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その“長すぎる”ARG(代替現実ゲーム)が正式発表まで何週間にもわたって続き、『Overwatch』プレイヤーをやきもきさせてきた新ヒーロー「ソンブラ(sombra)」が、PTRを経てようやくPC/PS4/Xbox Oneに実装された。同時に大規模アップデート(1.5.0.2/2.00)も実施され、「1v1」「3v3」の新モードと専用マップが追加。そのほか、クイックマッチでの同一ヒーローピック禁止など、さまざまな仕様の変化がほどこされた。今回は「ソンブラ」の追加と全般的なゲームバランスの変更、一部キャラクターのNerf/Buffによってどうマッチ環境が変化するのかに焦点を絞り、今回のアップデート内容を紹介したい。

 

世界でも有数のハッカーとのバックグラウンドを持つ新ヒーロー「ソンブラ」のロールはオフェンス。使用難度は高く星3つに設定されている。体力は200(白ゲージのみ)。

プライマリウェポン

マシンピストル
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DPSは約160。似た属性を武器を持つトレーサーのDPSが約240であることを考えると一見低めな設定に見えるが、1マガジンの装填弾数が「トレーサー」の40発に対して「ソンブラ」は60発であり、リロード時間を考慮するとそこまで大きな差は無い。状況次第だが、より体力の多い相手に対しては、「ソンブラ」のキルタイムは必ずしも「トレーサー」に劣るとは言えない。

アクティブアビリティ

・ハッキング
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クールダウンは12秒。敵、または「トールビョーン」のタレット、ヘルスパックに約1秒間照射し続けることによって次の効果を得られる。効果レンジは15m程度。

: 約6秒間、スキルの使用を禁止させられる。相手の体力とultのチャージ状態を見ることができ、それはスキル禁止効果が解けてもしばらく(12秒程度)続く。「バスティオン」のタレットモード状態を強制解除。また、すでに発動している敵アビリティ、ultを一部止めることができる。

タレット: 6秒間機能しなくなる。ただし「シンメトラ」のセントリータレットには無効。

ヘルスパック: 一分間、ハッキングした場所から出現するヘルスパックを敵が取れなくする。その間は約3倍のスピードでヘルスパックが出現し、味方がそのヘルスパックを取った場合には「ソンブラ」のultゲージが溜まる。

・テレポーター

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クールダウンは6秒。「ソンブラ」の左腕から山なりの軌道を描いて投げられる。投げた後の15秒間は、任意のタイミングでビーコンのある場所へワープすることが可能。投げた瞬間から発動可能なため、真上に投げて空中にある状態のビーコンへのワープもできる。敵による破壊は不可能。

・インビジブル

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クールダウンは6秒。自身を透明化し高速で移動することが可能。攻撃したりアビリティを使用したりするか、敵の攻撃を受けるか、制限時間が切れた際に効果は消える。実体化する際に多少の硬直が発生する上、密着状態の敵には視認される。さらに「ウィドウメイカー」のインフラサイト、「ハンゾー」の鳴響矢水で位置を探知される。また、「シンメトラ」のセントリータレットは透明状態でも作動する。

・パッシブアビリティ

さらにパッシブアビリティとして、「ソンブラ」は体力が50%以下の敵キャラクターを遮蔽物越しに視認することができる。

アルティメットアビリティ(ult)

・EMP

周囲(半径10m)に円状の電磁波を放ち、範囲内の敵すべてを被ハック状態にする。また一部の敵のultとアビリティは、それが発動した後でも止めることができる。さらにシールド属性を持つものをすべて無効化する(敵ヘルス中のバリアも消える)。

 


 

以上が「ソンブラ」の持つ能力だが、はたしてこのヒーローが現環境を変えるのかを考える前に、今回のアップデートにおけるバランス変更点をざっくりとではあるが紹介したい。

・全キャラクターのultコストの25パーセント増

これが今回のバランス調整でもっとも大きな変更点といえるだろう。過去何度かのパッチにおいて、どちらかと言えばultゲージを溜めやすい方向で調整が図られてきた結果、マッチがultの被せ合いのようになっていたことへのカウンター調整といえる。この調整によって、局面を変えるためのult使用のタイミングが前バージョンにくらべて重要になった。

個別の変更点として大きなものは、「アナ」のナノブーストを受けたキャラクターに速度UP効果がつかなくなったことや、「ザリア」のシールドから得られるパワー減少、「ルシオ」の1秒ごとの回復が10パーセント減、「メイ」のultコストが15パーセント増など、少し戦場のマイルド化の調整が目立つ中、「ソルジャー」の単発火力が17から20に引き上げられるなど純粋な上方修正もある。

 

「ソンブラ」の可能性

『Overwatch』のピック傾向を考えるのには最近活発になってきたプロシーンの影響も無視できない。登場時からしばらくの間はトロールピック扱いされてきた「アナ」が、大会使用率の高さで注目されてから一般使用率が増えたのが良い例だ。「ソンブラ」に関しても実装直後の今、賛否意見はあれども否定的な意見がより目立つ。ただし、それも理解度と共に変化していくものだろう。

個人的には「ソンブラ」には現状の環境を大きく変化させるポテンシャルを感じるが、現状「ソンブラ」がマストピック、あるいはテンプレピックと呼ばれるためにはある程度の条件が必須とされるのかもしれない。

たとえば、前述したようにプロシーンでの使用率の高さで評価を上げた「アナ」であるが、「アナ」がその爆発力のあるultを真に発揮するには本来“VCでの連携”が必須なのだろう。リリース初期、「ザリア」のグラビトンサージに「ファラ」のバレッジあるいは「ゲンジ」の龍撃剣を合わせる戦法が猛威を振るった。今でもある程度有効性の高いこの戦法の一つの特徴は、個々の理解度もさることながら、「ザリア」のグラビトンサージは野良同士でも「見てから」被せやすい拘束系のultだったことである。逆に「アナ」のナノブーストは付与されるまで分からないultであり、野良でプレイしていると付与された方が驚いて本来の力を発揮できない場面も多い。「ソンブラ」を最大限活用するためにも同じように、基本的な理解度の深さと共に、やはり多人数パーティーでの連携が必要とされるのは間違いない。

ハナムラA地点
ハナムラA地点

ただ、野良プレイにおいてもマッチングの質によっては、EMPはラインの押し上げのための基点としての合図となりつつある。たとえばハナムラA地点攻撃の際、今までのテンプレートでは防衛側はタンクとして「ラインハルト」と「ザリア」、ヒーラーは「ルシオ」と「ゼニヤッタ」か「ルシオ」と「アナ」を出す。ハナムラのようなポイントキャプチャーのルールでは、現状タンクが一度に二枚落ちればそれでA地点はほぼ奪取される。そこで「ラインハルト」はギリギリまで盾で耐え、バリア強度が無くなればサブタンクとしての「ザリア」が登場し、バリアで「ハルト」を守りながら自分にもバリアを張って前に出る。ヒーラーはおもにタンクを回復、残りは盾の後ろから攻撃するか裏回りをして陽動、あるいは裏周りを目論む敵を殲滅する役割になる。集合離散を繰り返しながら流動的に対応していくことにはなるが、基本タンクは門前で固まっている時間が多い。

防衛側がその膠着状態を維持して時間を稼ぐことが目的なら、攻撃側はそれを崩すことが目的になる。そこで攻撃側もほぼ同じピック、「ラインハルト」「ザリア」「ルシオ」「アナ」だとして、そこに「ソンブラ」が加わったらどうだろう?答えは簡単である。まずステルスかテレポーターでタンクの裏に回り、敵陣の中でEMPを使いすべてのバリアを無力化して、直後にグラビトンサージを使えば、巻き込み方にもよるがほとんどの敵を倒せるはずだ。今までならグラビトンサージの中に巻き込まれても、自衛の手段を持つヒーローは自力で抜け出すことができた上、カウンターultも使えた。しかしEMPを先に受けている以上、グラビトンサージの中に入ったら6秒間はカウンターの手段も使えず、さらにバリアも剥がれた状態の丸裸である。そこで削り殺せなかったらEMPの効果が切れる直前に「アナ」のナノブーストをつけた「ラインハルト」のアースシャッターでも使っておけば、間違いなくキルしきれるだろう。

もちろん、これは単なる1つのシチュエーションの例であって、いつでもその能力を生かしきれる訳ではないだろう。あるいはA地点を越えたらピックを変更した方が効率的な場合もあるかもしれない。これはあくまでもそのポテンシャルの話ではある。が、やはり「ソンブラ」の存在はゲームプレイを大きく揺るがす可能性を持つ。少なくともヒーローのピックを考える場合の選択肢として、有力なカードと成りうるほどの唯一無二、ユニークな性能の持ち主であると考えても良いだろう。

今回のアップデートと同時に、現行のライバルプレイシーズン2が11月24日に終了し、シーズン3が12月1日から開催されることが正式に発表された。AGRという長い旅を終えて参戦を果たした「ソンブラ」。彼女の真価が試されるのは、ライバルプレイ実施中の実装で起きている現状の混乱の中ではなく、仕切り直しが始まる12月以降になるのかもしれない。

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