「Steamは10年後も生き残るプラットフォーム」アクティブゲーミングメディア代表イバイ・アメストイが抱くSteamへの期待とは

弊社アクティブゲーミングメディア(以下、AGM)は、来期で創立10周年を迎える。また、Steamに参入してから今年で5年を迎える。弊誌も含めて、会社全体としてSteamを主戦場としているといっていいだろう。今回は弊社代表取締役のイバイ・アメストイにあらためてSteamに対する思いや、会社として今後どのようにSteamに関わっていくのかを、語ってもらった。

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――本日はよろしくお願いします。あらためて会社の歴史を短く紹介してもらえますか。

イバイ・アメストイ(以下、イバイ):
私自身はマーベラス・エンターテイメントでローカライズを担当していて、独立しました。起業後はローカライズのみだったんですが、5年前からパブリッシングを手がけるようになり、Steam展開を始めました。今も下請けとパブリッシングどちらでもSteamに関わっています。

――Steam展開を決めたきっかけはなんでしたか。

イバイ:
私は、個人的にSteamというプラットフォームに惚れ込んでいます。昔から、ほしいゲームがすぐに見つかるというイメージがあったんですよね。最近ではレコメンドやキュレーション機能が充実してきていて、ほかのプラットフォームのストアと比較しても、ゲームを探しやすい環境にあると思います。そしてユーザー時代から感じていましたが、基本的にレビューが嘘をつかないですよね。たとえば、私がこのゲームのレビューがいいなと思い買って遊んでみて、外れたことがないんです。ユーザーとしてそういう感想を持っていたので、ゲーム開発にチャレンジしようと思った時に、PCに行こうと決めていました。当初はコンテンツを預けてくれる会社がすごく少なく、なおかつ日本ではPCゲームはニッチなものなので、なかなか魅力を感じてくれる会社も少なかったんですが、幸いにもそのイメージは変わりました。最近は海外にむけてPC用のコンテンツを配信する会社は出つつあるのかなという感覚がありますね。

――5年前の当時と比べて、Steam市場の変化を感じますか。

イバイ:
感じますね。コンテンツはものすごく増えました。同時に、以前に比べて露出は難しくなってきているとも感じます。ただ、コンシューマーとは大きく違うと感じるところもあります。私達のような大きくない会社も入っていける余地があるんです。そういう意味では、コンシューマーは、箱でいっぱいになっている部屋のようなイメージです。すでに大きな箱で埋め尽くされていて、ほかの箱を入れることができない。PCの場合は、箱ではなくて風船ですね。ひとつの風船を入れてもほかの風船が出てしまうけれど、かさばらないのでたくさんの風船が入る。だから私達のような企業も入っていけるんです。一見PCゲーム市場は難しいなというイメージを持たれていると思うんですが、しっかりとやれば、ユーザーが見つけてくれるというのがSteamの魅力だと感じます。

――今、日本企業がSteamに進出するケースが増えていますが、そうした部分の変化も肌に感じますか。

イバイ:
それはものすごく感じます。もともと日本のコンテンツが好きなファンは海外にはすごく多いんですよね。かつてはニッチなものが中心に売れていたものの、今は日本産インディーも含めて、幅広いファン層にリーチしつつあるのかなと。これは弊社のタイトルに限らずです。数年前なら難しかっただろうけど、今だからうまくやっているなと思うものはありますね。

――日本企業にとってのマーケットも広がってきていると。

イバイ:
そうです。広がってもいますし、Steamのユーザーベースの数字もさらに伸びていくと思います。日本のコンテンツに興味を持つユーザーも増えていくのではないかと考えていますね。

――タイトル数が増える現状で、AGMはどういう提案をすることができますか。

イバイ:
さきほども言ったように、ストアとしてはものすごくきれいに成り立っていると思っていて、コンテンツ提供者としては自分たちのゲームを見つけてくれる場所だと思います。そういう場所で私達は、ストアで見つけてもらうためにいくつかの手を打つことができます。そういった施策は弊社のノウハウとして蓄積できたと思います。これは宣伝トークのつもりではないですが、私達はゲームをリリースするだけでなくその後見つけてもらうために何をしたらいいのかというノウハウをお客様に提供することはできますね。

 

――最近はSteam Directの影響もあって、個人開発者の方がゲームをリリースすることも多くなりましたよね。ただ「出す」と「売る」は似て非なるものであるような気もします。

イバイ:
リリースに関しては、個人と法人のコンテンツ提供者で話は違ってくると思いますが、大きい企業だと自社で勝負しても勝てるプラットフォームだと思います。ただ、そういったところでファーストパーティーとのリレーションだとか、海外メディアとのリレーションだとかで考えると、弊社とは言わずとも、そういった点に強みがある会社に任せて一本目に挑戦してみてもいいのかなと思います。個人でも手軽にリリースできるようになったのは非常に素晴らしいことです。ただし、個人で、Steamストアで勝負するのはかなり厳しいと思います。個人にしても少人数デベロッパーにしても、パブリッシャーは必須の時代なのかなと。

――確かにインディードリームとしてあげられるタイトルは、個人開発者が作っていますが、その背後にはなんらかのパブリッシャーがいることが多いように感じます。

イバイ:
Devolver Digitalはそうした点で有意義にやっていますね。弊社も、もちろんそうしたことをしているつもりですが。最近では我々のような大きくないパブリッシャーと、個人開発者の関係性はしっかりしてきた気がしますね。一昔前はインディー開発者と仕事するのは大変で、納品されるかどうかわからないとか、途中で気が変わる、開発を諦めるなどざらにありました。ここ数年ではそうしたケースはほとんどなくなり、スケジュールなどを意識してくれているゲーム開発するデベロッパーが多くなったという印象ですね。

――パブリッシャー側もインディー開発者との協力体制が整ってきた、というのもありそうですよね。

イバイ:
我々にもパブリッシングにはプロデューサーが数名いまして、開発者とも直接対話してスケジュールを組んで開発しています。ただ、個人でゲームを作るというのは、ツールなどが充実してきたとはいえ、非常に大変なことではあります。そのなかで、恥ずかしくない形でリリースまで持って行けているのかなと思います。

 

――Steamというプラットフォームに惚れ込まれているようですが、不満のようなものはありますか。

イバイ:
ほとんどないんですが、唯一あるとするならば、Steamと競り合えるライバルが存在せず、パワーを持ちすぎて、パブリッシャー・デベロッパーへの条件が厳しくなっていくのではないかと懸念しています。ただ、現時点ではそういった動きはしておらず、健全なプラットフォームを提供してくれると感じていますね。

 

――企業がSteam展開で得られるメリットはなんだと思いますか。

イバイ:
フィードバックですね。ゲームを発売すると、よいものわるいもの含めたフィードバックが一斉に来て、それを消化して次の開発へ挑むというのがゲームクリエイターのサイクルだと思うんです。Steamはフォーラムやレビューなど、コミュニティが充実しているので、そうしたフィードバックを直接、潤沢に受けることができます。開発者には、海外のユーザーのフィードバックを受けてほしいと思っています。そうしたほうが日本のゲーム業界にとってもいいことなのかなと。

もちろん、今はNintendo SwitchもPlayStation 4でも同じようなことをできますが、Steamなら直接的に称賛もパンチも貰うことができます。そういった声から逃げずに受け止めることが重要だと思います。ゲームを新しく開発するときもうまくいったらローカライズするのではなく、最初からPCへの移植を視野に入れていくことは有意義なのではないかなとも思いますね。今は移植費用が高いという時代ではないので、Steamでも初月ですべてペイするというのは難しいものの、出して2年で利益を出すのは十分可能です。2年と言わず1年や2か月でペイするのも現実的な話になってきました。

たとえば、最近うちではSteamでリリースしたタイトルが10万本を超えるということがたびたびあるんですよね。こうしたセールスが向上した理由としては、主にキュレーション機能の導入が大きかったですね。ユーザーが我々の出すゲームをより頻繁に見つけてもらえるようになった。こうした影響もあり、細く長く売れる傾向が出てきていますし、それは健全かなと思います。AAAタイトルを除けば、コンシューマーゲームでも10万本はひとつの目標にする数字だと思います。Steamではいいものを出せば到達できるプラットフォームだと思います。だからこそ、積極的にSteam展開していくべきだと思います。

――パブリッシングと移植の両方をカバーできると。

イバイ:
パブリッシングもしっかり専念してやっていますが、ブラウザでもコンシューマー向けでも、価値のあるコンテンツだと思ったものは、Steam向けに移植して、Steamタイトルとして発売するというのは今までやってきましたし、これからもやっていくつもりです。SteamについてはAからZまでできると思っています。

――Steamの将来については、どうなると思いますか。

イバイ:
Steamは今後10年間にわたって勝つプラットフォームだと思っています。それはほかのプラットフォームがなくなるという意味ではなくて、SteamはAmazonやNetflixのようなサービスの最大手のような存在であり続けるだろうという意味です。Steamユーザーの特徴は、ほぼ全員がコアゲーマーであることなんです。カジュアルゲーマーはかなり少ない。もちろん、カジュアルゲームというジャンルも存在しますが、コアのなかのカジュアルなんです。今はスマートフォンにワンタッチでアプリがインストールできる時代に、わざわざPCにあんな面倒くさいものをインストールしているというのは、熱心な証ですよね。そういう人からフィードバックをもらってゲーム開発することは、進化につながります。業界のコンテンツ産業が先のレベルに進むためには、どうしても必要なものであると私は考えていますね。

――ありがとうございました。

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