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今年1月31日にSteamで早期アクセス販売されたばかりの『Conan Exiles』は、ノルウェーの開発会社Funcomが制作を担当、世界的にヒットしたヒロイック・ファンタジー小説「英雄コナン」シリーズの世界観をベースとするオープンワールドサバイバルゲームだ。対人戦ありのサバイバルゲームのジャンルでは『ARK: Survival Evolved』や『7 Days to Die』などがすでに大きな成功を収めている中で、販売直後に公式サーバーが稼働を一時停止(現在は販売再開)するなど、その注目度の高さを不思議に思った読者もいるだろう。

詳しくは後述させていただくが、『Conan Exiles』は骨太な背景設定とファンに信頼された開発元、この2つの柱が人気の理由であり、さらにもう一つ避けては通れぬ要素がある。そう、すでにネット上で散々話題にされている“陰茎・スライダー”の存在だ。唐突に下品な表現で申し訳ないが、本サイトですでにお伝えしている通り、本作はスライダーで男性器のサイズも調整可能、さらにゲーム内で揺れるとあって、SNSをはじめとするネット上には、自由奔放に揺れる気持ちよさげな男性器の下半身画像・動画が出回り、そればかりが注目されしまった。

本記事では全裸キャラクターのおっぱいや陰茎といったセクシャルな表現が原因で、あるいは早期アクセスを理由に購入をためらっている人に、『Conan Exiles』といったいどんなゲームなのか、けっして“陰茎スライダー”だけが本作の売りではないということをお伝えしたい。

 

プレイヤーはみな等しく追放された罪人。その罪状は…

乾いた砂と岩ばかりの世界で目を覚ましたプレイヤーたちは、英雄どころか罪を犯し磔(はりつけ)にされた追放者。焼け付く砂漠にまさに体一つで放り出され死を待つばかりのところを救われ、物語は幕を開ける。

まずは新ワールドで遊ぶためのキャラクターメイキングを行おう。男女の性別、人種、顔や髪型などをあらかじめ用意されたテンプレートから選べるが、正直バリエーションは少なく、洋ゲーにありがちな濃い目の顔立ちが多い。キャラメイクの自由度は低いが、唯一女性のバストと男性の性器だけはスライダーで任意のサイズに調整できる。

キャラメイクでもっとも重要なのは「信仰」だ。現在はクロム・セト・ヨグ・ミトラの4つの宗教から選択でき、それぞれ信仰心を高めて得られるメリットが大きく異なっている。たとえば“蛇と生けにえの神 セト”を選べば毒矢・解毒薬の生産が可能に、“食人の神 ヨグ”を信仰した者だけが人肉を浄化し食すことができる。協力プレイにせよPvPサーバに乗り込むにせよ、もし友人と一緒に遊ぶのであれば、事前にどの宗教を選ぶか話あっておくことをおすすめしたい。

映画「コナン・ザ・グレート」でシュワルツネッガー演じるコナンが信仰していたのは“崇拝を求めない神 クロム”だ。人々の祈りに応えぬ代わりに崇拝も求めない神ゆえ、今のところゲーム内でもあまりメリットがない。

キャラクターのカスタマイズにおいてやや残念なのは、15種から選べる人種のどれを選んでも、ゲーム内で差がないことだ。歴史上実在したピクト人、小説に登場するハイボリア人らにはそれぞれ「弓術に優れ礼儀正しい」「騎士道と剣術で名高い」などの特徴がせっかく用意されているので今後にぜひ期待したい。

キャラクターメイキングが終了すれば、いよいよ過酷なサバイバルが始まるが、謎の語り部による「道なりにすすめ……」という英語音声が聞こえるのみで、チュートリアルなどはまったく用意されていない。移動はWASDキー、Eキーでアイテム取得、マウスの左右クリックで武器/道具の使用、Mキーで全体地図表示と操作方法はシンプル。『ARK: Survival Evolved』を始めFPS視点のサバイバルゲームで遊んだ経験があれば、特に迷うことなく直感でプレイ可能だろう。とは言え、ただ道なりに進めと言われても戸惑っているうちに、喉の渇きや飢えで早々に死亡したプレイヤーもいたのではないだろうか。荒々しく過酷な世界観をぶち壊さない配慮はもろん重要なのだが、もう少し初心者が最序盤を楽しみつつ遊べるよう自然に誘導するシステムが今後期待される。

 

飢えと乾きに苦しむ日々。暖かそうな焚き火の明かりが…

プレイヤーはMAP最南端でゲームを開始し、まずは東西にのびる水場を目指していく。水は生命線だが水場には危険な野生動物がはびこっており、PvPサーバーであれば他プレイヤーとの遭遇率も高くなる。

砂漠を抜け緑豊かな水辺までたどり着けば一安心……からは程遠い。水辺周辺にはインプ、クロコダイル、シェールバックといった野生動物が生息し、容赦なく襲い掛かってくる。もしあなたが参加しているのがPvPサーバならば、なおさら危険だ。日本人の多いサーバでは「相手が手を出してこない限り、こちらも無駄な戦闘は仕掛けない」という“紳士的蛮族(?)”が比較的に多いのだが、海外サーバのプレイヤーは殺意の高さが違う。こちらが貴重品を所持していようがいまいが関係なく、「オマエ イマ オレト メガアッタ ダカラ コロス」ぐらいのカジュアルさで襲ってくるサイコパスがMAP全体をうろついてると思ってよい。万が一目と目が合ってしまったら、己の信じる神に祈りつつ全力で逃げるか、諦めて戦うしかない。

PvP禁止の協力サーバならば焦らず、まずは水から離れすぎない土地に拠点を構えて経験値を稼ぐのが正攻法だ。『Conan Exiles』では木材や岩、草といった素材採取から、道具や建築素材の生産まで、何かアクションをおこすたびに経験値を獲得できる。また微々たる量だが「生きてるだけ」でも時間経過で経験値が入るので、序盤は最低限の生活必需品を作っていればレベルアップし、攻撃力や最大HPなどを伸ばす「ステータスポイント」と、生産スキルを学習するための「知識ポイント」が得られる。体力も攻撃力も低く、まともな装備がそろわぬうちはインプ一匹といえども十分な脅威になる。『Conan Exiles』にはレベルに合わせたクエストが用意されているわけではない。何をすればよいのかわからないまま野生動物に襲われて、ただただ死んでしまうというプレイヤーは、まず安全確保を兼ねた家造りに着手し同時に経験値を稼ごう。

レベルキャップは基本シングルプレイでLv100、マルチプレイはLv50が上限。マルチプレイでは武器と防具の担当をわけるなどして、限られた知識ポイントを有効に使いたい。

松明を持たないと夜は足元すら見えない漆黒の闇に包まれ、あちらこちらに暖かそうな松明の明かりが見える…が、ゆめゆめ近寄ってはならない。
焚火がある=NPC追放者がいる証。暗闇での戦闘は装備が整うまではおすすめしない。

 

生活基盤が整い始めたら、よりよいQOLを求めて冒険へ

とりあえず夜に怯えず過ごせるマイホームを建て、動物を狩り、肉を焼き食べる平和な日々で『Conan Exiles』は終わるゲームではない。この世界にはインプやクロコダイルよりはるかに強力な動物をはじめ、危険と謎に満ちた世界が広がっている。東へ西へと足を伸ばすうちに怪しげな遺跡、見たこともないモンスタ-たち、不思議な洞窟、追放者の巨大な集落など数多くの発見があるだろう。手に入れたものの使い道がよくわからぬアイテムもきっと出てくるはずだ。

もともと「英雄コナン」においてクロムの神は“鋼の秘密”の持ち主であったが、地球に住む巨人たちにその秘密を奪われてしまう。怒り狂ったクロムは巨人を襲うのだが、怒りのあまり肝心の“鋼の秘密”を地球に置き忘れ、その秘密は人間の手に渡り、鋼は宝石や黄金より価値があるという背景設定になっている。本作でも鋼は最高級の素材だがゲーム内でその入手・生産方法はどこにも記されていないので、ぜひその謎を解き明かしてみよう。昨今はどんなタイトルでも公式Wikiをはじめ、ネット上にはプレイ動画や攻略Blogがあふれ、アイテム名で検索すればほとんどの疑問が解決する。だが、今までできなかったこと、分からなかったことがある瞬間解決する、その試行錯誤と手探りプレイ感こそがサバイバルゲームの醍醐味であり、できれば『Conan Exiles』でもその新鮮な驚きを味わっていただきたい。

 

きみだけの奴隷を捕まえて使役しよう!

そこそこの鉄や鋼の道具も揃い、安心・安全な我が家も建築終了。だけどなにか物足りない。刺激が足りない……そう感じたら次のステージへステップアップ!そう、あなただけの奴隷を捕まえる時期がきたのだ。

各地で遭遇するNPCは全員がプレイヤーと同じく罪を犯した追放者で、焚き火を2~3人で囲むものもいれば、1つの村・街を築く集団までその規模はさまざま。基本的にプレイヤーを見つけると自動的に襲ってくので、特製の棍棒で殴って気絶させ縛り上げ、「苦難の輪」に放り込めば“調教”がスタートする。苦難の輪とは「苦痛を与えることで、相手の希望を失わせ奴隷に仕立て上げる」ための道具で、奴隷を縛り上げたままアクセスするとNPCはアイテム化し、一定時間後に奴隷として生まれ変わる。

ステータスでSTR値をあげていると、棍棒で殴っても気絶する前にNPCを殺してしまうバグは現在修正されている。
記念すべき初めての奴隷は偶然にもミトラの神官だった。拠点まで延々縄で引きずる絵面はなかなかのインパクトだ。普通死にますよね……。

NPC追放者たちには人種・信仰に加えて最初から弓兵、戦士、神官、踊り手などの職業とレベルが設定されており、たとえば戦士Iよりも戦士II、戦士IIIと高レベルの奴隷を捕まえたほうがより強く、よりよい武器を装備している。料理や皮なめし、大工など生産系能力を持つ追放者もおり、奴隷化し使役すればアイテム生産に必要な原材料が多少減る他、プレイヤー自身が信仰していない宗教の特殊アイテムも奴隷が代わりに生産できるなど大きなメリットもある。

川辺や山中の小規模集団はたいてい低レベルの戦士で野生動物相手にもあっさり死亡してしまうので、ある程度大きな追放者の拠点へ殴り込まねば、自分がほしい職業の奴隷はなかなかみつからない。全身を鋼装備でかためていても一人で複数のNPC相手に戦闘しつつ、欲しい追放者だけを気絶させるのは難しくいので、できれば友人との協力プレイがおすすめだ。

追放者たちは奴隷にするだけではなく“捧げ物”としての利用価値もある。信仰した宗教によっては殺害したNPCの死体から「無傷の人肉」や「心臓」を取りだし捧げることで信仰心を高め、その見返りに各宗教ごとに異なる特殊なアイテムなどを得られるからだ。

なお筆者のキャラクターは食人の神ヨグを信仰しており、NPC追放者の村を襲う際には映画の1シーンを思い出す。「村を襲って男は皆殺し、女は奴隷に。殺した男の人肉をヨグ神に捧げる極悪非道の奴隷商人」として、拠点には女性奴隷をはべらせる脳内ロールプレイを楽しんでいる。食人文化やゴア表現が苦手な方にはちょっと向かない遊び方だが、詳しいシナリオがあるわけでも、クエストが与えられるわけでもない世界ゆえに、自身の想像力で『Conan Exiles』の世界を豊かに彩ってみてほしい。

画質をおとすことでゴア表現は軽減されるが、それでも部位切断と流血はそこそこ激しいので苦手な人は注意してほしい。

 

早期アクセスを理由に購入しないのはもったいない、期待の一品

冒頭でお伝えしたとおり、サバイバル&クラフトゲームというジャンルには『Minecraft』や『ARK: Survival Evolved』の大ヒット作をはじめ、Steamで販売されているものに限定しても相当な本数が世に送り出されている。3匹目、4匹目のドジョウに見える本作品が、ここまで注目を集めたことを不思議に思う読者もいるだろう。

開発元のFuncomは古くからのPCゲーマーには思い入れのある名前で、今やSF MMOの草分け的存在『Anarchy Online』、神話や怪奇現象を扱う『The Secret World』といったMMORPGの開発・運営として欧米では知られている。また本作と直接の繋がりはないが開発期間3年、同じく「英雄コナン」をモチーフとし、暴力的でセクシャルな描写を前面に押し出した大人向けMMO『Age of Conan:Unrated(旧Age of Conan)』も同社が手がけており、現在もサービス中だ。いずれもややクセの強い作品ゆえに日本での知名度は今ひとつだが、シナリオや世界観の丁寧な作り込みと、プレイヤーの予想を良い意味で裏切るコンテンツ実装がコア層に受け、根強いファンを抱えているというのが販売開始前から注目を集めていた理由の一つである。

原作小説はこれまでに3度映画化され、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演し彼の出世作ともなった「コナン・ザ・グレート」の名を記憶してる人も多いはずだ。「男も女も獣も信じられるものは何もない。信じられるのは鋼だけ」という野蛮で荒々しい世界観が大きな魅力で人気を博しており、『Conan Exiles』にもそのエッセンスはしっかり取り入れられている。

個人による開発と異なりFucomという信頼の開発元がついていることもあり、開発が突然ストップする、致命的なバグが長いこと放置されるという不安はない。実際リリースから現在まで、かなり頻繁にバグ修正を含むアップデートが実施されている。日本語訳も完全ではないが日に日に日本語化される部分は増えており、「早期アクセスだから」という理由で購入をためらうのはもったいないだろう。この機会にぜひとも野蛮で血に塗れた、だが魅力ある『Conan Exiles』の世界を体験してほしい。

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