『プロジェクト・ニンバス』プレビュー。タイからやってきた、日本のアニメ・ゲームの影響を受けたメカアクション

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ソフトバンクショップに行けばちょっぴり生意気な感情認識ヒューマノイドロボットPepperが受付嬢がわりに立っていたり、部屋の片隅にはコードを巻き込んで身動きがとれなくなっているルンバがいたり、普段の生活のなかでもロボットを目にする機会が増えている。しかしわたしが「ロボット」という言葉を耳にしたとき、または目にしたとき、頭の中に描くのは、そんな馬鹿なと思わせる合体が魅力の『ゲッターロボ』や、シリーズが始まって35年以上経過した人間ドラマ『機動戦士ガンダム』などのアニメである。そして、それら現実離れした世界、いつかそのような時代が訪れるのではないかと夢見る世界を疑似体験させてくれるゲームが、わたしにとって身近な「ロボット」なのである。

『アーマードコア』『フロントミッション』『電脳戦機バーチャロン』などなど、誰にだってひとつぐらいは「わたしのお気に入りのロボットゲーム」があるのではないだろうか。わたしたち日本人と同様に、アニメやゲームに魅せられた人は海外にもいる。本稿で取りあげる『Project Nimbus(プロジェクト・ニンバス)』の開発者だ。

プロジェクト・ニンバス』は、ハイスピードメカアクションと銘打たれたアクションゲームである。開発を手がけるのは、タイに拠点を構えるデベロッパーGameCrafterTeam。2014年にKickstarterを利用して開発資金約1万7000ポンドを集め、同年11月にはSteam早期アクセスとして販売が開始された。非常に小規模なチームでありながらもアップデートを意欲的に繰り返し、現在は第二章までプレイ可能な状態になっている。まだ早期アクセスの状態ではあるものの、日本のパブリッシャーGameTomoによって、日本のアニメ・ゲーム文化に影響を受けた作品『プロジェクト・ニンバス』が、本日のアップデートで日本語に対応することになった。

『プロジェクト・ニンバス』とはどのようなゲームなのか?と聞かれると、まずわたしは、『アーマードコア』と『エースコンバット』をミックスしたようなものだと答える。それだけだと、「ああ、『Strike Suit Zero』や『Strike Vector』のようなゲームなんだね」と言われてしまうので、そこに、開発者のありったけの日本アニメ・ゲーム愛で味付けした作品だと付け加える。

開発者が影響を受けた日本のコンテンツはゲームだけではないと確信させるのは、冒頭から登場するキャラクターたちだ。彼女たちの見た目の話ではない。キャラクターの見せ方、話し方、せりふ、多くの部分に日本のアニメ・ゲームからの影響を感じられる。またそれだけでなく、テーマソングから『機動戦士ガンダムユニコーン』を思い浮かべる人だっているだろう。さらに名塚佳織さんや小清水亜美さんといった声優を起用し、吹き替えに対応しているという気合の入りっぷりには驚かされる。

 

「ハイスピードメカアクション」に偽りなし

遊びたいミッションを選択可能。
遊びたいミッションを選択可能。

早期アクセスだからなのかメインメニューは非常にシンプル。今のところ用意されているゲームモードは「キャンペーンモード」と「サバイバルモード」の二つ。前者はそのまま物語を進めていき、後者は複数のWAVEを乗り切ることを目指す腕試しプラスやりこみモードだと思ってもらっていい。いきなり「サバイバルモード」をプレイしてもいいのだが、まずは操作の基本も学べる「キャンペーンモード」に触れてほしい。

「キャンペーンモード」の最初にはチュートリアルが用意されている。前後左右への移動に加え、空が主戦場となるため機体の上昇と下降もあり、キーボードとマウスで操作するならば左手は少々いそがしくなる。キーボードでの操作にわずらわしさを感じるのであれば、メインメニューなど一部でうまく動作しない場面があるがゲームパッドにも対応しているので、遊びやすいと感じるデバイスを選ぶといいだろう。もちろんオプションにはキーコンフィグがある。
どのバトルフレーム(プレイヤーが操縦する飛行メカ)も複数の攻撃手段を備えており、発射レートは高いが一発の威力が低い機銃や、ロックオンしたターゲットを追尾するミサイルといった基本武器、さらにはサイバネティック・ウェポンのファンネルなどさまざま。武器はマウスホイールか数字キー、ゲームパッドなら十字キーで変更できる。開始前に搭載武器を変更するといった要素はないが、途中で新たな武器の使用準備が完了していく演出があるミッションもあるので、カスタマイズできないことに対する物足りなさというのはさほど感じられない。

攻撃兵器だけでなく、デコイやフレアも登場する。ちなみにグリーンの文字で表示されるのは敵機。
攻撃兵器だけでなく、デコイやフレアも登場する。ちなみにグリーンの文字で表示されるのは敵機。

本作を初めてプレイしたときの感想は「速すぎる」の一言だった。いまなぜ敵を倒せたのか、なにが起きて自機が破壊されたのか、なにもかもが速すぎてさっぱりわからなかった。とくにエリアが狭いミッションの場合、画面に映し出されている光景が壁なのか天井なのか、自分がどこを向いているのかわからなくなることも多かった。その原因は、敵機をロックオンしたままだからということに気づくと、ハイスピードを楽しめるようになった。ただそれでも移動操作にはある程度の慣れが必要で、個人的にはもうすこしロボットならではの重みが欲しいと感じる。

狭い空間やビルが立ち並ぶ地域では、ロックオンをこまめに解除することをおすすめする。
狭い空間やビルが立ち並ぶ地域では、ロックオンをこまめに解除することをおすすめする。

ロックオンしている敵機を撃墜すると、付近を飛ぶ別の敵機に自動で照準が移動する。敵機が射程範囲外になるまでロックオン状態が続くのでカメラが強制的に移動し、自機がどの方向を向いているのかわからなくなることが多いのだ。ロックオンはマウス右ボタンでオン/オフを簡単に切り替えできるので、自機と敵機の間にビルなどの遮蔽物がある場合は一旦解除して別の敵機をロックオンするといった操作をするほうがいい。とくにミッションの難度を高く設定しているときは、ロックオンしっぱなしに気をつけたほうが身のためだ。

上空の戦闘では、ミサイルやファンネルなどが軌道を描き派手さがある。
上空の戦闘では、ミサイルやファンネルなどが軌道を描き派手さがある。
地上に近いと視界を遮るビルなどが多く、バトルフレームの操縦が重視される。
地上に近いと視界を遮るビルなどが多く、バトルフレームの操縦が重視される。

上空の戦闘ではミサイルの軌道が良い味を出しており、複数の武器を切り替えて素早く敵機を撃墜していく楽しさがある反面、視野が広く視界を遮る建物などもないためスピードを感じにくい。逆に地上に近い距離で繰り広げられる場面では遮蔽物が多いのでミサイルの出番が少なく派手さに欠けてしまうのだが、上下左右へのブースト移動を駆使した素早い操縦が重視されるようになりスピーディな戦闘を楽しめる。この二つがうまい具合にミッションに組み込まれており、連続したゲームプレイでも途中で飽きてしまうことはない。


※こちらは英語版のゲームプレイ動画。

射撃や回避といったアクションの部分だけでなく、本作は物語にも力が入っている。すべてのストーリーを通して同じキャラクターを操るのではなく、ミッションによってパイロットやバトルフレームが変化する仕組みになっており、お約束の演出も相まって、1本のアニメを見ているような気分にもなれる。と言うとやや大げさなのだが、開発者はそこも意識しているにちがいない。

もしもあなたが、どうも最近は日本のロボットゲームに元気がないと感じていたのであれば、タイ人による日本愛にあふれた『プロジェクト・ニンバス』を手にとってみてはいかがだろう。早期アクセス中ということで不満点はいくつかあるかもしれないが、完成までの道のりを開発者とともに進んでいくというのも一興であろう。

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