2001年にドリームキャスト/PS2版『Rez』が発売されてから、15年が経とうとしている。その間、本作はいささかも古びはしなかった。卓越したセンスで彩られた映像と、そうそうたるアーティストの手による楽曲で形作られたこのゲームが、HDリメイクである『Rez HD』の発売を経て、VRという進化を遂げて三度姿を表した。本稿ではVRモードを中心に『Rez Infinite』というタイトルを掘り下げたい。

※本稿は執筆時のバージョン「1.03」をもとに作成しています。また、とくに断りのない場合、スクリーンショットはTVモードのものを使用しています。

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『Rez』とは?

まずは『Rez』というタイトルについて軽く振り返っておきたい。『Rez』はジャンル名「ミッドナイト・ハイ・シューティング」を名乗る3Dシューティングゲームである。主人公は可視化されたサイバースペースを漂うハッカーとなって、侵入を妨げるウイルスを撃退しながらシステム中枢を目指す――という筋立ての、レールライド型シューティングだ。

3Dシューティングというゲーム内容よりも、むしろ画面演出と音響でプレイヤーの感性を刺激することを主眼においたタイトルで、視覚聴覚に加えてPS2版でトランスバイブレーターという周辺機器を同梱して触覚にまで訴えかけようとする試みや、効果音の鳴るタイミングに至るまでプレイヤーの快感を崩さないようにこだわり尽くされた演出の数々に、発売当時多大な衝撃を受けたことをよく覚えている。

反面、シューティングゲームとしては最小限の作りである。ボタン長押しでロックオンして離して発射、あとは個数制限付きのOverDrive(いわゆるボム)だけとシンプル。メインモードにはスコア表示すら無く、プレイングを演出に反映させるための手段として3Dシューティングという形を取っているに過ぎないという印象を受けるほどで、難易度も最終面以外は控えめだ。

その分、演出との一体感に力を入れており、ロックオンカウントが“チャカチャカチャカ”とアップしていく効果音、レーザーを発射する際の効果音、モザイク状の爆炎を発しながら崩壊する敵キャラといった演出の数々すべてがプレイヤーの快感に向けてこだわり抜かれている。効果音が鳴るタイミングはBGMのビートを外さないようにコントロールされているし、セキュリティゲートに撃ちこむ際の演出はエクスタシーと呼ぶにふさわしい。プレイヤーがシューティングを通じて演出と一体になる奇妙な快感が『Rez』の最大の魅力である。

敵キャラを照準に入れるだけ。ロックオンは同時に8つまで可能で、敵の体力の分だけ多重ロックも可能。ロックオン、レーザー発射、着弾に至るまで、それぞれのタイミングはリズムから外れないように自動で調整される
敵キャラを照準に入れるだけ。ロックオンは同時に8つまで可能で、敵の体力の分だけ多重ロックも可能。ロックオン、レーザー発射、着弾に至るまで、それぞれのタイミングはリズムから外れないように自動で調整される

 

Rezの新たな、そしてかねてよりの故郷「VRモード」

VRモードでのArea4ボス。全力で自機と、そしてプレイヤーの三半規管を殺しに来る難敵である。
VRモードでのArea4ボス。全力で自機と、そしてプレイヤーの三半規管を殺しに来る難敵である。

そんな『Rez』が『Rez Infinite』と改題して、VRに対応して何を得たのだろうか?まず既存のArea1~Area5についてだが、シューティング部分に関しては「何も変わっていない」と言えるだろう。むろん『Rez HD』というリマスター移植を経てリファインされた部分もあるが、BGMから敵の出現パターン、ボスの攻撃に至るまで原則的に『Rez』から変更はない。あくまで「VRに対応した」というだけの変更点である。

そして、それこそが何よりも重要な変更点でもある。「単にVRに対応した」という変化がこれほどポジティブなものであるとは思っていなかった。『Rez』の舞台設定や演出の傾向とVRの親和性が極めて高かったということもあり、『Rez』から一切手が加えられていないにも関わらず、はじめからVR向けに制作されたかのような世界がそこには広がっている。その臨場感たるや、PSVRを被るという行為すら「(Rezの)サイバースペースにログインする」というフレーバーに変換することを可能とするほどだ。PSVRの擬似サラウンド機能も効果的に働いており、ホームシアター等の音響を使用できないというハンデを感じさせない。ハンデといえば解像度もPSVRでは低くなってしまうが、元のアートスタイル自体がそれほど解像度を要求するものではなく、この点でもそれほど違和感はない。

キャプション:別種の仮想空間を思わせるArea5のVRモード。もとよりArea1~4とは異質なAreaだが、敵の巨大感や存在感、自機の浮遊感にさらなる説得力が備わる。またHUDの表示も一部省略される等、VR向けの配慮がなされた画面構成になる
別種の仮想空間を思わせるArea5のVRモード。もとよりArea1~4とは異質なAreaだが、敵の巨大感や存在感、自機の浮遊感にさらなる説得力が備わる。またHUDの表示も一部省略される等、VR向けの配慮がなされた画面構成になる

通常Areaの時点ですでにVR無しの『Rez』には戻り難くなっているのだが、これをさらに後押しするのが『Rez Infinite』での追加ステージ「Area X」である。

 

Rezが奏でる祝祭「AreaX」

review-rez-004Area1から5の踏破、あるいは一定時間ゲームをプレイすることで解放されるのが、本作の目玉でもある新ステージ「AreaX」である。

本Areaはゲーム内容が既存Areaと大きく異なる。まずステージ進行がレールライド型ではなくなり、ある程度の高低があるフィールドを自由に移動できる、TPSに近い仕様になった。ステージの切り替わりも「ステージの一定の場所に到達」「敵全滅」などの条件を満たさないとセキュリティゲートが出現しなくなっているなど、既存Areaとはルールも異なっている。アイテムはプレイヤーの耐久力上昇のみに絞られ、OverDriveは存在ごとオミット。HUDはレティクルしか存在せず、より演出に没頭できるようにシステム側から配慮されている。

その演出の方向性も既存Areaとは大きく変更されている。サイバースペースにハッカーといった背景設定やワイヤーフレーム主体だった既存Areaのビジュアルにはこだわっておらず、色とりどりのパーティクルが寄り集まって形をなしたり、花火のごとくきらめきつつ散ったりといった「点」や「粒子」を強調した演出にシフトしている。

静止画では全然伝わらないと思われるのが残念。これはTVモードのスクリーンショットだが、VRモードではパーティクルそれぞれに立体感が加わり、光の海を泳ぐさまを見せつけられる
静止画では全然伝わらないと思われるのが残念。これはTVモードのスクリーンショットだが、VRモードではパーティクルそれぞれに立体感が加わり、光の海を泳ぐさまを見せつけられる

VRを通じて見た時、この演出は圧巻というほか無い。立体感を持ったパーティクルの海から色とりどりのオブジェクトが生まれ、それがこちらの攻撃に合わせてカラフルに弾け、透き通るような効果音がきらめく。祝祭のようなBGMと雰囲気に気分はどんどん高揚し、また粒子の波にひかれて次のステージへと飛翔するのである。

TPSというかシューティングとしてはあまりにゲーム内容が透明すぎるのは確かだが、それはこの体験の前にはささいなことにすぎない。R1で前進・R2で後退という特徴的すぎる操作設定や、妙に視界外から攻撃したがる敵ルーチンが妙に小賢しいが、そんなことはどうでもいいとまで思わせる空間がここにはある。VRという表現手段の現時点での最高到達点の一つであり、『Rez』はついにプレイヤーを包み込む世界を手に入れたのである。

惜しむらくは、AreaXには本当にAreaひとつぶんのボリュームしか無いことだ。周回させる要素にも乏しく、すぐに終わってしまう。何度も飛び込みたくなる世界ではあるが、やはりもう少し変化がほしいと感じてしまう。

rez

 

VRでなければならない

VR対応およびAreaX以外の追加要素は極めて控えめである。無駄に周回させる隠し要素は初版と変わることなく、とくに改善や緩和が行われているわけではない。スコアアタックの結果もトップスコアが一つ保存されるのみというシンプルさでオンラインリーダーボードのような要素もない。AreaXも非VRの環境では「遊べなくもない」といったレベルの作りとなっており、もとより淡白なゲームプレイが、より一層味気なく感じてしまうだろう。良かれ悪しかれ、本作はVRが前提のゲームである。初代『Rez』は非VRのゲームだったのだが、『Rez Infinite』でVR対応した結果、すでにその過去には戻れなくなってしまったのである。

『Rez Infinite』が、今後PSVRの、ひいてはVRというジャンルの定番タイトルであり続けることは間違いないだろう。SDからHDへ、HDからVRへと、姿は変えずに進化を重ねた『Rez』というタイトルの、現時点での安住の地がここだ。一度はその世界に飛び込んでみる価値があると断言する。

光と音、鼓動の奔流が形作る新たな『Rez』の空間が、プレイヤーを待っている
光と音、鼓動の奔流が形作る新たな『Rez』の空間が、プレイヤーを待っている

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