃなくなってきたのがたぶん大きいです。昔は視覚的な表現力が大した事なかったので、その分は音も頑張っていて、情報として使えた部分があったんですけど、今は視覚的な部分をリアルにする方向性で作られているので、音としてリアリティを追求するものはそんなに昔ほどは無いのかもしれないですね。だからうっかりできちゃうみたいなものが少なくなった。その一方で、PCとかiOS/Androidで動く視覚障害者を意識して作られたゲームというのが昔よりだいぶ増えてきていて、そういったものは修行感は少なく達成感はある。オーバヘッド(コスト、おもに処理時間を指すIT用語)は小さいというか、最近はそういうのが多いから、修行感の少ないゲームに流れちゃう部分はありますよね。

――視覚障害者向けのゲームということですが、最近だとどのような作品が存在していますか。

諸熊さん
私は去年の4月に出た『マナモン』っていうゲームを最近やってます。『ポケモン』を海外の人が作ったみたいなゲームなんですが、システムがかなり『ポケモン』に近くて、来週知人と対戦をする予定で厳選と育成をしています。テキストの音声読み上げ機能も付いてますね。

中根さん
2000年以降が境目だと思うんですが、WindowsのDirectX 6か8くらいから、オーディオの表現力が豊かなゲームが増え始めたんですよね。単純に2チャンネルのステレオだけど、かなり音をうまく使って作られるようになって。iPhoneとかでは、プロセッサパワーがかなり豊かになってきて、似たようなことが5年か6年前からできるようになりましたね。加速度センサーを上手く使って、自分の向いている方向にあわせて音の定位が変わるとか、そういう工夫をされているものがけっこうあって。ゲームとしてはそんなに面白くないですけど、よく作ってあるものがたくさんあって、一時期よくやりました。

伊敷さん
海外のゲームで、ゾンビを倒す奴ありましたよね。

『SixthSense』

辻さん
SixthSense』ですね。『SixthSense』は武器が何種類かあって、前、右、右斜め前、左、左斜め前の5方向から来るゾンビをやっつけるゲームです。自分がゾンビに捕まったら負けで、途中に助けを求めて走ってくる人を間違って倒しちゃうとペナルティがつくみたいな。意外と単純なんですけど、視覚障害者向けのゲームってなぜか怖いゲームが多いですね。音が怖いゲームが多い。

中根さん
ゾンビだけじゃなくてもRPGみたいなのもありますけど、そういうのも結構音は怖い。できることなら死にたくない音がする。

辻さん
夜中にやってて、怖くて怖くて、しかもヘッドホンをしないと音の定位がわからないので、夜中に家族が起きてその音で「うわっ」てなったりとか。

諸熊さん
あと僕が最近やってるのが『Crazy Party』っていう、今ベータ版が開発中のゲームです。パーティーゲームでいろんなミニゲームが入ってます。まだ最近やり始めたばっかりなんですけど、そっちは結構可愛い感じのゲームで、アヒルの群れの中から正しいアヒルを捕まえたりとか、ボートで船漕ぎをするとか。森の中で木をなぎ倒してプラムをどんどん取るとか、人喰いアリに追いかけられるとか、そういう感じのゲームが130種類ぐらい入ってて、そういうかわいいゲームもあるんですよね。フランスの方が作ってます。

――視覚障害者向けのゲームは自分が思っていたよりも多いようです。

諸熊さん
そうですね。視覚障害者が遊べるゲームを作るためのプログラミング言語がありまして、「BGT(Blastbay Game Toolkit)」と呼ばれているC#っぽい構文の言語なんですけど、これがすごく使いやすいので、作ることにトライする人が増えてきました。音関係の命令が充実していて、簡単に音量や定位を調整したり、たくさんの音情報を同時に再生したりできる。最近だと3Dサウンドを使えるものも増えてきたりとか。

――他には思い出のゲームはありますか。

伊原さん
『風のリグレット』ってあったじゃないですか。あれはわかりやすく視覚を使わないでもできるゲームの代表作みたいな感じですけど、みなさんどうだったのかなと。

『リアルサウンド~風のリグレット~』: 1997年にリリースされたインタラクティブサウンドドラマ。映像が一切存在せず、音だけでプレイする作品として注目を集めた。開発は『Dの食卓』などで知られる故・飯野賢治氏とワープが担当した(なお画像は実際の『風のリグレット』のスクリーンショット)

辻さん
あれはやりましたね。あれをやるためにサターンを買いました。ちょっとゲーム自体の話ではないんですが、実は僕は1人だとゲームが起動できなかったんですね。ファミコンの時代にはカセットを挿して電源を入れればゲーム始まっていたんですけど、セガサターンは僕が触ったなかで、初期設定をしなければいけない最初のゲーム機だったんですね。最初に日付を入れないとゲームが始まらない。こういうつまづき方するんだっていうことに初めて気がついたゲーム機でした。

諸熊さん
ニンテンドーDSを買った時もそうでしたね。初期設定でこんなにいろいろやらなきゃいけないんだって。説明書をダウンロードしていたんで覚悟はしてたんですけど、覚悟をしていたからといって自分でできるわけではないので、結局やってもらったんですけど。

――今のゲーム機はほとんど初期設定が必要ですよね。

中根さん
そういった意味ではゲーム機に限らず、今は初期設定しないで使える電化製品ってほぼないですね。入り口が辛くなった。中間はOSの方でいろいろサポートしてくれるようになったんですけど、最初の入り口にまずつまずきがあるっていう事ですね。多分最初でつまずくと、ユーザーのゲームに対する敷居が極端に上がる。

伊敷さん
ポータブルなデバイスだったらいいですけど、サターン持っていって初期設定してくれってのはきついですよね。

辻さん
僕は研究室に持って行きましたよ。そしたらなんのことは無い、電源入れて左を1回押すとスキップするっていうボタンがあったらしいですけど。やっぱり人間右からやるじゃないですか。

辻さん 「ハードルを下げることがアクセシビリティって捉えられる傾向ってあるんじゃないかなって」

――その後、『風のリグレット』はいかがでしたか。

辻さん
『風のリグレット』はゲームとしてはうーんって感じでしたね。僕はもうちょっとイベントの多いものを欲していたので、ラジオドラマに選択肢が加わったくらいの感じではちょっと物足りないなと。

で、その時に感じたのは、視覚障害者が遊べるものをターゲットにしようとすると、なんでこうペナルティを付けたりとかハードルを下げることでアクセシビリティと言おうとしたりするんだろうと。ゲームに関するアクセシビリティの取り組みが増えている事は歓迎するべきことだし、自分もアクセシブルなゲームにもっと挑戦していきたいとは思うんですけど、なぜかハードルを下げることがアクセシビリティって捉えられる傾向ってあるんじゃないかなって。多分ユーザーはそこを求めてない。

伊原さん
やっぱりつまらないゲームはやりたくないわけですよね。

中根さん「差が無くて遊べると見えてる人と同じゲームについて同じように話ができる」

中根さん
そういう意味で、僕が最初にハマったのは『NetHack』なんですよ。あれは全晴眼者と同じように遊べるし、差がなくて遊んでれば見えてる人と同じゲームについて同じように話ができる。結局コミュニケーションツールだと思うんでゲームって。コミュニケーションが生まれないゲームなんてやっても面白くはないし。

諸熊さん
時間割いてやるんだから楽しくないと。

辻さん
いつまでもハマってたい面白さとか、1回クリアしたらもういいやっていうゲームもあると思うんですけど、難しいという面白さもある。だから僕は、楽々とかそういう言葉が嫌いなんですよ。

伊敷さん
だから修行するんですよね。『マリオカート』まるまる一ヶ月やりこんだり。

――ゲームの面白さって根本的にそういうところはありますよね。

伊原さん
同じようにできるサポートは入れて欲しいんだけど、ゲーム自体のハードルを下げるのはナンセンスだと。

中根さん
同じコンテンツだけど、見てやるよりも音だけでやる方が簡単というレベルのものが出てくれば、それはそれで面白いと思うんですけどね。

辻さん
『リズム天国』とかそうかもしれないね。

諸熊さん
音ゲーはやってる人結構いますね。私の知人でも『リズム天国』結構やりこんでる人がいて、一番難しいのをフルコンボだして喜んだりしてます。

――さきほど『NetHack』のお話しをされていたんですが、どういう風にプレイされたんでしょうか。すべて音で情報を知るのは難しそうですが。

中根さん
僕は学生時代からUNIXのサーバー管理とかやってたりして、その現実逃避の一環としてやってました。テキストベースで表示させて画面の文字情報を点字として表示するデバイスがあるんですね(参考リンク: 点字ディスプレイ Google検索)。これを使ってダンジョンを触って理解するというのが基本です。

――点字の装置ですか。

中根さん
リアルタイムに出るようにする感じのもので、ピンがたくさん並んでいて、ピエゾ素子(圧電素子。電圧を力に、力を電圧に変換する圧電効果のある素子)で上下して電圧を加えて。古くはシリアルとかでつないでいて、今はBluetoothだったりUSBだったりするんですけど。そのデバイスをパソコンに外部出力装置として繋いで、パソコン側では読み上げをするソフトの1つの機能として点字を出力する機能がついてるんですけど、それでピンを上下して文字情報を伝える。基本的には1行だけ表示できるんですね。お金がある人はたくさん表示できるものを使う。一度に80マス。UNIXの端末だと、ちょうど1行分ですよね。80マスのやつがあると『NetHack』がめちゃめちゃやりやすいですよね。お金がないと40マスとかもっと小さいやつなんですけど、そうすると横スクロール的なことになってしまうので、断片的な情報を頭の中で組み立ててやっていくという感じになります。

辻さん
僕も『NetHack』やる時は使ってました。遠くの方にいる敵で、矢を当てないと逃げちゃうレプラコーンをやっつけるには、長いディスプレイがよかったですね。

『NetHack』

――お話を聞いていると、昨今のゲームは1マス1マスで動かない分、やりにくいかもしれないですね。

中根さん
ステレオがビデオゲームで普及する前はマス目を数えてましたからね。

諸熊さん
でも『ポケモン』だと、足音が鳴らないところは、浮いてたりすり足だったりみたいな感じで、わからないですよね。

中根さん
それは見えてる人が気にしてない可能性が高いんだと思うんですよ。たぶん、視覚から入ってくる情報が貧弱だと、気になるんだと思うんですよね。

伊原さん
たとえば『MOTHER2』だとラスボスのダンジョンでは足音が変わる。演出的にボスの直前だと足音がなくなるとか、そういうゲームもあるかもしれませんね。

諸熊さん
障害者向けのゲームというのを考えると、足音が鳴らないというのはありえない話ですよね。

中根さん
2000年前後に出始めたものだと、壁に近づくと足音が変わるだとか、結構凝ったものがありましたね。結構我々の感覚に近いんですよ。反響音が変わるみたいな。足音の響き方1つで分かれ道だっていうのがわかるように、ちょっと大げさに作ってある。そういうのが出始めたときには、これはなかなか面白いなと思いましたね

――それは何というゲームですか。

中根さん
Shades of Doom』っていう、カナダの人が作ってるWindows向けのゲームですけどね。その人が作ってるゲームは結構どれも面白かったです。

辻さん
僕は『Monkey Business』が好きだな。足音とかも結構よく作られてたし。『Monkey Business』は、逃げ回る猿を捕まえるっていう内容で、ただそれだけなんだけど、なんか面白い。海沿いを歩いていたら突然向こうから大砲の弾が飛んでくる。そしてちゃんと飛んでくるのがわかる。その間に隠れる場所を探す。ドーンて聞こえたのと同時に風の音が聞こえて、自分のほうにそれが近づいてくるので、これはしゃがめば避けられるとか、もう逃げ切れないとかわかる。

中根さん
すごいドはまりしたのはその『Shades of Doom』と『Monkey Business』。あと『Tank Commander』っていう、それも『Shades of Doom』の開発者が作ったゲームで、戦車を操って相手の戦車をどんどん撃って、かつ基地も攻撃して。うっかり戦車を撃ったつもりが、自分が渡らなければいけない橋を撃ったりとか。あれは僕がやった視覚障害者向けのゲームの中では、かなり難易度が高いアクションゲームだった。

辻さん
あとは中根さんとよくやっていたフライトシミュレーターもよくできてますよね。『Three-D-Velocity』ですね。飛行機を飛ばしつつ戦わないといけないので、「トップガン」とか見てた世代がやるとすごく楽しかった。

――視覚障害者の方にとって3Dゲームの難易度は飛躍的に上がる気がしますが、意外とでてきますね。

中根さん
むしろ音の表現力は上がっているので、その分やりやすくなったと思う部分もあります。

辻さん
やっぱりリアルな音が入ってくるから。

中根さん
それは作り込み方次第でしょうね。

諸熊さん
ちゃんと3Dの範囲で理解できるように音が表現されていれば。

中根さん
3Dと言いつつ、実際2Dだよね。上下の定位はかなり出すのが難しいんですよ。今3Dサウンドって言ってるのは、ほぼ前後左右の2軸ですよね。

諸熊さん
今は定位と音量とピッチで表現しているものが多いんで。

中根さん
音のやつって、誰かの頭の形をモデルにして音を設計するんですけど、そのモデルになった頭の形に自分の頭の形が近いかどうかで伝わり方が変わる。

諸熊さん
そうなんですよね。そこはやはり頭部伝達関数の限界というのがありますから。

――最後に、今回のイベントやこの記事を通じてアクセシビリティについてどう理解してほしいか、メッセージをいただけますか。

中根さん
アクセシビリティって言ったとき、僕の近くにいる世の中の人、観測範囲内の中にいる人だと、Webのアクセシビリティだと思ってる人が多いんですよね。アクセシビリティって実際にはあらゆるものに適用できる考え方ですし、Web以外のものもかなりあるんだよと。それと、別に障害者だけではなく、ほとんどの人にとって「どうでもいいことをどれだけ楽しめるかってのが人生の豊かさ」だと思っていて。それの一番いい例の1つがゲームだと思っているんですね。そういう部分でもアクセシビリティみたいなことを考えられると面白い。参加する人、プレイヤーが増えることによってできてくる多様性によって生まれるゲームの面白さってのは、多分これからはあると思うので、そういうことを考えるきっかけのきっかけになればいいんじゃないかと思ってます。

伊敷さん 「ちょっと工夫したり気をつけるだけで一緒に遊べる」

伊敷さん
ゲームのアクセシビリティをテーマにしたイベントは初めてなので、今回だけで何かを伝えようっていうのはあんまり思ってなくて。とにかく、まさか一緒に遊べると思ってないだろうというところが、ちょっと工夫したり気をつけるだけで一緒に遊べるんだよって体験をしてもらうだけで、すごく嬉しいなと思いますね。

辻さん
アクセシビリティとかコンピュータと障害者っていうと、すごく就労とか学習とかにフォーカスされていますが、まだエンターテイメントに関してはすごく未熟な領域で。たとえばこれから参画しようとする企業だったりグループがあったりすると、これからできていくマーケットなんだろうなと思っています。だから早くこのマーケットを作りたい、僕たちの為にも。今日はきっかけとしてイベントに参加していただいて、二回三回と続けていくことで、どっちかといえば堅めのアクセシビリティから柔らかいアクセシビリティへと人々の考え方がシフトしていけばいいな、なんて思ってます。

諸熊さん
私は個人サイトでゲームを作って配布をしている立場だったりして、やっぱり自分で作ってみると、ゲームってどうやってできるのかなとか、どういう風にすれば遊べるようになるかなとか自分なりには身に付いてきているつもりでいて。その中で市販のゲームを遊んでいると、ここがこうだったら遊びやすくなるかなあと感じる部分もあるんですよね。そういったことを今回のイベントで全部言えるかって言えば、それは時間がないのもあって難しいと思うんですけど、視覚障害者もこうやってゲームを遊んでいて、遊んではいるんだけども微妙に健常の方とゲームを遊ぶときの遊び方とやっぱり違うところがあって、そこからきっかけを掴んでいただければうれしいなと思ってます。

伊原さん 「ゲームを作ってる側に届くと良いなって思います」

伊原さん
大体あらかた言われたんですけど、あとは作ってる側に届くと良いなって思います。さっき中根さんがコミュニケーションツールって言ってたんですけど、僕もゲーセン行って『ストII』とか『バーチャロン』とかやって、ずいぶん年上の人と遊んだりとかしてゲームオタクになったわけですけど、そういうの凄い楽しかったですよね。ゲーム自体も面白がってやってるんですけど、それだけじゃなくて学校の友達とゲームの話をしたいとか、それはやっぱり1人でやってると言うよりは、みんなでやってたっていう感覚があって、そういう風になっていけばいいなって思うんですよね。みんなが楽しめるようになれば良いなと僕はすごく思ってます。世間話は下手ですけど、ゲームの話はできる。話す対象があればいくらでも話せる。

あと、自分がいわゆるUXデザインとかをやってるんですけど、そういうのって発想を得るために極端なユーザに聴くというやり方を取ったりします。そういう方と一緒にデザインするみたいなことをやったりするんです。で、自分が思いもよらないような、まさにこのイベントとかがそうなんですけど、そういう人達と一緒になってゲームを作ったりすると、今までになかったものができたりするんじゃないかと思うのもあるので作ってるところまで届くといいなって考えてます。

 

イベント取材を終えて

「アクセシビリティ」や「ユニバーサルデザイン」はゲーム業界でも一種の潮流として取り組まれ始めてはいる。『Overwatch』や『Uncharted4』では自由度の高いカスタマイズが四肢障害を持つ方々への配慮として高い評価を呼び、国内では『パズル&ドラゴンズ』が色覚障害者向けにドロップの色を変えるサポートを追加してから3年経つ。最近ではNintendo Switchで発売された『1-2-Switch』が専用コントローラーのHD振動により視覚障害者と晴眼者との垣根がない遊びを提供していると話題になった。ただ一方で、単に「アクセシビリティ」と言っても障害の種類や程度によって求められてくる配慮の度合いと種類は千差万別であり、一見良かれと思って実装した仕様が、本質的に求められている配慮と合致するとはいえないかもしれない。ゲーム開発、販売会社の社会性アピールの方法として自己満足化してしまう方向に進むのは最も忌避すべきことではあり、真摯な姿勢の努力は不断であるべきだろう。

しかし、会場提供のヤフー株式会社中野さんが今回イベント時、締めの挨拶でおっしゃられていた「アクセシビリティに関するイベントで今回のように歓声や拍手、笑い声が起こるということはかつて経験がなかった」という言葉は非常に大きな示唆をはらんでいる。「ゲーム開発や製作側」が「アクセシビリティ」に眼を向けるのではなく「アクセシビリティを考える側」が「ゲーム」に眼をむけるというアプローチから見えてきたのは、デリケートな問題に対してあまりにも難しく捉えて近づかないという無意味さよりもまず、一緒に経験してみたり遊んでみることによって、障害についてより感覚的に納得するという有意義さであり、そのための最大公約数を場に与える媒介としての役割を果たすポテンシャルが「ゲーム」にはあるという新しい発見だったと言えるかもしれない。少なくとも開始から終了まで、参加者全員が「違い」は感じつつもそれによって生じがちな「壁」や「垣根」をほぼ感じないでゲームを楽しんだイベントだったのは間違いないだろう。アクセシビリティを考える最初の一歩の「重さ」をすっと軽くしてくれる「ゲーム」というツールの有用性を、むしろ我々自身が過小評価しているのかもしれない。

 

[取材・編集・撮影 Shuji Ishimoto]
[取材・執筆 Nobuhiko Nakanishi]

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