『PUBG』生みの親PlayerUnknown本人をインタビュー、世界をドン勝の虜にしたゲーム開発の経緯

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早期アクセスでの発売からわずか半年。いまやSteamで現在もっともプレイヤー数が多いゲームにまで成長した『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(通称、PUBG)は、どのようにして生まれたのか。100人の壮絶なバトル・ロワイアルを見事勝ち抜いた者だけに与えられる“ドン勝”という名のオルガズムに世界中のユーザーが魅了され、来たる家庭用ゲーム機でのリリースを待たずして1200万本の販売数を記録した。先日にはDMM Gamesとの提携も発表され、日本国内に向けても本格的なユーザー層の拡大を図っている。

そんな世界的な話題作を手がけるBlueholeのクリエイティブディレクターであり、タイトルにもその名を冠する生みの親“PlayerUnknown”ことBrendan Greene氏と、開発当初からプロジェクトを総括するエグゼクティブ・プロデューサーのChang-han Kim氏をインタビューした。Greene氏はもともと、アマチュア時代からミリタリーシミュレーターゲーム『ARMA』シリーズのMod製作者として名を馳せた人物で、その後も『H1Z1: King of Kill』の制作に携わるなど、サバイバルジャンルのゲームクリエイターとして活躍してきた。同氏が韓国のBlueholeと出会った経緯や、同社が今後DMMとどのような関係でパートナーシップを築いていくのかについて訊いた。

 

映画的な体験の中で与えられる完全な自由

――どのような経緯でGreen氏はBlueholeと出会い、『PUBG』を開発するにいたったのか教えてください。

Brendan Greene氏: 『ARMA』のModに始まり、『H1Z1』ではバトルロイヤルモードを企画したように、もともとは単純に自分が遊びたいと思うゲームを作ろうとしていただけでした。そんな中、ある日のこと私宛に一通のメッセージが届きました。送り主は韓国のゲーム会社Blueholeで、お互いに描いているビジョンが共通しているから一緒に新しい作品を開発しないかという誘いでした。さっそく詳しい話を聞いてみたところ、まさに私が思い描いていたとおりのゲームが作れそうだと確信しました。とてもいい縁に恵まれたと感じています。

――早期アクセスの段階で販売本数1200万本突破に加えて、これまでSteamでもっとも遊ばれているゲームとして長らく王座に君臨していたValveの自社タイトル「Dota 2」「Counter-Strike: Global Offensive」を抜いて、ぶっちぎりのトップに躍り出たお気持ちは?

Brendan Greene氏: どうしてこんなことになったんでしょうね。ゲームを作った私たちも、まさかここまでヒットするなんてまったくの想定外です。そもそも競合作品として意識していたのは、自分自身も携わった同ジャンルともいえる『H1Z1』なんです。同作を上回るだけで収まらず、『CS:GO』と『Dota2』よりも人気が出るなんて信じられませんでした。

Chang-han Kim氏: もちろん開発を始めた頃から可能性は見出してはいました。しかし、当初のビジョンとしては、新しいジャンルを確立できれば御の字くらいの期待で、世界中のユーザーがここまで夢中になってくれるとは思っていませんでした。誰よりも私たちが一番驚いています。

――ユーザーのアクティブ率という観点で、具体的にどれくらい人々は夢中なんでしょうか。

“PlayerUnknown”ことBrendan Greene氏

Brendan Greene氏: アクティブユーザーは全体の76パーセントくらい。その内25パーセントのユーザーが100時間以上プレイしているというデータが出ていますね。ぶったまげでしょ。

――ちなみに特にずば抜けて人気が高い地域はあるのでしょうか。

Chang-han Kim氏: 群を抜いて盛況という特定地域はありません。単純な数字だけだと、もちろん人口が多い中国がトップですね。ほかにも人口比で人気なのが、北米と欧州、オーストラリアでしょうか。続いて東ヨーロッパや南米、東南アジアで徐々に増えていっているのが現状です。注目すべきなのは、世界中の多くの国でほとんど同程度の比率をキープしている点。それほどグローバルに受け入れられたということですから。

――ここまで万人受けしたのはどうしてだと思いますか?

Brendan Greene氏: まず考えられるのは、ユーザーに与えられた自由度の高さでしょうね。ルールがいたってシンプルで、とにかく何をしてでも生き残ればいいだけですから。とっつきやすいことは大事だと思います。その中で逃げ回るも戦うもプレイヤーの自由。ゲームをどう楽しむかは完全にユーザーに委ねられています。それが成功できた最大の要因ではないでしょうか。

――日本の小説・映画「バトル・ロワイアル」に触発された作品とお聞きしています。それぞれの登場人物によって行動パターンも心理状態も異なる。まさにそんな体験をユーザーに提供したかったということですよね。

Brendan Greene氏: そうですね。初めて「バトル・ロワイアル」に触れた時から、原作者である高見さんをリスペクトしています。そういう意味で発祥の地ともいえる日本で多くのユーザーに気に入ってもらえたことは大きな喜びです。映画的な体験の中でプレイヤーに完全な自由を与えるというのは、今まで私がゲームを作ってきたモチベーションでもあります。

 

クロスプラットフォームを視野にXbox One版を開発中

――正式ローンチに向けて特に注力していく予定のコンテンツを教えてください。

プロジェクトの総括責任者Chang-han Kim氏

Chang-han Kim氏: すでに公開映像の中でも披露していますが、正式サービスを開始する際には砂漠を舞台にした新マップをはじめ、壁や障害物を登るアクション、新たな種類の車両など、様々なコンテンツの拡充を予定しています。くわえて、現在はかねてより予定していたXbox One向けの開発にフォーカスしているところです。

――クロスプラットフォームの予定はありますか?

Brendan Greene氏: もちろん、Windows版とXbox One版のプレイヤーが同じ舞台で一緒に遊べるような環境を構築したいと考えています。しかし、マウスとキーボードを使うPCユーザーと、ゲームパッドを使うコンソールユーザーの間には操作性にハンデが生じるので、フェアな対戦が実現できるように最善の方法を模索している最中です。

――ちなみに噂が絶えないPlayStation 4向けのリリース予定は?

Brendan Greene氏: 現段階では確定していません。開発リソースも限られているので、しばらくは正式サービスとXbox One版だけに注力していきます。もし将来的に対応プラットフォームを増やすにしても、まずは現状のローンチプランが完了してから議論することになるでしょう。

――人気対戦ゲームにつきものといえるチーター対策については?

Brendan Greene氏: 現状で一日1000人程度の不正ユーザーをBANしています。今後もいかに競技性を維持しつつ健全なコミュニティを守るかが課題になるでしょう。具体的な方法については目下検討中です。

――DMM Gamesとパートナーシップを結んだことについてうかがいます。『PUBG』は最初から日本語に対応していますが、具体的にどういう関係を築いていくのでしょうか。

DMM担当者: 国内向けのパブリッシャーというよりは、むしろDMMのプラットフォームを使った広告塔といった立ち位置ですね。『PUBG』が日本でも人気といっても、PCゲームやSteamという存在は多くのカジュアルゲーマーにとっては決して身近なものではありません。今まで『艦これ』のようなブラウザゲームしか遊んだことがないようなユーザーにも、本作の魅力を届けられるようにお手伝いするのが弊社の役割だと感じています。

ドン勝の正体は必ずしもトンカツとは限らない

――最後に、『PUBG』で1位になった際、英語版では「Winner Winner Chicken Dinner」、日本語版では「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」と表示されますが、何故チキンなのでしょうか? そして何故トンカツ(韓国語では日本風のとんかつはドンカツと呼ばれる)なのでしょうか。それほどまでに結構なごちそうなのでしょうか。

Brendan Greene氏: ハハハ。別にチキンが特別なごちそうというわけではありません。このフレーズは古くからカジノのブラックジャックで使われている常套句なんです。昔は最低掛け金がちょうどレストランで出されていたチキンディナーの相場と同じ額でした。そこからディーラーが勝者に送る賞賛の言葉として定着するようになったと言われています。(ちなみに同じくGreene氏が手がけた『ARMA』のバトルロイヤルModでも、このお馴染みのフレーズが使われている)

Chang-han Kim氏: 韓国でもトンカツが特別なごちそうというわけではありません。単に翻訳を担当したスタッフの思いつきで、「勝つ」という日本語と「カツ」という食べ物をかけたシャレを仕込みたかったというだけです。そういうわけで、必ずしもドン勝がトンカツというわけでもないんですよ。ドン勝の正体はご想像にお任せします。

――本日はどうもありがとうございました。夕食はチキンとトンカツにします。

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