「あと30日で、助けが来る」。そう告げられた5人の生存者が、雪と氷に覆われた極寒の地で決死のサバイバル生活を開始する。『Impact Winter(インパクト・ウィンター)』は「氷の惑星と化した地球で30日間生き延びる」という明確なゴールが存在するサバイバル・アドベンチャーゲームである。先に言及しておくと、本作は5月23日に海外リリースを迎えたのち、ゲーム内容よりもロード時間の長さとコントロールの不便さにより悪い意味でインパクトを残してしまった。

この2点に関しては、開発を担当したMojo Bonesが早急に改善を図るとロードマップにて表明。「メニュー/インベントリ画面上でのマウス操作に対応していない」という、プレイフィールの悪さに直結する問題は5月26日に、ロード時間の長さに関しては6月3日に改善されている。よって今夏リリース予定の国内版には影響の出ない些細な問題と言えるのだが、これほどまでに明らかな欠陥を残したままリリースにゴーサインが出たという事実があると、ゲームの中身にも疑いの目を向けたくなってくる。肝心の極寒地サバイバル物としての期待に応えられているのだろうか。国内版リリース前に、確認の意を込めて作品紹介を行いたいと思う。

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隕石の衝突が人類から光を奪う

教会でシェルター生活を送る生存者たち。※筆者プレイ時には日本語が含まれていたが、5月29日のアップデートにより対応言語から削除済み

本作の世界では、12か月前にカナダ中南部のマニトバ州ブランドンに隕石が落下。衝突により地球上の電力・通信網が途絶え、人類は2か月間のブラックアウトを経験する。デブリと埃が大気を覆い、一番の被害を受けたカナダおよびアメリカの平均気温は-33℃まで低下していた。残された生存者たちは体温の低下と空気汚染から逃れるため避難生活を余儀なくされる。衝突から4か月の時点で犠牲者は何十億人にも膨れ上がっており、主人公ジェイコブ・ソロモンもまた、この大災害により妻と娘を亡くした犠牲者の一人であった。

家族を失ったのち、ジェイコブは4人の生存者とともに古びた教会に避難し、憂鬱とした表情のまま細々と生活を続けていた。そんなある日、仲間のひとりであるクリストフが発見した謎のロボット「アコライト」が奇妙な無線通信を傍受する。通信に示されたのは30日間のカウントダウン。ジェイコブ一行は、30日後に助けが来るという一縷の希望を頼りに残された力を振り絞り、極寒の地で生き抜くことを決意する。

 

冬の過ごし方はクエストの進行順により変化する

スノーモービルがあれば探索が楽になる

プレイヤーが操作するジェイコブはグループのリーダー的存在であり、相棒「アコライト」と共に外界を冒険し、さまざまな危険に遭遇しながらも仲間のために物資を調達する。4人の仲間はそれぞれの特技を生かしてサバイバル生活に役立つアイテムをクラフトしてくれる。退役軍人のブレインはハンティング用グッズや動物用のトラップ、テントなどを工作。元獣医のウェンディは食材を使って豆ごはんやチキンパスタ焼きといった家庭料理をこしらえてくれる。メカニックのマギーは暖炉やウォーターフィルターといった教会設備の強化を通じて物資の節約に貢献。メカ担当のクリストフは「アコライト」の機能強化(レーダー、バックパック容量、バッテリーなど)によりスムーズな探索を可能にする。

クラフトのレシピは最初から解除されているわけではなく、生存者たちのストーリークエストをクリアすることでアンロックされていく。序盤のクエストはチュートリアルを兼ねており、最初のうちは4人のクエストを満遍なくこなすことでゲームの理解を早めることができる。クエストの内容はクラフト用アイテムの収集や、特定のクエストアイテムを探し出すものが多く、後半になるにつれて教会から遠出するように導いてくれる。

クエストは強制ではないものの、クラフトレシピが充実するにつれてサバイバル生活が格段と楽になる。ブレインのクエストを進めると狩猟により食料の調達が楽になるほか、登山用手袋を着用することで崖を登れるようになり探索範囲が広がる。ウェンディの場合は鎮痛剤や抗生剤といった医薬品を、マギーに至っては移動時間を大幅に短縮するスノーモービルをクラフトできるようになる。マップの往復がプレイ時間の大半を占める本作においてスノーモービルの効果は絶大だ。このように誰のクエストを先に進めるのか、その選択によって救助隊到着までの過ごし方が変わってくる。

 

ジェイコブは仲間全員の命を背負っている

教会にはときおり不審者が盗みに入る。貴重な食料が奪われたり、抵抗した仲間が怪我を負ったりと良からぬ結果が待っているが、不審者を追い返す確率を高める「警備係」を誰かに役割として割り振ったり、マギーのクラフトにより教会の周りにトラップを仕掛けたりと、対策の取りようはある

生存者たちには6つのステータス(体力、元気、体温、満腹感、補水、意欲)、ジェイコブには意欲を除いた5つのステータスがあり、これらを管理することもプレイヤーの役目である。元気は移動やクラフトといった行動により消費され、睡眠や食事により回復する。意欲は他のステータス値に応じて変動し、極端に低下するとメンバー間での口論が増え、最終的には物資を持って教会から飛び出してしまう。仲間の健康と意欲を維持するためにも、拠点となる教会へ定期的に戻り、食料と水を配布しなければならない。探索を切り上げるタイミングを見誤ると仲間を失ってしまう。

また各メンバーには役割を割り振ることが可能だ。役割にはメリットとデメリットがあり、たとえば「ヘビースリーパー」は睡眠中に意欲が回復するかわりに、元気の回復速度が遅くなる。「怠け者」は満腹感・補水ステータスの減りが遅くなると同時に、クラフト速度も低下する。「ハンター」「探索者」といったアウトドア系の役割を振ると食料やクラフト材料の収集に出かけてくれるが、外の世界の危険にもさらされる。快適なシェルター生活を送るためにも、メリットがデメリットを相殺するような最適の組み合わせを考えよう。

 

救助タイマーはタイムリミットではなく、余裕を与えるもの

ゲーム開始時の救助タイマーは残り30日を指している。なおゲーム内の1日は24分相当である

本作では、新しい探索スポットの発見、各種クエストの完了、ロックピックの成功といった行動により経験値(RP)を獲得できる。経験値をためて「RPレベル」を上げると仲間に割り振れる役割の種類が増え、また救助タイマーを数時間進められる。救助タイマーはマップ各地に建てられた無線塔にバッテリーを設置したり、変電所に変電ヒューズをはめることでも進んでいく。救助が来るまでの時間が短縮されるということは、それだけ生存に必要な物資の量が減るということ。闇雲に物資を漁るのではなく、救助タイマーを進めることを意識しながら探索することで生存確率が高まるというわけだ。

このように本作は物資の調達、仲間のステータス管理、クエストおよび救助タイマーの進行と考慮すべき項目が多い。クリア時間、合計RP、死亡回数、仲間の生還人数によって最終的なプレイヤー・ランキングが決まるため、最高の「Sランク」を目指す場合は常に効率化を意識しながら行動する必要がある。こう言うと慌ただしいゲームプレイを想像してしまうかもしれないが、実のところクリアすることだけが目的ならば、ランキングに関わる要素を全て無視しても何とかなってしまう気楽さが本作にはある。ジェイコブさえ生きていればゲームをクリアできるからだ。

 

「過酷なサバイバルゲーム」として遊ぶ必要はない

遊園地や空港など探索スポットの種類は豊富

ジェイコブたちは大自然に広がる雪原地帯に遭難したわけではなく、あくまで雪が降り積もった町中で避難生活を送っている。そのためマップ上には病院、空港、発電所、住居、ガソリンスタンドなど物資の揃った探索スポットが無数に点在している。持ち帰る物資を選別しつつ、何度も往復しながら探索さえしていれば食料やクラフト材料が不足する心配はない。満腹感・補水ステータスの減少も緩やか。野生動物の肉をつまみにビールとラム酒に溺れても貯蔵は尽きない。またジェイコブが外界の危険にさらされる機会はほとんどない。狼の群れにはよほど接近しない限り気づかれないし、武器があれば一方的に倒せる。吹雪による体温低下は教会に戻ることで即時に回復する(暖炉に燃料が投下されている限りは)。

探索・狩猟を怠らなければ食料に困る心配はない

氷の惑星と化した地球でサバイバル生活を送るという過酷な設定ではあるものの、探索とステータス管理を慌ただしく繰り返すシビアなサバイバルゲームとして遊ぶ必要はない。そうした過酷さを求めるプレイヤーには、「Sランク」を目指すという目標がオプションとして与えられている。肩の力を抜いて荒涼とした雪景色をのんびり味わいたいプレイヤーと、タイマーとにらめっこしながら頭をフル回転させたいプレイヤーの両方に配慮したゲームバランスとなっている。いち早くエンディングを迎えたい方はスノーモービルに乗ってクエストをサクサクと消化していけばよいし、時間が許すかぎり探索を続けたい方は救助タイマーを進める行動を控えればよい。

睡眠時間が惜しければ、ジェイコブの元気がなくなるたびにコーヒーを飲ませて30日間不眠不休で働かせればよい。ガソリンスタンドや飲食店からアルコール類を持ち出して仲間に配給し続ければ意欲が下がる心配もない。毎日が二日酔いの楽しげなシェルター生活を送れるだろう。クリアすることだけが目的ならば、ジェイコブ分の食料だけ確保しておいて、残りの時間は惰眠を貪りながら救助を待つという堕落した避難生活を送ることも可能だ。仲間の安否は無視してもクリア自体に支障はでない。

狼の群れは自分から近づかない限り襲ってこない

主人公が危険にさらされないということは、移動中に気を配ったり、考えなければいけないことが少なく、移動時間が退屈になりがち、ということでもある。とくにロケーションをひと通り覚えた中盤以降は、目的地に到着するまでの数分間、WASDキーまたはコントローラの左スティックを押し込んだまま、画面をぼんやりと眺めることになる。サバイバルゲームとしては緊張感が足りないと感じる瞬間であり、気楽を通り越して退屈の域に踏み込んでしまう。

また本作の物語はゲームの冒頭シーンとエンディング部分に集約されているため、ストーリー目当てで本作をプレイし始めてしまうと、モチベーションの維持が難しくなってくる。本作は極限状態に追いやられた人間たちのドラマに焦点を置いた作品ではなく、生存者のストーリークエストも、キャラクターを掘り下げる類のものではない。

 

発売延期は国内ユーザにとって朗報

本稿執筆時点(2017年5月31日)でのSteamストアページ上のユーザレビューは「ほぼ不評」。そう言うと警戒するかもしれないが、冒頭で触れたように、低評価のほとんどは致命的なコントロールの悪さ、ロード時間の長さ、そしてゲーム進行に支障の出る大量のバグが原因となっている。こうした国内版リリース時には修正されている可能性が高い要素を切り離して考えると、本作には寂れた孤独さを感じさせるビジュアル、冷たく静まり返った廃墟での生活など光り輝く部分が多い。

現状はそうした光が差し込めないほどに曇りきっているのであって、開発陣がロードマップ通りにアップデートを続けさえすれば、ゲームの中身を素直に評価できるようになる。そう考えると国内版のリリース延期は必ずしも悪い報せではない。むしろ万全の状態で本作を楽しめる可能性が高まったと、ポジティブに捉えることができる。ゲームの第一印象というのは、一度プレイしてしまうと書き換えがきかない。国内版延期というバンダイナムコエンターテインメントの判断は、結果的に国内ユーザのゲーム体験向上につながるはずなのだ。国内版リリースまでに本作にとっての寒が明け、春が訪れることを願おう。

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