アトラスは9月15日にシリーズ最新作である『ペルソナ5』を発売した。前作『ペルソナ4』の発売日が2008年であることを考えると、約8年ぶりの新作となる。初出の際には発売時期が2014年冬と発表されていたが、当初よりも2年伸びてのリリースとなった。プラットフォームは予定されていたPlayStation 3に加えて、PlayStation 4向けにも発売されている。久しぶりの新作ということで、『ペルソナ4』からどれほど進化したのかに注目しながら本作をレビューしていきたい。

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『ペルソナ5』はロールプレイングゲームだ。『ペルソナ4』では稲羽市という架空の郊外が舞台だったことに対し、本作の舞台は実在都市である東京。いわくつきの転校生として都内の高校「秀尽学園」に編入してきた主人公は、さまざまな出来事や出会いをきっかけに悪人の心を盗む「怪盗」となる。こうして高校生と怪盗の二重生活をおくりながら、怪盗行為によって徐々に社会に変化をもたらしていく、というのがあらすじだ。

ゲームの基本的な流れは、充実した高校生活を過ごし、時に怪盗になりダンジョンへ潜り込むというもの。ゲーム内には日付が存在し、1日ごとに昼や夜の時間を過ごしていく。 イベントのない日の自由時間にはアルバイトをしたり、遊んだり、誰かと過ごしたりすることが可能。アルバイトや遊びによって主人公の「優しさ」や「魅力」といったステータスが上昇し、誰かと過ごす際に発生するイベントに役立つ。協力関係コープを築いた 誰かと時間をともにすれば仲が深まりコープのランクが上昇する。「コープ」とは一定のキャラクターとの間に生まれる協力関係だ。 コープランクを上げていけば、新アイテムの解禁やダンジョンでの戦闘サポートなどでさまざまな恩恵を受けることができる。こうして日常を過ごす高校生パートの行動が、ダンジョンへ忍び込む怪盗パートを助けていく。この逆のパターンもあり、怪盗パートでダンジョン内の悪魔を仲間にすれば、日常生活で他人との絆作りにおいて役に立つ。つまり、高校生パートと怪盗パートは車の両輪であり、うまく両方の生活を充実させることで、スムーズな攻略が可能になる。

 

ペルソナ5の進化したビジュアル、変わらない“らしさ”

『ペルソナ5』のビジュアルは、『ペルソナ3』以降のシリーズが受け持つスタイリッシュさを進化させた形に留まらず、国内外の大型タイトルとは一線を画した独自の魅力を打ち出している。最も特徴的なのは随所に仕込まれたアニメーションだ。

プロモーションビデオを見ても、なめらかに動くアニメーションの一端が垣間見えるだろう。『ペルソナ5』ではゲーム中、メニュー画面、ローディング画面、戦闘のリザルトなど何気ないシーンで、凝ったアニメーションが展開される。あまり目立たない部分においてもスタイリッシュさというゲームのアイデンティティを維持しようという狙いが感じ取れる。加えて、このアニメーションはゲームテンポを損なわない。スタイリッシュな演出を大切にしながらも快適なプレイが楽しめるのは、評価すべきポイントだろう。

アニメーションのみならず、鮮やかさを意識したフィールドやモンスターのグラフィック表現も素晴らしい。 アニメっぽさを感じさせつつリアルさのある3Dテクスチャが描かれており、同ジャンルの作品にもヒントを与えるものとなるだろう。

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個人的には、キャラクターの滑らかな動きに感動を覚えた。シナリオ上でキャラクターが怒りや悲しみを表現する場面が多々ある。前作まではテキストの左側に表示されるキャラクターの顔の表情で喜怒哀楽を表現していた。日常のイベントなどではそのベースは変わっていないものの、頭身が高く実際の人間に近い挙動をするキャラクターが、カットシーンでリアルに動くと感情移入しやすくなる。『ペルソナ5』のビジュアルとアニメーションは、美しさや動きでプレイヤーに喜びを与えるのみならず、ストーリーテリングに厚みを持たせるという点でも大きな成功を収めている。

『ペルソナ5』はビジュアル面を進化させる一方で、システムの核となる部分は変化させていない。近年のアトラス作品は「プレスターンバトル」を基本として戦闘を作りあげている。プレスターンバトルとは、ターン形式のバトルが展開されるなか、相手の弱点を突いた攻撃をしたり、クリティカル攻撃でダウンさせたりすることで行動回数が増えるシステム。『ペルソナ3』以降のシリーズでは、このプレスターンバトルを派生させた「ワンモアバトル」が採用されており、本作にも受け継がれている。全員をダウンさせれば総攻撃できる点も前作と同様だ。

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少し変化したといえば、先制攻撃を前提としたデザインが濃くなっていることだ。詳しくは後述するが、パレスと呼ばれるダンジョンで雑魚敵と戦闘する際には、おおかた先制攻撃が可能である。先制攻撃→弱点ヒット→総攻撃と一方的に攻撃を浴びせて終了する戦闘も少なくない。つまり、これまでのワンモアバトルを基本としながら、より一方的に攻撃しやすく、気持ちよさを感じる設計になっている。ボス戦は一転、弱点を狙うことに加えて味方の強化や敵の弱体化を巧みに使った戦闘が求められ、より頭脳的な戦い方をする必要がある。ザコ敵相手には弱点を突き、ボスとは戦略的に戦うというデザインには、アトラスゲームの楽しさが詰まっているだろう。

現代のRPGの戦闘がアクション色を強めていることを考えれば、プレスターンバトルはクラシカルなものだ。しかし「ターン制」「シンプルなルール」「気持ちよさを重視」といった基本的な要素をしっかり押さえながらダレにくい戦闘システムを作りあげている。ただ、特定のキャラクターとのコープランクを一定以上にした状態で、かつ敵とのレベル差が一 定以上開いた場合、この気持ちよい戦闘が強制的に簡略化されてしまう仕様がある。

 

質実剛健の固定ダンジョン

『ペルソナ5』はダンジョンデザインにおいても大幅な進化を遂げた。『ペルソナ3』以降のダンジョンは、自動生成されたマップを目標到達点に向けて進んでいく というのが基本だったが、『ペルソナ5』では、すべて人の手で作られた固定ダンジョンを攻略していくことになる。ダンジョンは広く立体的で、密度も濃い。パズルからクイズに謎解きまで バラエティ豊かなギミックがプレイヤーを待つ。同じような仕掛けがひたすら続くということもなく、ひとつのフロアの中でも異なる仕掛けが用意されており、平面だけではなく高さを意識した謎解きを求められる。『ゼルダの伝説』とまではいわないにしても、RPGのダンジョンとしては特筆すべきクオリティなのは間違いない。ダンジョンの数も『ペルソナ4』に引けを取らない種類が用意されていて、 質・量ともに充実している。

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そしてこのダンジョンにアクセントを加えているのが新要素である「カバーシステム」だ。カバーシステムは障害物があるところでは身を隠せるというステルスゲームでは定番の要素。本作ではダンジョンのフィールドにおいてこのシステムを採用している。カバーしている間はどれだけ敵が近くにいても、発見されることはない。このカバーシステムのおかげで前述したように先制攻撃が容易になっているので、隠密行動をとりながらダンジョンを進めていくのが基本だ。敵のいないところではスムーズに進み、敵を見つけると隠れて奇襲をおこなう。うまく先手を取り気持ちよい形で戦闘を終えると、また探索を再開する。こうした探索→緊張→爽快→探索に戻るというサイクルが組み立てられており、RPGのダンジョンに生まれやすい作業感は薄い。このカバーシステムは見つかった時のデメリットもかなり軽微で、遊び続けるうちに緊張感は薄れていくが、ダンジョン探索にほどよくメリハリをつけている。

 

都会という舞台、いまどきの社会を描くペルソナ5

シリーズのクリエイティブプロデューサーである橋野桂氏は舞台設定について「プレイヤーに感情移入してもらうために、実在の土地である東京という場所を選んだ」と述べているが、この目論見はうまく作用している。これまで『ペルソナ』シリーズで都会が舞台になったことはあるが、『ペルソナ5』はかなりいまどきの社会に寄せられた都会が描かれている。生活感から文化、登場人物まで都会に住む人々なら身近に感じられるものばかりだ。

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物語では体罰から薬物、労働搾取やポピュリズムといった現代社会で課題とされている事象に切り込んでいて、こういったやや際どい社会への問いかけもゲーム世界への没入へ一役買っている。ほかにも「牛丼屋のアルバイトにはいるとワンオペレーションで働かされる」というようなイベントもあり、社会風刺を感じさせるブラックな演出もある。このように、日常生活にも存在する事象を目撃することで、よりゲーム内の世界を身近に感じることができる。もともとアトラス作品には、現代における社会問題に警鐘を鳴らすようなシーンが多く含まれていた。『ペルソナ5』でもこの路線は継承されており、舞台設定の影響もあってか、そういった社会問題を示唆するシーンがさらに説得力を感じさせる。

ビジュアルの鮮やかさもあり作中では豪華な部分が印象に残りやすいが、都会特有の「孤独」も丁寧に描かれている。主人公の住む場所はやや薄暗い路地で、華やかな市街とコントラストとなっているのも意図的なものだろう。前作『ペルソナ4』は人が少ないながらもぬくもりのある郊外が舞台であったが、『ペルソナ5』では人が多いにもかかわらず他人と距離が遠い都会が描かれている。音楽も「Your Affection」を代表に明るい雰囲気の曲が多かった前作に比べて、やや落ち着いた曲が目立つ。そういった音楽や舞台設定のせいか、プレイ中どこか寂しさを感じるシーンが目立った。未来都市風の『ペルソナ3』とも違う、身近で現代的な孤独感を『ペルソナ5』からは抱かされる。

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孤独を感じさせる世界でも、プレイヤーが『ペルソナ5』の世界へ夢中になるのは、キャラクターの魅力があるからだろう。猫から高校生、社会人から中年まで、とにかく多彩なキャラクターが登場する。副島成記氏が描く魅力的な登場人物たちは、それぞれ悩みを抱えており、主人公と交友を重ねていくことでともに成長していく。物語や協力関係コープを通して多くのキャラクターの葛藤や決意などが丁寧に描かれおり、いつの間にか彼らをつい応援したくなってくる。創作物特有のフィクションっぽさと、現実にいるような人間味の両方を持つ魅力的なキャラクターを生み出すことに成功している点はさすがペルソナチームといったところだろう。ちなみに筆者は会長一筋だ。

ひとつ気になったのは、メインキャラクターについては、これまでのシリーズ以上にシナリオでの出番の差が激しいというところだ。魅力的ながら出番が遅いゆえに印象の薄いまま終わってしまうキャラクターもおり、そういた点はもったいないように思えた。

 

ペルソナ5総評

『ペルソナ5』は、どのパーツをとっても、とにかく妥協なく作られた形跡がうかがえる。緻密に描かれる身近な世界観、こだわりぬいたインタフェース、途方もない大きさのダンジョンなど、随所に職人芸が感じられる。戦闘の爽快感やキャラクターとのコミュニケーションをする楽しさも大切にされており、従来の『ペルソナ』シリーズの喜び、もっと言えばRPGとしての面白さに忠実に作られている。ダンジョンはあまりにも多く広すぎるため、「2周目は高校生活パートのみを楽しみたい」といった要望を持つ人もいるだろうが、 欠点といえばそれぐらいだろう。

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『ペルソナ5』はクラシックなRPGとして楽しめ、さらに次世代を感じさせるスケールを持つ。そういった意味ではJRPGとして正統な進化を遂げた作品のひとつだ。今や大型JRPGを作る体力を持つメーカーはそう多くないなか、アトラスは国内メーカーとしての存在を強く示すことに成功した。今後のシリーズ展開にもアトラスの次回作にも期待が持てる、『ペルソナ5』はさまざまな意味で次につながるタイトルになったことは間違いないだろう。

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