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日本を舞台にしたゲームは数あれど、『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』ほどハードコアなゲームはそうそうないのではないか。『Shadow Tactics』は江戸時代の日本を舞台にしたPC向けステルス&タクティクスゲーム。プレイヤーは忍者や侍、さらには芸者など5人のキャラクターを操作し、要人を殺害していく。ステージ内には常に敵の監視の目が張り巡らされており、茂みの中や屋根の上といった地の利を活用しながら戦術を練り、数々の障害をくぐり抜ける必要がある。敵に見つかるとあっさりゲームオーバーになってしまう硬派な難易度と、攻略手段の自由度の高さが好評を博し、スマッシュヒットを記録した。ドイツのデベロッパーが江戸時代の日本を描いたということで、国内でも一部で話題になっていた。

今回、『Shadow Tactics』の開発を手がけたMimimi ProductionsのMoritz Wagner氏にお話をうかがった。ドイツ・ミュンヘンに拠点を構えるスタジオが、なぜ江戸時代を題材としたゲームを作ろうと思ったのか。難しさに対するこだわり、開発においてどのような点で苦労したか、さまざまな疑問に答えてもらった。

 
――自己紹介と、Mimimiについて教えてもらえますか。

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Moritz Wagner氏
Moritz Wagner氏

Moritz Wagner氏(以下、Wagner氏):
Mimimi Productions(以下、Mimimi)所属のMoritz Wagnerです。29歳でリードデザイナーをやっています。Mimimiは2011年に6人の学生によって設立されたスタジオで、僕も創立時のメンバーのひとりです。僕らはミュンヘンの大学でゲームデザインについて学び、学生時代からゲーム開発に携わってきました。僕らの作品である『The Last Tinker: City of Colors』はそのひとつですね。

現在では16人のスタッフが在籍していて、これらの人々に加えてフリーランスの方々と一緒に『Shadow Tactics』は作られました。なので、チームは約20人ほどですね。関わったスタッフのほとんどがミュンヘン在住です。

 
――学生のチームでゲーム会社を立ち上げるのは、困難ではなかったのでしょうか。政府からの援助はありましたか。

Wagner氏:
バイエルン州にあるFFF Bayernというファンディング機関が、助けてくれました。彼らは『The Last Tinker: City of Colors』を代表にさまざまなプロトタイプ版を作る予算をくれました。彼らはゲーム以外にも映画についても援助していましたが、映画の援助の方が圧倒的に優遇されていましたね。将来的にはそういった予算は変わるようです。他の欧州の国の援助のシステムはわかりませんが、少なくともドイツではこのような感じです。

 
――『Shadow Tactics』のパブリッシャーであるDaedalic Entertainment(以下、Daedalic)との出会いについて教えてください。

Mimimi Productionsはミュンヘンに拠点を構えている。
Mimimi Productionsはミュンヘンに拠点を構えている。

Wagner氏:
彼らと出会ったのは僕らのずっと前のプロジェクトである『daWindci』の時です。そのゲームを作ったことで、僕らはドイツで「開発新人賞」をもらったんです。Daedalicはもともとたくさんの賞をもらう会社で、受賞イベントの時にMimimiの設立者が初めて彼らと出会い、話し込みました。それから設立者はDaedalicによく訪れて連絡をとっていました。『The Last Tinker: City of Colors』の時から僕らのことを好んでくれていたみたいです。ゲーム開発が終わってから次のプロジェクトを始めるチャンスがあり、急いで『Shadow Tactics』のアイディアをまとめて見せると、彼らはとても気に入って、契約するに至りました。

 
――その『Shadow Tactics』が昨年リリースされましたね、おめでとうございます。

Wagner氏:
ありがとうございます!長い間取り組んでいたものがリリースされて、人々の反応が見られるのは気持ちいいですね。

 
――ユーザーからの評価だけでなく、売り上げもかなりよいように思えます。ここまでの結果は予想できましたか?

Wagner氏:
もちろん、こうなることを望んではいました。しかし、予測できるほどの勇気はなかったですね。『Shadow Tactics』のようなゲームは長くリリースされていませんでしたので、マーケットにこういったジャンルのゲームのファンがいることを祈ってゲームを発売しました。若いプレイヤーを惹きつけることができれば、少なくとも大きな失敗になるとは思いませんでしたね。

 
――確かに、『Shadow Tactics』のようなゲームがどれほどの売り上げを記録できるか、見通しをつけるのは困難ですよね。しかし、最終的に多くのユーザーに受け入れられました。“隠れたゲームオブザイヤー”として『Shadow Tactics』を褒めるユーザーも少なくありません。

Wagner氏:
こういう結果になって、本当に気分がいいですよ。開発している最中は、ゲームのいまいちな部分やよい部分を自分たちで見つけるのはとても難しいんです。この気持ち、当事者にならないとわからないかなと思います。レビューが出たり人々の意見を見るまで、怖い気持ちがありました。

次第に、人々がとても良い反応を見せてくれて、ゲームを愛してくれていることに気付きました。その時の感覚は生きてきた中でも、最高のものでした。ゲームオブザイヤーと呼んでもらえるのも、本当にありがたくて、多くのゲームが発売されているなかで、とくにステルスゲームがたくさん出ているなかで、そういう評価をしてもらえるのが嬉しいです。

 
――ゲームデザインはかなり揺るぎないものになっている野心的な作品なので、人々にどう受け入れられるかという点でナーバスになっていたというのは、少し意外です。

Wagner氏:
自分たちで作っているものを、冷静に見るのはとても難しいんです。勿論、プレイテストをしている時は楽しいと感じていました。ほかにも多くの人々がゲームを遊び、好きだと言ってくれました。でもそういう姿を見る中で「10時間以上遊んでも同じように楽しいと感じられるのだろうか?」という疑問も生まれ始めていたんです。ゲームの後半はとくに、繰り返しが多いですよね。「ユーザーは僕らのペースについてこられるんだろうか?」とも思いましたね。とくに僕らは小さい会社なので、プレイテストも小規模でしたし、僕らはこうしたジャンルのゲームを今まで作ってきませんでした。でも、最終的にはすべてがうまくいきました。それが一番大事です。

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――ゲームのペースや没入感について配慮されていたんですね。そういう懸念は最終的にどのように解消しましたか。何か手を加えたか、あるいは、ユーザーを信じることにしたのでしょうか。

Wagner氏:
手を加えました。具体的には、ミッション中のキャラクターを自由に替えることができるようにしたのがその代表です。またキャラクターの組み合わせによって、ゲーム体験は大きく変化します。たとえば、TakumaとYukiを使えば死体を運びにくくなりますよね。この変化が自分のやり方をひらめかせるのです。Hayatoを使って難なくクリアしてきても、同じやり方がすぐに通用しなくなる。こうした困難が、ゲームの熱中度を高めているんだと思います。それぞれ異なる場所にキャラクターを配置するやり方もありますよね。固まらせて突撃するか、別行動によって進めていくか、遊び方はさまざまですし、いろんな攻略の方法があります。

ほかに途中で手を加えたといえば、雪や夜といった概念を導入したことですね。僕らも、ユーザーの関心を引ける要素を用意しなければいけないことはわかっていました。こうした結果のおかげで、ゲームプレイにも変化が加えられ、プレイヤーは戦略を見直すようになりました。

 
――自由度が高い反面、バランス調整にも苦労されたのではないでしょうか。ゲームの基礎ができてから、どの程度の時間をバランス調整に割きましたか。

Wagner氏:
『Shadow Tactics』のよかったところは、キャラクターの成長がそれほどないところです。なので、RPGのようなキャラクターの成長を踏まえたダメージ管理や、成長にあわせた強い敵の配置などは必要ありませんでした。序盤でも終盤でも同じ敵ならば、挙動は同じです。最初に見かける敵は、石を投げれば反応する特性は変わりませんよね。この基本的な性質を組み合わせることで、バランスを設定していきました。

バランス面で一番時間をかけたのは、キャラクターの動くスピードや敵の視野の広さ、スキルの攻撃範囲ですね。こうした調整は開発の初期に終わらせて、おかしいと思うたびに細かく調整してきました。とくに大きな変化だったのは、キャラクターの移動スピードの調整ですね。キャラクターの移動が速すぎることで、すべてがスピーディになりすぎてましたし、戦略性が損なわれているように感じました。難易度も簡単すぎるようにも思いました。一度移動速度を遅くしてみたことで、アニメーターに負担はかけましたが、最終的にうまくいったと思います。大きく手を加えたのは、主にそういった点ですね。

 
――移動速度がどれほどゲームのバランスに関わっているか、『Shadow Tactics』を遊んだユーザーとしてよくわかります。しかし、あえて難しいバランスにしようという決断は、決して簡単ではなかったと思うのですが、躊躇はありませんでしたか。

Wagner氏:
ゲームを作り始めた時から、私たちは「難しいけど、フェアなゲームを作る」という目標をかかげていました。『Commandos』 や『Desperados』といったゲームのような、大昔に作られたとても難しいゲームを目指していました。プレイヤーにそういったゲームの感覚を感じてもらいたかったんです。なので、『Shadow Tactics』が難しいというのは意図したものです。

幸運だったのは、『DARK SOULS』シリーズが、難しいけどフェアなゲームを楽しめるということを証明してくれたことです。彼らのおかげで、難しいゲームを作り、成功することに自信が持てたんです。数々の困難を打破してステージをクリアする感覚は、とても重要な要素なんです。まさに、『DARK SOULS』で敵を倒したような感覚でしょう?

 
――難しいゲームを作ろうというコンセプトは一貫していたんですね。そういったコンセプトやイメージはスタジオ内で共有できていましたか。難しいゲームを作ることは、とても勇気のいることのように思います。

Wagner氏:
僕らが前に手がけたゲームは、『The Last Tinker: City of Colors』というゲームでした。このゲームは確かに子ども向けだったんですが、それにしても簡単すぎました。そういった経緯もあって、多くのスタッフがチャレンジしがいのあるハードなゲームを作りたがっていたんです。

もちろん、すべてのユーザーが難しいゲームが好きなわけではないこともわかっています。それはスタジオのメンバーだって同じです。だからこそ、そういったメンバーはよいテスターになりました。ゲームをプレイしなれてないスタッフに『Shadow Tactics』を遊んでもらうと、必ず「難しい」と言いましたね。でも難しいと言いながら、彼らはゲームにとても熱中しているんですよ。時間はかかりますが、ほとんどのプレイヤーがステージをクリアできることもわかりました。そういった結果を見て、普段難しいゲームをプレイしないユーザーが楽しめることがわかりました。だからこそ僕らは難しいゲームのままにしようと決断したんです。

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――身近なところに、よいテスターがいたからこそ決断できたんですね。ちなみに今現在ゲームの途中で詰まってしまっているユーザーにアドバイスをいただけますか。

Wagner氏:
YouTubeやTwitchで人のやり方を見るのは、新しい戦略を見つけるには有効な手段です。一般的なアドバイスとしては、とにかくいろんなやり方を探してみてください。Shadow Modeはとても効果的ですし、スキルの組み合わせで意外な突破ができることもあります。どうしてもうまくいかないという時は、たいていひとつのやり方にとらわれている時ですね。違う敵を倒そうとしたり、キャラクターの接近方法を変えてみるといいですよ。

 
――ひとつの突破方法に執着すると失敗を重ねることになりますし、嫌になっちゃいますよね。

Wagner氏:
そうですね(笑)もちろん、20回トライするのが好きならば挑戦するのもいいと思います。でも戦略を変えてしまうほうが手っ取り早いですね。

 
――プライドが許せば、Easyモードもひとつの選択肢ですか。

Wagner氏:
Easyにするのはとてもよい解決法だと思いますよ!『Shadow Tactics』はEasyにしたって難しいゲームなんです。恥ずかしいなんて思わなくてもいいんですよ。敵の配置は一緒ですが、敵の反応は遅くなりますし、視界も狭まります。ゲームデザイン自体はハードコアモードとなんら変わりません。うまくいかなければ難易度を変えてしまってもいいんです。そのほうが新しい戦略を試しやすいですしね。

 
――プレイヤーによって遊び方が違うのも『Shadow Tactics』の魅力ですよね。しかし、そういった点でゲームの評価もよい一方で、40ドルという値段に手が出ないというユーザーもいます。価格設定の理由を教えていただけますか。

Wagner氏:
悲しいですが、よい回答が見つからないというのが本音です。というのは、僕は価格設定の議論に関与していないからです。そういった部分については、CEOであるJohannes Roth氏とパブリッシャーのDaedalicの意向によるものですから。僕自身は、最近ゲーム業界でよくゲームの価値についての話を見ると悲しくなります。『Shadow Tactics』は2年間以上にわたって開発された、25時間以上遊べるゲームです。3度昼食に行くことほど価値がないと思われてしまうのは、少し辛いですね。しかし、マーケットや僕らも含めて、みんながこの問題について取り組んでいかなければいけないとは感じています。

 

つづく: 日本についての研究は本当に苦労した。何度も何度も日本について描こうとしても……

 

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