『Redout』レビュー 「WipEout」正統後継者の風格

 

『Redout』は、2016年09月3日にSteamにて配信が開始された、反重力車両を操作するレースゲームである。開発元は34BigThings。販売価格は3480円。現在はPCのみだが、2017年にXboxOne及びPS4でのリリースを予定している。制作陣自らが『WipEout』や『F-Zero』の後継者を自負しており、「Race Faster Than Ever」(これまでのどんなレースゲームより速く)を謳っている。実際に『WipEout』シリーズからの影響が多く見られ、コースにおけるグラフィックの未来感やスピード、そして機体の浮遊感は「現代版WipEout」を思わせる。

 

レースゲームとして

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『Redout』にはシングルプレイ要素として、レース賞金を稼いで機体や装備をアンロックしていく「Carrer」モードが用意されている。Carrerモードは「Class II(※)」のマシンを購入したあたりからがレースゲームとしての本番であり、このあたりからコースを完全に覚えないと勝負にならない難易度になってくる。全体的にCPUも強く設定されており、レースゲームの腕に覚えがあるプレイヤーでも、そう簡単に1位を取ることはできないだろう。ただ、提示されるレースを必ずしも全て順番にクリアしていく必要はないので、手詰まりになる状態はほとんどない。資金さえ貯めればコースと機体を自由に試していけるのは、一人用ゲームとして気持ちのいい作りだ。

※「Class」とは、機体ごとに設定された車の排気量のようなもので、どれぐらいのスピードが出るカテゴリのマシンなのかがひと目でわかる。『Wipeout』でも「スピードクラス」というものが存在するが、こちらはレースそのものに設定されている区分で意味が異なるので、同作のファンは混乱しないように注意されたし。

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武装禁止ルールの「Pure」や、競争機体なしでコースを指定時間内に攻略する「Time Attack」など、レースごとに独自のルールが設定されている。銅メダル(3位)までに入賞すればレースはクリア、結果に応じて賞金が与えられる。全7種あるルールの中でも、「Arena」や「Lastman Standing」は毎周回ごとに最後尾の機体が脱落していく過酷なルールとなっており、難易度はかなり高い。ほかのレースやトレーニングモードでしっかりコースを下見してから臨みたいところだ。ベーシックなレースルールは「Race」と呼称されており、武装の使用が認められている。本作では『WipEout』や『マリオカート』のようにレース中にアイテムを取得するのではなく、稼いだ資金であらかじめ装備を購入しレースに参加するスタイルだ。過去の『WipEout』シリーズではほかのプレイヤーを攻撃できるアイテムが多数あったが、本作の装備は追加シールドやリペア、一発ブーストなど補助系のものが多い。他人の妨害ができる武装は少なめで、しかも使用にブーストゲージを消費するので、使用のタイミングを悩ませる仕様となっているのが面白い。

 

『WipEout』後継作として

本作の映像は、比較的最近の作品といえる『WipEout』後期作である『WipEout HD』や『WipEout 2048』とくらべても数段の技術の進歩を感じさせる素晴らしい出来だ。疾走感の演出が全編にわたって力強く実装されており、プレイヤーを没入させるのに十分だ。高速走行時の視野狭窄の再現も見事で、レースゲームの重要な要素である爽快感にこだわって制作されていることを強く感じさせる。先述のように機体は速度ごとにクラス分けされているが、最初のClass Iから相当に速いので、レースゲームに慣れたプレイヤーでも最初は慣らしが必要だろう。

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オンライン対戦は現状クラス分けの制限をつけられないので、キャリアモードでClass4までアンロックしてから参加することが推奨とされている。ただ制作陣はこのシステムについて今後どうするか検討中のようで、Steamの公式フォーラムでも現在プレイヤーを交えて議論が進められている状況だ。最終的には参加募集時にクラス制限をつけられるような形で落ち着くのではないかと思われる。

 

ドリフトについて

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機体を操作する際の要素として、ハンドル操作(Steer)とは別に、スライド操作(Strafe)が設定されている。これはいわゆる平行移動のような動作であり、反重力車両独特の挙動といえる。この操作は『WipEout』シリーズにはない動作だ。難しく考えず、Steerは機首が回転し、Strafeは回転しない、と直感的に把握しておけば問題はないだろう。

【UPDATE 2016/10/18 12:00】記事本文にて「この操作(スライド操作)は『WipEout』シリーズにはない動作だ」と記載しておりましたが、『WipEout Pure』などのシリーズ過去作品にはスライド移動が搭載されており、正しくない情報でした。訂正しお詫び申しあげます。

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このStrafeはコーナーをドリフトで抜ける際にも用いることがある。Strafeを使用してドリフトする際の一連の操作を説明しよう。まずコーナー突入時点でかなりの角度を回頭しておく必要がある。

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少しやり過ぎと思えるくらいでちょうどいい。この際、コーナーの「外側」にStrafe動作をすることで、いわゆるドリフト挙動になる。機首がコーナーを抜ける方向を自然に向くようになるはずだ。

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あとはコーナー脱出にむけて加速するだけだ。その際、ドリフト挙動で外側についた慣性を戻すために、少しだけStrafe動作のカウンターをイン側に当てると安定する。

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Strafe動作そのものに減速効果が含まれているので、ブレーキなどの細かい調整を含まずとも綺麗にコーナーを抜けることが可能だ。逆に、特に減速が不要のコーナーも毎回このドリフト動作をしていると、それだけロスになってしまう。必要な部分にだけうまく適用していきたい。

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もしコントローラーを使用してプレイしているならば、細かいStrafe動作をするために、右アナログスティックにStrafeが割り当てられているデフォルトのボタン配置がおすすめだ。ドリフトの意識があるだけでコーナーの処理、ひいては全体の速度にかなり差がでてくる。CPU戦を楽に戦えるだけでなく、ゲームプレイにも深みが出るのでぜひうまく運用してほしい。

このStrafe操作はOn/Offのみのデジタル操作ではなく、アナログスティック(あるいはトリガーのアナログ入力)による量的な操作となっている。デジタル操作では押している時間でドリフトする量が決まるが、アナログ操作は押し込み加減により、短時間でより大きくスライドする。より繊細なコーナー攻略が必要となったが、ドリフトの感触を直感的に把握できるように落とし込まれており、ゲーム全体としての深みを増すことに成功している。

 

総評

コーナーをうまく制覇し、レースをクリアできた時の爽快感は昨今のゲームでもダントツといっていいだろう。スピード感にくわえて、『WipEout』シリーズを思わせるソリッドなテクノ系BGMも相まって気分を盛り上げてくれる。『WipEout』のように著名アーティストによる作曲というわけではないが、それでもBGMは素晴らしいの一言。『WipEout』好きなら一聴の価値はある。3480円という価格は、Steamで購入するゲームとしてはやや割高感があるが、オンライン対戦も完備されており、お値段の価値は十分あるといえるだろう。

序盤に限って言えば、通常のレースゲームのようにタイトな操作が必要ない場面が多く、コースを覚えれば確実に速く、強くなれるうえ、中盤以降は上述のドリフト挙動や機体特性把握、コースの把握などで段階的に上達の楽しさが得られるため、レースゲーム初心者にもおすすめしたい逸品である。