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――『スマブラ』のゲーム性についていろいろと聞きましたが、「EVO 2017」などで試合を見る上で、視聴者にこういった部分の駆け引きがあるとか、どういう部分に注目すれば面白いみたいな部分を教えていただけますか。

aMSaさん
去年、「EVO」の決勝戦を振り返るイベントに出させていただいた時に説明したのをそのままお伝えするんですが、まず駆け引きについては、『スマブラ』は基本的に崖の端っこにいる側が不利でステージの中央の方が有利、さらに上下の関係だと下にいる方が有利です。

――下にいる方が有利になる。

aMSaさん
上に判定が強い攻撃があったり、どんどん攻撃で突き上げてコンボをつなげていくお手玉というのがあったり。あと、ジャンプは2回までしかできないので上にいるキャラクターは動きが制限されてしまい、下にいる相手になにか攻撃を仕掛けようとしても難しい。さらに相手に崖を背負せて有利な状況を作っていくっていくのが基本となります。

image by official site

あばだんごさん
『スマブラ for Wii U』の話をしますけど、崖際の攻防はこちらの方が熱いです。「ディディーコング」というキャラクターは崖際がすごく強くて、踏むと滑るバナナを置けるんですね。これで通常の崖登りと攻撃登りをバナナですべて防げる。あと空中前攻撃の判定が非常に強くて、相手のジャンプをつぶしやすい。これを見てから登るというのはかなり困難。崖つかまりに当たる攻撃も駆使して、崖上をキープします。さらに投げるコンボで外に出しやすい。

――「ディディーコング」に崖際に追い詰められた場合、対抗策は。

うめきさん
基本バナナがあって択もいくつか潰されているので、いろいろ方法はあるんですけど、結局向こうが有利にはなりますね。

あばだんごさん
うまい人は総じて崖上が強いです、そこは注目してもらえると。特に「ZeRo」なんかは崖の上が要塞なんで、崖上の攻防だけで相手を100パーセントにしたりします。

――ほかにも『スマブラ for Wii U』ならではの要素は?

あばだんごさん
「崖奪い」というのがあります。このゲームで追加された、相手が何も行動してない状態であれば上の人は崖を奪えるという要素です。奪われてからふたたび崖につままろうとすると無敵がないので、わざと奪って無敵がない相手に攻撃を当てたりします。回避しようとすると、ジャンプを先行入力するか攻撃上がりを先行入力するか、回避上がりを先行入力するかなんですけど、敵にはばれやすいですね。なので「崖奪い」を一回見せておくと、相手の行動を支配できる。早いキャラクターだと「崖奪い」に行こうとするふりをして、あえてしないという読み合いがあったりします。これは『スマブラ for Wii U』だけですね。ただ、「崖奪い」を読まれてステージ側をとられたりすると、逆に奪いに行った方が不利になるので、崖上で有利な状況を作るか、崖を奪いに行って攻めるかという読み合いもみてて面白いです。だから崖を奪いにいったら、そういうことだと思ってくれると面白く観戦できると思います。

――ちなみに代表的な崖上の強いキャラクターというと。

あばだんごさん
「シーク」「ディディーコング」「ロゼッタ&チコ(ロゼチコ、ロゼッタ)」「ゼロスーツサムス(ゼロサム)」あたりが強いですね。「ロゼッタ」は、チコっていうコンピュータ操作のキャラクターが付いてきて、このチコを避けるために相手は上に逃げることになります。上下の関係上、有利が取りやすいですね。

うめきさん
あと「ロゼッタ」は、チコが攻撃を受けても普通に動けるんですね。相手はヒットストップがあるんで、そのあいだに攻撃をすることができますね。

――ではこの流れで、「EVO 2017」でも上位に来るだろうというキャラクターに関して解説していただいてもいいでしょうか。

全員
まず上から「ディディーコング」「ベヨネッタ」「クラウド」「シーク」。「リュウ」も格ゲーをやっている人から見ると、けっこう面白い。「ミュウツー」「ソニック」「ゼロスーツサムス」「ロゼッタ&チコ」「マルス」「ディディーコング」「マリオ」、あと「キャプテンファルコン」。

あばだんごさん
トップ8に入りそうなのは15キャラクターぐらいですね。多分その15キャラクターは優勝が狙えるキャラクターだと自分は思います。「ディディーコング」は「ZeRo」がいるんで確実に出てきます。「シーク」は「VoiD」と「Mr.R」という二大シーク使いがいるんで、たぶん観ることになるでしょう。手数が多くて攻めるキャラですね。あと「ベヨネッタ」も多いですね。

image by official site

あばだんごさん
「ベヨネッタ」は単純に全てが揃ってるというか、DLCキャラクターなので強めの調整で出てきましたね。使用人口も多いです。自分も使うし、サブキャラで持ってる人も多いイメージですね。最強のカウンター技の「ウィッチタイム」が5Fで発生するんですけど、技の強さに関係なく当たると3秒間、相手が8分の1スピードになるので、引っかかった瞬間に大胆な攻撃を仕掛けるというか、番狂わせを狙いやすいキャラクターではあります。

aMSaさん
「ヒットストップずらし」とか「ベクトル変更」をきっちりしないと、「ベヨネッタ」は対応できないですね。当時はあれで一部のユーザーが離れてしまった感じもあります。最強だった時期は国によっては使用禁止キャラだったり。

image by official site

あばだんごさん
DLCキャラクターの「クラウド」、こいつも強めに調整されていて、すべての技性能がいいですね。技の威力は高めで、復帰だけ弱いです。「クラウド」はゲージを溜めることができて、すごく強い必殺技を放つことができるんですが、その必殺技が発生も早くて威力が高いのに、発生前に無敵がついたりとすごくて。総合的に見ると荒らし能力が強い。こいつもサブキャラで持っている人が多くて、「EVO」でもたぶん見ることになると思います。

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あばだんごさん
「リュウ」はもしかしたら見るかもしれないですけど、なにが強いって言わると、昇竜拳が強いとしか言いようがない。

――「リュウ」って『スマブラ』では唯一コマンドでも技が出るんですよね。

うめきさん
そうですね、ちゃんと竜巻旋風脚とか波動拳とかコマンドで出せます。

aMSaさん
コマンドで出すと威力が上がる。

あばだんごさん
あとコマンドで昇龍拳を出すと、1フレームから無敵がついたり。空中の移動とか機動力は低くて復帰は弱いんですけど、格ゲーっぽく相手をガードさせときの有利フレームとかヒットストップがかなり多めに作られている。なのでガードさせると、かなり有利です。その時にどれだけ相手を読んで攻められるかっていうキャラクターですね。キャラクターによっては50パーセントぐらいあれば昇竜拳で倒せる。あと昇竜拳は1フレーム無敵なんで、困ったら擦ったりとか、つかんできそうだなと思ったら擦るとかもできます。もしかしたら「EVO」でも見るかもしれないキャラクター。「ディディーコング」や「シーク」と対比されることが多いですけど、彼らは低いパーセントで倒すことはないので正統派と言われます。そうやって見ると、「リュウ」は荒らし力が高めに設定されていますね。

image by official site

あばだんごさん
「ゼロスーツサムス」は「Nairo」が使っているので、たぶん上位で見ることになります。あともう1人、「Marss」という強豪も食い込んでくる。「ゼロスーツサムス」は機動力がすごく高くて、高火力で防御力もある。なんでも持ってる超性能な上に、さらにワンチャンスを生み出す力を持っている、すごいキャラクターですね。

うめきさん
しかもいろいろな技からワンチャンができる。

aMSaさん
確かにワンチャン持っていくための技はいくつかあるんですけど、その猶予はあまりなかったりする。

あばだんごさん
あと「ゼロスーツサムス」は、投げれば確定で倒せるパーセントがあって、自身が150パーセントぐらいあったら相手が30パーセントでもつかんだ瞬間に勝ちが確定するんですね。

――非常に強力なキャラクターに聞こえますね。

うめきさん
ただ、技に繊細さがあって難しい。空中ニュートラル攻撃も、先端で当てると反撃もないんですけど、根本でガードされると反撃を狙われる。そもそもジャンプを多用するバッタキャラなんで、もぐられてから地上スマッシュを決められるとつらい。

あばだんごさん
対地があまり強くないというのはあります。

うめきさん
できることも多いですけど、求められる技術も多いんで、ちょっと判断をミスるとバーストしまう。立ち回りで結構流れを取れるんですけど、それでも取られる時がある。あと、つかみがほかのキャラより遅いので、外したときのリスクがあります。相手も常に意識してるんで、ここぞって時に通すことができれば強いんですけど、逆に通せないとそのせいで負けてしまうこともありますね。

あばだんごさん
でもやっぱり強いです。倒せるルートがいっぱいあって、復帰も強くて、ほかのキャラにはないワイヤー復帰みたいなのも復帰阻止されにくい。

うめきさん
強いて言うならコンボを受けやすいって弱点もありますね。キャラによって技を受けたときの硬直時間とか、技を受けた側がすぐに動けるまでの時間というのがあるんですけど、キャラクターによってすぐに動けたり、ずっと止まってたりすることがある。その時間によってコンボが入る入らないキャラクターなどがいて、「ゼロサム」は一部のキャラにそういった耐性がなかったりします。

あばだんごさん
つかみが弱めなので、ガード張りっぱなしににも弱い。「ディディーコング」がバナナを持ってガードしてるだけで、「ゼロサム」はやることがなくなるとか。でもその状況でつかんだら大きなリターンが得られますね。

image by official site

あばだんごさん
マリオは特筆する点はあまりないんですけど、スタンダードな強キャラという感じで、やることは走って相手をつかんで投げてコンボするキャラです。でも投げのコンボが強くて火力が高く、ループ性もある。あと上スマッシュがかなり強くて、頭部が無敵なんで走りながら敵の着地位置の裏に振ったり、対地でも横にも判定があるので回避を見て当てられる。わかりやすい感じの強いキャラだなと思います。

aMSaさん
高パーセントだと露骨に上スマッシュを狙ってきます。

うめきさん
あと、スマッシュ攻撃のダメージが大きいので、ガードした時にガード解除されるまでの時間が長いんですよ。

あばだんごさん
たいていのキャラってスマッシュを振ったらスマッシュをお返しされるんですけど、「マリオ」のスマッシュは隙が少ないので、その後やられるという択がない。

うめきさん
早くて無敵もついているのに当たったら撃墜してしまう。

あばだんごさん
このゲーム、パーセントが溜まって困った時に投げて倒せるキャラはけっこう強いです。それが「マリオ」にはあるんで、上スマッシュでびびってる時に投げて倒すみたいなのは、結構いいですね。

aMSaさん
つかみの隙もゼロスーツサムスに比べれば全然ない。マリオは「Ally」という「Cloud9」所属の選手がいます。「Ally」は反応とか読み合いの速度が尋常じゃないですね。

image by official site

あばだんごさん
僕が今使っている「ミュウツー」に関しては、上位15キャラには入っています。「ミュウツー」は典型的な紙装甲・高火力で、こんな見た目なんですけど体重が全キャラクター中3番目に軽い。軽いのに超でかいので、ヒットボックスもかなり大きくて、コンボされやすいという弱点がある。あとジャンプがゆっくりめなんで、コンボが避けにくいという点もあります。ただ、技の威力が高いので、1回コンボするだけで結構パーセンテージを蓄積させられるんですね。あと困ったら投げ始動で撃墜できるというのも強いですね。

うめきさん
飛び道具もかなり強いです。球の速度が速くないので、飛ばして相手がガードすると、そのあいだに近づいてきた「ミュウツー」に投げられる。

aMSaさん
そんなに狂ったところはないのかな。

あばだんごさん
気づいたらやられている時が多いですけど、火力が高くて強いですね。

image by official site

あばだんごさん
たぶん「EVO」では「フォックス」も見ることになりますね。ダッシュ上攻撃などを引っ掛けたら、そこから始動してコンボが稼げます。スピードも早い。強いキャラは素早いのが多いですけど、単純に移動速度がかなり早い。素早い択が強いのと、着地狩りも強いので、攻めると強い。ただ伝統なんですけど、「フォックス」は敵からのコンボが入りやすいという弱点があります。それに復帰がちょっと弱いです。

aMSaさん
ただ、「フォックス」は攻撃的なわりに、高いパーセントになった時でも投げで撃墜ができないんですよ。決め手に欠けるところはありますね。

うめきさん
でも崖上にいるときの「フォックス」はすごい強いので、こちらが崖上にいる内に倒しきりたいキャラですね。

image by official site

あばだんごさん
「ソニック」は単純に早い。桁違いに早くて、そのわりに体重は重め。横B(スピンダッシュ)の出だしに無敵がついていて、その上キャンセルができちゃう。かなり待ちが強めのキャラなってますね。

うめきさん
ダッシュしても早いので、相手が技を置いて潰そうとするんですけど、その技を見てから隙を見て狩られてしまう。

あばだんごさん
飛び道具が来ても、無敵を合わせれば貫通するので。

うめきさん
このキャラの上B(スプリングジャンプ)がコンボ抜けに優秀で、発生に無敵がついている。頂点に行く瞬間は無敵で、崖際でも無敵で崖をつかめるので、けっこう安定しますね。

あばだんごさん
あとは投げでも敵を倒せますね。ただ、横の差し合いがちょっと弱いのと、下に暴れる技があまりないのが弱点かな。着地狩りされると弱い。格下に負けないキャラではあります。相手の行動を見てから対応はできるんですけど、あまりほかの強キャラと比べると一発逆転みたいな技は少ないので、スピンを丁寧にガードされて丁寧に対応されるとソニック側はめんどうですね。

image by official site

aMSaさん
「シーク」は最初のアップデートから弱体化され続けてますけど、現在でも最強キャラの1人ですね。

あばだんごさん
今でもトップクラスだと思います。

aMSaさん
「シーク」は常に立ち回りが最強ですね。

うめきさん
立ち回りがもう、最強ですね。撃墜力がないのが弱点だったんですど、「シーク」使いによってそこも開発されました。早くて技の後の隙がないので、いろいろなことができる。

あばだんごさん
「シーク」のつかみは全体フレームなどが全キャラのなかでもっとも優遇されていて、隙が少なくて、つかみからのコンボも強い。

うめきさん
相手を運ぶ能力も高くて、空中前、空中前、空中前でもう相手が崖を背負う。あと飛び道具の出が早すぎて、見てからガードはできないです。

あばだんごさん
飛び道具(B「仕込針」)は他の技と相殺されないですし、相手キャラのパーセントが溜まってから連射されると厄介です。一生続いて崖を背負ったかと思うと、崖上も強いんですよね。無敵技(↑B「浮身」)で崖もつかめるんで、復帰も強い。弱点は強いて言うなら、軽い。

うめきさん
あと、ほかのキャラよりバーストするのが難しい時があるんですけど、立ち回りも強いし崖上を取られると、運でなんとかするしかない。

あばだんごさん
求められる技術はかなり多いですね。やれることも多いですけど、全部を引き出したらかなり強い。ただ人間なんで、いつも上手くいくとは限らない。

image by official site

うめきさん
「ピーチ姫」は地上ジャンプと空中ジャンプがあって、このキャラだけ特殊なんですけど、「空中浮遊」という特殊な能力があるんですね。ジャンプボタンと下入力で3秒間浮くことができる。

aMSaさん
『スーパーマリオUSA』の「ピーチ姫」の浮遊ですね。

うめきさん
あとジャンプをキャンセルできます。ジャンプをキャンセルしてすぐに急降下できる。普通のキャラはジャンプの頂点じゃないと急降下が出せないんですけど、このキャラはどこからでも急降下を出せるので、特殊な動きができます。空中浮遊を使ったコンボもあります。空中技を出しながら着地をしてコンボしたりとか。とにかく空中浮遊が強いので、ずっと同じ場所にとどまれるし、横もそれなりに動ける。操作は忙しいんですけどね。

あと、ガードさせて有利というキャラも多いです。パワーもなぜか高く設定されていて、「マリオ」の上スマッシュより強い攻撃も出せる。パワーキャラクターの「ドンキー」とかと同じぐらい強い。

――空中浮遊からの多彩で強力な攻撃、面白いキャラクターですね。

うめきさん
あと、「ジャンプキャンセル急降下すかしつかみ」といった特殊なムーブが強かったりします。攻めが強いキャラではあるんですけど、スピードは遅いキャラクターなので、動きが早いキャラに逃げられたりすると厳しい場面になりますね。

――『スマブラ for Wii U』を中心にゲーム性やキャラクターの解説ありがとうございました。第3回の最後に、難しい質問かもしれないですが、『スマブラ』の存在を軽く知ってますぐらいの人がプロ同士の試合を見たとき、どこに着目すれば楽しめると思いますか。

うめきさん
まずはそういう人たちが見て着目しているのが、こんな動き俺の知ってる『スマブラ』じゃないみたいな。まずコンボが面白い。

あばだんごさん
『スマブラ』ってこんなことできるんだ凄いかっこいいっていう感じ。

うめきさん
結構エフェクトとかモーションとにこだわりがあって、そういうのも面白いのかな。

あばだんごさん
復帰こんなにできるんだっていうのも、ちょっと触ったくらいの人にはびっくりされるかもしれないですね。

aMSaさん
逆に見てて、なんで今阻止にいかなかったんだろうとか思うかもしれないですね。

うめきさん
うまい人であればある人ほど、パーセントが溜まっているのに生きてるのも見所かもしれませんね。

――削りがないので、そういう攻防がずっと続いてるとよく分からなくてもドキドキしますよね。

あばだんごさん
高パーセントの熱い試合は面白いですよね。

aMSaさん
お互い高パーセントになったら、真ん中を境に引き行動ばっかりみたいな感じになったりして、それが20秒30秒と続いたりするのも面白いですね。ストックが並んでる時はまだワンチャンあると言えます、落とせば終わりなので。

うめきさん
あと、一番見ていてワクワクするのが、100パーセント過ぎているキャラクターと、30パーセントで2ストックあった方が強い一撃を貰ってストック落として流れを持っていかれてガンガン削られてひよって勝負けたりとか、そういうのは盛り上がったりします。

■運営編
第1回 「EVO参戦までの国内競技シーンを紐解く
第2回 「EVO参戦後に急成長を遂げた競技シーンの軌跡
■プレイヤー編
第3回 「ほかの対戦・格闘ゲームとなにが違うのか?」
第4回 「脅威の『スマブラDX』と「EVO 2017」へ向けて」7月14日掲載予定

[取材・執筆 Nobuhiko Nakanishi]
[取材・編集・撮影 Shuji Ishimoto]

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