先月4月21日、京都にてUNREAL FEST WEST 2018が開催された。その名のとおり、Epic Gamesが主催するUnreal Engineをテーマとしたイベントだ。数々の講演がおこなわれ盛り上がりを見せたが、目玉のひとつは、Epic Gamesの社長Tim Sweeney氏が来日し講演したこと。

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Epic Gamesは古くは『Unreal』、そして『Gears of War』を手がけ、最近では『フォートナイト』をヒットさせている、最前線で戦い続ける老舗のひとつだ。また、Tim氏はゲームエンジンUnreal Engine の仕掛け人としても知られる。今回はゲームエンジンメーカー社長・そして老舗ゲームメーカー社長というふたつ側面で、Tim氏に濃厚な話をしていただいた。

前編は、Epic Games Japanの河崎氏の通訳を介しつつも、時に介さずTim氏にUnreal Engineの近況や昨今のゲーム業界の現状について語ってもらう。

――本日はよろしくお願いします。2017年度は、Unreal Engine 4にとってどのような年でしたか。国内メーカーは大手会社がUE4を使用し、海外ではインディースタジオや中規模メーカーがUE4を使用している印象を受けました。

Tim Sweeney氏(以下、Tim氏):
UE4は日本で大きな成長を見せました。私たちのビジネスにとって大きな進歩だったと思います。欧米では、EAやActivision、Ubisoftといった大きな会社は内製の技術を使う傾向にあるんです。しかし、長期的にそうしたやり方を続けていくのは難しいと思っています。多くのタイトルを抱えているので、それをすべて自社エンジンでできるわけではないんです。実際に、EAは現在『スターウォーズ』作品などUE4のプロジェクトを抱えていますよ。内製とUnreal Engineの両方を使うというのが、将来的にあり得る図であるとも思います。欧米全体では、『ARK』や『ロケットリーグ』などからもわかるように、AAタイトルもしくは小さなタイトルにとっては魅力的な市場があることを見事に証明しました。彼らの小さなチームは、多くの予算を費やし作られるAAAタイトルよりも、ずっと多くの利益を生み出せます。

一方で、もうひとつ興味深いのは韓国のモバイル市場の推移です。2年前は韓国のモバイル市場はカジュアルゲームが席巻していたことに対し、現在はUE4を含めたハイエンドゲームにシフトしてきています。それらは、iOS/Android向けながらコンソールに匹敵するクオリティです。北米や欧州、日本や中国でも同じ傾向がみられ、モバイルゲームのビジネスが目まぐるしく変化していると感じますね。

個人的にこの一年で一番驚いたことは、最近ですが『フォートナイト』が成長し、ほとんどのプラットフォームにてナンバーワンになったことです。PS4、Xbox One、PC、モバイル。これらで首位を飾りました。マルチプラットフォームゲームでは、ほぼ初めてなんじゃないですかね。『ARK』もiOSとAndroid、そしてNintendo Switchで出ますし、『ロケットリーグ』もNintendo Switchで出ましたし、マルチプラットフォームで多くのゲームが出ています。『PUBG』もまたPCゲームですが、iOSのチャートで上位になっていますよね。これらはすべてUE4です。この1年でモバイルゲームはハイエンドになりゲーマー向けになり、カジュアルメインだった数年とは変わりつつある。そしてマルチプラットフォームがとても重要になってきました。Unreal Engine 4がそれらを支えています。

左が弊誌でもお馴染みのEpic Games Japan河崎高之氏。右がEpic GamesのTime Sweeney氏。非常に仲睦まじげで、ジョークをまじえてインタビューが進められた

――Epic Gamesは数年前からモバイル向け展開やマルチプラットフォーム展開に力を入れていますよね。そしてマルチプラットフォーム化やモバイルの波は、時代の流れなのか。もしくはEpic Games自体がそういう流れを引き寄せたと思いますか。

Tim氏:
市場の流れを見て、こうなることは予期していました。なので、こうした流れの先頭にいれるように、トレンドの最先端にいられるようにしていました。ただ、私達がいなくてもこうはなっていたでしょうね。モバイル市場は変化していくものなのです。カジュアルゲーマーだけで市場が長期的に支えるのは難しい、それは歴史が証明しています。アーケードゲームを思い出してください。1980年代、老若男女はみんなアーケードを遊んでいましたよね。それが年々減っていき、最終的にゲーマーだけが残りました。コンソール市場も基本的にゲーマーと共に生き抜いてきました。

ゲームの進化はとても面白く、30億もの人々がスマートフォンの普及によってゲーマーになりました。みんながスマートフォンを必要としているということは、みんながゲームプラットフォームを持っているということです。すごいですよね。もちろん、始めのうちはカジュアルゲームを遊ぶ人々がいましたが、その多くは退屈になってやめてしまいました。残ったのはゲーマーだけです。ですので、ハイエンドなゲームづくりへとシフトしていくというのは、とても予想しやすいことでした。マルチプラットフォーム化の波についても、予想しやすいことでしたね。

Facebookは、iOSの人でもAndroidの人でもPCの人でも平等にコミュニケーションできるから流行りました。想像してみてください、SNSがAndroidとiOSとPCでそれぞれ別の場所が用意されるとすれば、まったく機能しませんよね。ゲームも同じです。だから『フォートナイト』が成功したんだと思います。どのゲームプラットフォームも、こうした横のつながりの強化は避けられないと感じます。それほどつながりというのはユーザーにとって価値のあるものなので。ひとつ数字があって、『フォートナイト』では現実社会の友人と一緒に遊んでいるユーザーのプレイ時間は、ひとりで遊んでいるユーザーの3倍なんです。3倍ですよ!大きいですよね。メトカーフの法則(Metcalfe’s law)をご存知でしょうか。ソーシャルネットワークやゲームプラットフォームの価値を図る経済原則です。ゲーマーにとってのプラットフォームの価値は、交流できるリアルフレンドの数と比例するのです。

――クロスプラットフォームの文脈でいうと、Timさんはクロスプラットフォームを好まないプラットフォームホルダーについてはどう思われていますか。

Tim氏:
経済的に考えると、自然なことだと思いますよ。アメリカに鉄道や製油所があった古い経済の時代では、どの企業も競争相手の参入を防ごうとしていました。そうした経済原則は、かつての物理的なインフラに当てはまるものです。ですが、いくつかの企業はいまだに、競争相手を締め出して不利な立場に追いやろうという考えをもとに意思決定を行なっています。実際には、ユーザーをつなげるメトカーフの法則の方が効果は大きいのです。エンゲージメントが高まれば、全てのプラットフォームが恩恵を受けるからです。

近年もっとも価値ある企業はユーザーのつながりを重視する企業です。FacebookやAppleはそうですよね。ユーザーのつながりは、価値を生みます。TwitterやInstagramもそうですよね。TencentのWeChatもそうですよね。Tencentはゲームビジネスを好みますが、ほかのビジネスにも熱心で、WeChatは実際の友達といつでもつながれるようなツールになっています。ソニーもマイクロソフトもほかの会社も、価値あるものに興味がありますよね。そうした企業にとって、全てのユーザーがつながれるよう互いに協力し合う方が、つながりをブロックするよりも価値のあることなのです。

――近年のUE4の使われ方について教えてください。表現されるビジュアルスタイルに変化はありますか。

Tim氏:
『フォートナイト』のようなピクセルムービー風のものから、漫画のようなアート、そしてフォトリアルまで。ポストプロセスエフェクトやマテリアルシステムといったUE4の多種多様なツールにより、それぞれのデベロッパーがそれぞれのスタイルを確立できるよう手助けできます。我々としては、ゲームの外見を、開発者自身で完全にコントロールできるようになってほしいのです。

これまでのUE4表現とはやや異なる『フォートナイト』のグラフィック

――そういう意味では日本の国内メーカーのUE4の表現は、海外とは少し異なりますよね。ちなみに国内メーカーのUE4採用タイトルが増えてきた理由について、どう分析されていますか。

Tim氏:
日本はゲーム産業においては先進国です。どの会社もテクノロジーやツールを構築し、培っています。ですが日本の企業は我々が作っているような効率化を図るためのツールや、過密なゲーム開発における最適なワークフローの作成に、投資してきてこなかった印象です。Epic Gamesはアーティストの生産性を上げるために努力を費やしてきました。日本人開発者はテクノロジーで競う能力があります。しかし、彼らは効率化を達成するためのツールやインフラなどを構築しませんでした。だから、日本の会社がUE4を使うようになったのは、新しいゲームを作るために、時間とお金を節約したいからだと思います。最近では大きなチームと高い開発費が標準になってきました。だから、開発費用の削減はとても重要なんです。だから、私達は開発者には経済的に優しいツールを作っています。

――もしそうだとすれば、Timさんは、なぜ日本の会社がそうしたツールやインフラに投資されてこなかったとお考えですか。

Tim氏:
なぜそうした傾向にあるのかは分かりません。ただ、ここ数十年の間に多くの開発者と会い、彼らがどのような環境でプロジェクトを進めていたのか聞いてきました。日本でのゲーム開発の進め方をEpicのそれと比べてみましょう。日本の企業はプログラマー中心に仕事が動いています。アーティストが制作したアートワークをプログラマーに渡し、プログラマーが実装します。一方、我々のツールであれば、アーティストは自分が制作したアートワークを自らゲーム内に実装することができます。プログラマーが関与する必要はありません。アニメーションやマテリアル、その他のコンポーネントでも同じことが言えます。

私が聞いた日本の企業構造だと、プログラマーとアーティストは1日に20回ほど会って、何度もファイルのやりとりを繰り返さなくてはならないでしょう。EpicのUE4を使うアーティストであれば、多くの場合、そうしたやりとりを経ることなく一日の仕事をこなすことができます。プログラマーへの要望はまとめて出せばよいのです。

おそらくこれはアーティストが力を持っているのが大きいかなと。そこらへんは歴史的だったり、文化的な違いなのかなと思います。日本の開発者は、本当に信じられないほどよく働きます。世界レベルで才能がある人が長時間にわたって、真剣に取り組み続けます。だからツールやワークフローが高い優先度にならないんでしょうね。

――Timさんから見て日本のゲーム会社のUE4の使い方で印象的だったものはありますか。

Tim氏:
学習プロセスですね。UE4を導入してから最初の数か月は、以前使っていたエンジンと同じように使おうとするのですが、うまくいきません。そこで我々は彼らと話し合い、訓練を施します。すると開発者たちはチーム間で情報をシェアし始め、Unreal流の開発方法を学んでいきます。日本で生まれたUE4作品には、ワールドクラスのゲームが本当にたくさんありますよね。『ソウルキャリバー』『ストリートファイター』『ドラゴンボール ファイターズ』など格闘ゲームは特に目覚ましいですよね。小さなチームの『TINY METAL』なんかも素晴らしいです。確か2人で作られているんですよね。

そういう意味でも、日本のインディーゲームを今後もっと見られるのが楽しみですね。日本は、世界に受け入れられるゲームを作り続けてきた唯一のアジアの国ですよ。日本のゲームは自国の文化に制限されておらず、幅広い層にとって魅力的な作品となっています。ただ、日本のゲームデベロッパーのほとんどは大企業の大規模なチームです。なので、2人や10人といった小規模のチームが、どのようなクリエイティブなインディーゲームを開発できるのか、とても興味深いです。

――最近では、欧米のインディーチームがUE4を使っているのをよく見ます。彼らにUE4が好まれていると考える理由を教えてください。

Tim氏:
ほとんどのゲーム開発者はUnityかUnreal Engineのどちらかを選びます。Unityは使いやすく、小さなプロジェクトを効率的に進めることができます。Unreal Engine 4はハイエンドプロジェクトでリアルな映像、大きなプロジェクトに向いています。アメリカでは、コンソールやPCのゲーム制作に携わった、数多くの優秀な開発者たちが独立してインディースタジオを創設しています。

彼らはみんなハイエンドゲームを作るデベロッパーで、美しいグラフィックを描写できるツールを好みます。なので、ゲーマー向けのハイエンドに焦点を置くなら、Unreal Engineがベストなんじゃないですかね。逆にカジュアルゲームのマーケットにおいては、作りやすいUnityが市場を席巻しています。ただ繰り返すように、モバイルマーケットはハイエンドに動いている傾向があり、私はそれが好ましいと思っていますね。

――UEは、ハードコアなゲームのビジュアル描写には強みがあると。

Tim氏:
リアリスティックな表現に強いですからね。当然、グラフィックとパフォーマンスのバランスを考えても、すべてのコンソール機を含めてもベストのツールだと思っています。なので、UE4とUnityとの違いでいえば、質の高い映像をとるか、カジュアル向けのマネタイズをとるかという区別になりますね。

――リアリスティックといえば、GDCで披露されたNintendo Switch版『ARK』の映像はすごかったですね。あのレベルのグラフィッククオリティは、Nintendo Switchへの最適化が目覚ましい例外ですか。それとも、どの開発者でもあれほどのパフォーマンスは出せますか。

Tim氏:
どのチームでも最適化に尽力すればあのレベルは出せますね。Nintendo Switchには、すばらしいGPUが載っていますし、モニタも美しいです。現状でもハイエンドスマートフォンを大幅に上回る作品が出ていますしね。

――僕は『EVERSPACE』という美しいスペースシューターがSwitchで出るのを楽しみにしています。UE4がSwitchの性能をどこまで引き出せるか見るのもひとつの楽しみです(笑)。

Tim氏:
そうですか(笑)。Unreal Engine 4は移植を自動でサポートするテクノロジーも充実してきているので、たくさんのすばらしいPlayStation 4とXbox Oneのゲーム見られると思いますよ。

――ありがとうございます。それでは、GDCについてあらためて振り返らせてください。GDCでは多くのテクノロジーが発表されましたが、それらを踏まえてずばりUnreal Engine 4の目指す場所とはどこなのでしょうか。

Tim氏:
目指す場所は、ひとつにしないとだめですか?(笑)。重要視していることは、いくつかあります。完全なリアリスティック表現の達成というのがそのうちのひとつです。リアリスティックな表現の実現に向けていろいろとやってきましたが、まだまだやるべきことは多いです。演技の撮影ではない、キャラクターのAIやシミュレーションに関しては特にそうです。ほかにはレイトレーシングにも力を入れております。広く言えば、開発者たちが実現できる最高品質の描写をさらに進化させられるようなハイエンドなレンダリング機能の数々にも取り組んでいます。

ゲームエンジンの最適化も進めていまして、『フォートナイト』がその大きな推進力となっています。エンジンチームの大半は『フォートナイト』の最適化に取り組んでおり、そこから得られたものは、全てのUE4プロジェクトが恩恵を受けることができます。あらゆるモバイル端末に対応させることであったり、8GBのPlayStation向けタイトルを2GBのスマートフォンで起動させる技術であったり。

あとは、生産性を高めるためのエンジン内ツールの改善でしょう。今我々が重要視しているのはそうした点です。ネットワーク機能などを全般的にサポートすることにより、どんなデベロッパーでも『フォートナイト』のような、全てのプラットフォームに対応し、全てのユーザーがつながれるゲームを開発できるよう取り組んでいます。

――『フォートナイト』といえば、同作に採用されているリプレイ機能がUE4にも実装されるというお話がありましたが、すでに導入が進んでいるタイトルはありますか。

Tim氏:
ありますよ。『フォートナイト』の以前に『Paragon』に初期段階でのリプレイ機能がついていました。開発者はその一部をしばらく利用できることができました。『PUBG』はすでにリプレイ機能がありますよね。『フォートナイト』の前から実装されていました(笑)。この機能を気に入っています。『フォートナイト』のひとつひとつの開発によって、Unreal Engine 4の開発者はその恩恵を得られていくと思います。

――リプレイ機能は、どんなタイトルにもスムーズに導入できますか。

Tim氏:
はい。どんな開発者でもゲームプレイ中にリプレイ機能を入れることができます。この機能はTwitchやYouTubeにとっては大きなことですよ。なぜならそれがゲームのマーケティングの流れだからです。今はもう人々は広告のある雑誌を買いません。ビデオを作りTwitchやYouTubeに投稿する人が、ゲーム産業を活性化させています。

――すべてのUE4タイトルにリプレイ機能がつくと考えると興奮します……!

Tim氏:
そうですね!特に格闘ゲームにつくと考えてくださいよ。すばらしいアニメーションやムーブメントがじっくり見られます。『フォートナイト』よりもぴったりかもしれませんね!

――GDCといえば、『Paragon』アセットの無料配布には驚きました。Epic Gamesは以前よりこうしたアセット無料配布をされているのは知っているのですが、なぜ13億円を費やし作ったアセットを配布したのでしょうか。

Tim氏:
我々は過去最高に美しいMOBAゲームをつくるため『Paragon』に力を注いできました。そして美しいキャラクター、アニメーション、環境アセットの数々を作り上げました。しかしゲームは結局、最初から最後までビジネスとしてうまくいくことはありませんでした。

『Paragon』の美麗なアセット

そうした事情もあって、『フォートナイト』が軌道に乗って他からリソースを奪い始めたとき、『Paragon』の開発中止を決めました。この決断は、チームが頑張っていただけにとても心苦しいものでした。だからスタッフが次の日に元気に出社できるよう、お葬式があった時のように休暇を与えました。すると翌日、職場に戻ってきた開発メンバーが「ねぇ、我々の仕事が、他のプロジェクトで活かされたら素敵じゃないか?」と言ったのです。アセットの無料配布という決断に至る大きな要因となったのは、『Paragon』の開発チーム自身の想いなのです。

実際にアセットを使っているインディー開発者もいて、格闘ゲームに使っている人もいます。『Paragon』のキャラクター同士が格闘していて、オリジナルゲームとはだいぶ雰囲気が違いますが、素晴らしいと感じましたよ。実は大ヒットしているゲームでも、UE4のマーケットプレイスを駆使してできたものは多いです。何万円か使って、環境アセットのパックを購入する形です。『PUBG』や『ARK』にはマーケットプレイスのアセットが大量に使われています。たくさんのアセットがあれば、インディー開発者のゲーム開発は格段に楽になります。彼らは長い期間と何百万も費やして、こうしたコンテンツを作ることができませんが、ダウンロードすれば一瞬なんです。

――質の高いアセットにより質の高いゲームが生まれるのはいい循環ですよね。さて、そろそろゲームメーカーとしてのEpic Gamesの話について聞かせてください。

後編に続く

[Special Thanks : Ryuki Ishii]

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