ドキュメンタリー映画『Branching Paths』は7月29日に配信。日本のインディーゲームシーンは、世界にどう映るのか

日本のインディーゲームシーンに密着したドキュメンタリー『Branching Paths』が、来週7月29日にPLAYISM / Steamにて配信される。『Branching Paths』は、日本の文化を母国フランスや世界に向けて発信するジャーナリスト/ディレクターAnne Ferrero(アン・フェレロ)氏による映像作品。2年の歳月をかけて撮影された作中には、日本で活動するインディーゲーム開発者たちが多数出演し、喜びや苦悩などそれぞれの想いが描かれている。

Aliceffekt, NIGORO, Alvin Phu
Aliceffekt, NIGORO, Alvin Phu

『Indie Game: The Movie』を観た人は、こう思わなかっただろうか?「日本にもすばらしいインディーゲームがたくさんあるのに、なぜこのようなプロジェクトが日本にないのか」と。

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京都で開催されたインディーゲームの祭典BitSummit 4thにて「MAGICAL PRESENCE AWARD(魅惑的存在感賞)」を受賞する寸前、『Branching Paths』のパブリッシングを務めるPLAYISMの協力を得て、短い時間ではあったが、監督であるアン・フェレロ氏にお話をうかがった。

 
――(『EF-12』をプレイするフェレロ氏を見て)なかなかうまいですね。

アン・フェレロ氏
そんなことないですよ。わたしの欠点のひとつは、ゲームがへただということです。RPGは大好きなんですけどね、成長していくから。

 

Anne Ferrero(アン・フェレロ)氏
Anne Ferrero(アン・フェレロ)氏

――では、よろしくお願いします。飽きるほど同じ質問を受けておられると思いますが、日本のインディーに注目しようと思ったきっかけを教えてください。

いろいろな理由がありますけど、まずわたしはゲームジャーナリストとして記事を書いたり、ゲームについての番組をフランスのテレビで放映したりといった活動をしていました。日本に住んでから数年が経った2013年、CEDECに参加しました。『ゼビウス』のクリエイターの遠藤雅伸さんと、フランスのゲーム研究者と一緒に、日本のゲームが海外でどう思われているか――たしかに当時はPhil Fishと稲船さんの発言の傷が残っていたので、日本のゲーム界が元気じゃなかった。だから、海外でも日本のゲームは人気があるということを伝えてくださいと頼まれました。

わたしとフランスのライターと一緒に、日本のゲームに対する気持ちを調べるためにアンケートをとりました。すると、あなたの声が日本のデベロッパーに届きますというコメントを添えてSNSでシェアしただけなのに、なんと6400人が1か月で答えてくれたんです。自由なスピリットがあってクレイジーなゲームを遊びたい、『塊魂』みたいな変わったゲームをまた遊びたいとか、たくさんの声が集まりました。

 
――Onion Gamesの木村祥朗さんとの縁もあるとか。

たまたま当時Onion Gamesの木村さんに出会いました。ちょうど木村さんはOnion Gamesを立ち上げたばかりで、海外にアプローチしたいと言ってました。そこで木村さんがいろいろなデベロッパーに会いに行くという番組のプロトタイプを作ったんですが、けっきょく予算の都合でボツになってしまいました。別件で映像製作会社に行ったとき、打ち合わせの終わりに「こういうプロトタイプを作ったんだけど」と見せたら、プロデューサーたちが「ああ、面白そうだね、社内企画でやってみましょう」となってスタートしました。

この企画は自主企画で完全にインディーで作られています。会社のカメラマンが暇なとき、機材があるときにロケ行っていいよって感じで始まりました。だから、普通のドキュメンタリーだと2か月で撮って編集するけど、これはちょっとずつ長い期間をかけて撮りました。

2013年から撮り始めたんですけど、ちょうどその年は東京ゲームショウにインディーのブースが登場したので、ぴったりのタイミングでしたね。

 
――たまたま東京ゲームショウのタイミングと合った?

本当にたまたまです。わたし自身も日本のゲームが好きで、日本のインディーのことを知りたかった。ドキュメンタリーを撮りながら、いろいろなことを知っていきました。

 
――日本のインディーに対する気持ちは、撮影前と後で変わりましたか?

最初から最後まで気持ちは変わらなかったけど、みんなと一緒に2年過ごしたので、身近な仲ですし、同じ場所にいる感覚なので、もっと応援したいと感じるようになりました。「こうすればいいのに、どうしてこのままやるんだろう?」とか、良い点もたくさん見たし、悪い点じゃないけど、「こうすれば海外でもうまく広がるのに」とか、感じることは多かったです。

 
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――感じたことをアドバイスすることもあった?

撮影の前後だとか、どこかのイベントで会ったときとかに、アドバイスすることはありました。でも、最終的にそうするかは本人の判断ですよね。

一番の問題は言語かなって思っています。あとはSNSの使い方かもしれません。いまはSNSが世界中の人に物を紹介する一番の方法なんですけど、別の方がインタビューで言ってましたがまさにそのとおりで「キュレーターが足りない」です。一般の人は何を遊べばいいのかわからないですし。海外だとインディー専門のYouTuberがいたり、ジャーナリストがいたりします。日本ではまだ足りないです。

あとは、ゲームが完成したのにTwitterなどでスクリーンショットをアップしないのはもったいないかなと。GIFアニメとか小さなビデオでもいいからアップして、あとは下手な英語でもいいからとにかく書いてみるとか。ハッシュタグとかも使ったほうがいいです、一番有名なのは「#indiedev」や「#screenshotsaturday」ですかね。

 
――わたしもそこは気になっていて、問題点なのかなって思っていました。なので何人かのインディーデベロッパーに、なぜSNSなどで情報を発信しないのかを聞いてみたら、「アイデアを盗まれたくないから」という声も目立ちました。

そうそう。それもよく聞きますね。海外でも問題になったことがあります。開発ブログで情報を発信し続けていたら、発売の1か月くらい前にパクリゲームが出ちゃった。もちろんそういうことはあるけど――たとえばキャラクターだけ出すとかでもいいと思います。どこまで公開するかの判断は難しいですけど。

 
――話がそれますが、フランスのゲームシーンについて聞かせてください。フランスにはゲーム開発者の税金控除制度があると聞いたことがあります。

そうですね。いろんな場合があるんですけど、地域によってはシェアオフィスやインキュベーターもあります。でも、税金が安くなるには手続きが必要で、個人でやっている人は難しいです。ちゃんと会社を作って、いろいろな手続きや審査を通さないといけないんです。

 
――個人では難しいんですね。

日本でもJLOPがありますけど、書類もたくさん用意しなければならないですし、会社としてちゃんと成り立っていないと難しいでしょうね。

まあたしかにフランスはそういった文化について努力していますので、ゲームだけではなくて、映画・書籍・音楽・ダンスとか劇場とかアートなものに関しては支援があります。こうすればフランスの文化が海外に広がるっていう考えですね。

 
――日本もここ数年同じような考え方がありますね。

日本の場合でしたら資本金があるていどじゃないと審査を受けにくいかと思います。政府よりも地方のほうが向いてると思いますよ。たとえば沖縄とか、京都でもインキュベーターがありますし。

 
――そう言われると沖縄もゲーム会社が増えてますね。

そうそう。あとは福岡もそうですね。

 
――インディーゲームを一番遊んでいるのはアメリカというイメージがあるんですが、フランスはどうですか?

もちろんアメリカが一番多いんですけど、フランスは一般のユーザーではなくて、すごいゲーム好きの人が遊んでいる印象です。たとえば一般ゲーマーにも届くように、人気YouTuberや有名サイトが取り上げれば広がると思います。最近はYouTubeとかTwitchの力がすごいです。あとはメディアですね。とくにフランスのゲームメディアのほとんどは動画をやっています。トークショーとか。

 
――動画がそんなに人気なんですか。

番組というか、今週のまとめみたいな。生放送か編集した動画を流します。

 
――フランスのメディアというとGamekultが有名ですね。

そうそう、さっきも取材していましたね。Gamekultは動画コンテンツの配信を長くやってますね。

 
――フランスでは大きなゲームショウがありましたよね。

そうですね。数年前から「Paris Games Week」というゲームイベントがあって、わたしは日本に住んで5年ぐらいになりますけど、たしか最初の1回目と2回目に行きました。当時はすごく小さかったので、日本のゲーム開発者が「Paris Games Weekに行きたい」って言ったとき、「ええ?そうなの?」ってびっくりしました。知り合いに聞いたら、いまは超でかい規模になっていて、ヨーロッパの大きいイベントのひとつになっています。

あとはゲーム以外だと、日本カルチャーのイベント「Japan Expo」では任天堂がでっかいブースを出しています。バンダイナムコもそうですし。E3にあったものが「Japan Expo」に出てます。東京ゲームショウでまだ出ていないものも出ています。アニメとかマンガのイベントでも、ゲームのエリアがあります。レトロゲームを集めるNPOがゲーム大会をやったりもしますね。でもインディーゲームのイベントはちょっと小さいかな。でも今年の11月には「IndieCade Europe」が始まりますよ。

 
――この2日間で「インディー」という言葉をたくさん耳にして、そしてたくさん口にしました。インディーとインディーじゃないゲームって、区別するべきなんでしょうか?

どうなんでしょう。難しい質問ですね。いまは「Super Indie」とか「III(トリプルアイ)」なんて呼び方もありますし――

 
――極端なことを言うと、面白ければインディーでもそうでなくてもいいって人もいると思うんです。

音楽とか映画と同じで、「わたしはメインストリームじゃない」という考え方がある人もいるかもしれないですけど。わたしだったら、楽しく遊べればなんでもいいって感じかな(笑)。

 

 

――ではお話を戻させていただいて、『Branching Paths』はドキュメンタリーです。ドキュメンタリーというと暗い雰囲気のものが多いです。本作もそうですか?

たとえばテレビとかで見かけるようなドキュメンタリーのなかには、大人の事情で感動する人間ドラマを描けるようにあえてそうしているものもあると思います。全部じゃないですけどね。

『Branching Paths』は自作ドキュメンタリーで、自分がやりたいことができたので、暗いものとか寂しいものというよりも、落ち着いたものになっています。日本のインディーだけじゃなくて世界中のインディーは、みんな苦労していて頑張っているから、「素晴らしい!」とか「大成功!」ばかりの内容だと現実離れしていますよね。『Indie Game: The Movie』もそうでしたよね、ポジティブな部分もあったけど、失敗の部分も描かれていました。『Branching Paths』も100%明るいわけではないですし、広告ではないです。みんなが頑張っている姿を、みんなに伝えられるようにしました。わざと暗くしたりとかではくて、素直というか、もちろん監督の目線も入っているかもしれないけど、現実に近いものを撮れたと思っています。

たとえば、みんな苦労していて大変大変って言っているけど、みんな笑顔です。うまく言葉で伝えられないですけど、今後公開するトレイラーを見ていただくとわかってもらえると思います。

 
――“Branching Paths”というタイトルの意味とは?

「Branching Paths」はゲームでもよく使われている言葉です。一本道ではなくて、プレイヤーが選択をして分岐していくシナリオみたいな。「Paths」は英語だと「道」ですから、いろんな道があるという意味になりますね。

 
――いろんな道があるというのは、インディーデベロッパーが成功するための道?

ゲーム開発についてだけではなくて、会社をやめてインディーでやるとか、会社を続けたままやるとか、現状のままで続けていくのか、それとも別の道を歩んでいくのか、それぞれにいろいろな可能性があるという意味での「道」です。

 
――タイトルはアンさんが考えた?

ではないです。

 
――違うんですか。

タイトルは2年間ずっと迷っていて、ぜんぜん見つからなくて、100以上は考えました。製作会社と相談したら、みなさんもたくさんタイトル案を出してくれていて、モーションとグラフィックを担当してくれていた方が「Branching Paths」を提案してくれました。これはピッタリだなって思って決めました。

 
――撮影しながらタイトルを考えていったと。

そうですね。去年の東京ゲームショウで発表しなければならなかったので、本当にギリギリまで悩みました。

 
――思い入れの強いタイトルですね。『Branching Paths』には主役が設定されているんですか?

主役というよりも、ほかのデベロッパーさんよりもちょっと多めに登場するという人なら2人います。大きな会社を離れてインディーとしてやっていく人、ゼロからインディーでスタートする人。ほかにもみなさんご存知のデベロッパーさんも登場します、楢村さんとか。

あとIGA(五十嵐孝司氏)さんなんてコナミを離れたときに取材の申し込みをしたくてFacebookでコンタクトをとったら、「こんにちは、IGAです、無職です。」って(笑)。

 
――あはは。

あとは、日本のことが大好きで、日本の文化を取り入れたゲームを日本からとしてIGFに登録したこともあるAliceffektさん。Josephさんと一緒にPicotachiをスタートさせた方です。出演者は公式サイトにも載っていますよ。

 
――ほんと、たくさんの方が出てきますね。

もともとは80人くらいインタビューしまして、本編は40人くらいです。

 
――インタビューを受けていないけど映っている人もインディーデベロッパーだったりして面白いですね。

そうそう。イベントで取材をすると、そこにいるデベロッパーも映っちゃうんです。

 

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――ドキュメンタリーは、観た人それぞれがメッセージを自由に感じるものかもしれないですけど、アンさん自身はどのようなメッセージをこめられましたか?

言葉にするのは簡単ではないのですが、「やりたいことをやるのはむつかしい」ですかね。本当に難しいです。

 
――アンさん自身もインディーで作品を撮ってます。つまり『Branching Paths』も難しかった?

そうですね。あとは日本についてでしたら、日本にもインディーシーンがあって、同人シーンもあって、優秀なクリエイターもいますし、海外で自身の作品を広げたい人もいるし、そうでない人もいるってことを伝いたいですね。

 
――では最後にメッセージを。

まずはインディーに興味がある人にはぜひ観てもらいたいです。一般の人にはすこし内容が難しいかもしれないですけど、観てもらえるとうれしいですね。あとは日本のゲームのことが好きな海外のゲーマーにも。

 
――たくさんの方が『Branching Paths』を観てくれるといいですね。ありがとうございました。

 
日本のインディーゲームシーンは、世界にどう映るのだろうか。『Branching Paths』は7月29日にPLAYISM / Steamにて980円(税込)で配信される。

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