AUTOMATON vs. 小清水史 大阪のピグミースタジオに妖精が集う (前編)

3/22 読者アンケートのプレゼント当選者さまにSteamキーをお送りしました。みなさまのご協力に感謝申し上げます。

大阪は南森町に拠点を構え、「世界のデジタルおもちゃ工場」を標榜するピグミースタジオ代表作は『ユーフロリア』『僕は森世界の神になる』『野犬のロデム』など。本稿は同社代表、小清水史[こしみず ひさし]氏へのインタビューです。椅子に座った瞬間から始まったインタビュー(一部雑談)をお届けします。

 


 

スポンサーリンク

(AUTOMATONについて)最近公開されたんですね。

――はい。まだまだ人手不足で記事数も足りておりませんが……。

木村さんのインタビューは拝読しましたよ。……昨日まで『野犬のロデム』のプロモーションでバタバタしちゃっててね、今日はとくになにも用意できていないんだけれど。

 

――ラショウさんとご一緒に関東のほうへいらっしゃっていたのですよね。

そうですね。[弊誌を見ながら]メディアとしてはどういうものを目指してるんですか?

 

――日本国内のゲームメディアですと、プレスリリースを最速で発信し、かつコラムも載せるような大手メディアがあります。一方、メディアと呼ぶべきかどうかわかりませんが、センセーションを重視するようなサイトもあります。私たちは、そのどちらでもありません。

ゲームをプレイする者と、つくる者の意見を発信する。それをテーマにしています。ゲームを遊んで、その感想をたとえばAmazonのレビューに無責任に書きちらすことは簡単です。そうではなく、なぜそのゲームが楽しかったのか・面白かったのか?を伝えられる者を集めています。つぎに、創り手の意見の発信というのは、今回ご機会をいただいているようなインタビューなどの形を想定しています。

なるほど。じゃあ、創り手の情報もどんどん載せている状態?

 

――今のところきわめて少ない状態です。インタビューを今後どんどんおこなってゆき、比重を増していきたいと考えております。

木村さんと楢村さんもインタビューに出ているんですね。楢村さんというと、明日からこちらで『LA-MULANA PORTABLE(仮)』の総仕上げです。気合い入ってますよ!

 

――ちょうどその話もおうかがいしようかと思っていました。

ラショウさんもね、イベントで東京をまわっていたので。まだ告知できる状態ではないのですが、皆さんが期待する「あの続編」をすでに進めていますよ。

 

――もう始められるのですか?

そこにナイトの絵が貼ってあるでしょ?今、その辺りでちょうど絵を描いてますよ。今回の東京のイベントもそうなんですけど、ゲームの会社らしくないことにも挑戦しているというか。一石を投じたいというか。

『たま』の石川浩司さんってご存じですか?世代にもよるのかな……いかすバンド天国、イカ天っていうテレビ番組が昔ありましてね。1990年台、バンドが流行っていた時期ですね。個性豊かなバンドが集まってきて、5週連続で競い合って勝ち抜けば「イカ天キング」の称号を獲得できて、メジャーデビューしていく、みたいな。そんな番組だったんです。そこのキングになったのが『たま』でね。その時のメンバーの一人が石川浩司さんで、音楽性はもちろんのこと、ランニングシャツ着て、坊主頭で……まあ、とにかく独特な世界観だったんですよ。僕は、今回の『野犬のロデム』のイベントで、ラショウさんがこのタイミングで石川さんとセッションしながら”復活”を果たすということが面白いと思った。

(注: 7月3日に新宿ロフトプラスワンにて開催されたイベントには、ラショウ氏のほか、石川氏や飯田和敏氏らが集まった)

 

――そういうマインドを継承するということですか。

『たま』ってね、伝説的なんです。とにかくバンドブームのときはこの人たちを語らずにはいられなかった、そんな印象深いロックバンドなんです。独自のスタイルで、その時の流行の路線ではないのに堂々と勝ち抜いてみせた。

See also: たま(Wikipedia)

プレイステーション初期のころのゲームってそういう匂いがありましたよね。いい意味での「ヘンテコゲーム」がいっぱいあったじゃない(笑) 挑戦的なゲームを出しやすい環境にあったという事もあると思うんですが、創り手のマインドが「とにかくなにかブチこんでやろう!」でした。そんなのを容認したパブリッシャーもすごいと思いますが(笑) イカ天のマインドは、今のゲームづくりに例えても面白いと思います。

僕はこのころに出た『太陽のしっぽ』が大好きで。ラショウさんのゲームに共通する魂を感じて飯田和敏さんをお招きしました。木村祥朗さんもね。もちろん『Millon Onion Hotel』も応援しているのですけれど、やっぱりプレステ期に出た『moon』が好きで。あのころ独自のスタイルで注目された人達に集まってもらいました。ラショウさんを筆頭として、ピグミースタジオは今後もこのようなゲームに挑戦していくぞ、って。志を見せたかったんです。

そうそう、『パラッパラッパー』なんかもありましたね、あの時代やっぱり好きなんです。おそらくプレイステーションのファンの方ってなんとなく感覚的に、ああいった”不思議”なゲームをPSに期待しているんじゃないかなと思っていたりしています。僕だけですか?(笑) もう一度そういう期待にあふれる空気になればいいな、と思っています。海外を中心として盛り上がりを見せるAAAゲームの流れも面白い。でも、そんななかで、日本発信で「ヘンテコゲーム」のムーブメントが世界に広がるのも面白くないですか?

 

pygmy-4

 

僕がゲームにかかわったのが「ゲームやろうぜ!」1st(注: 1995年から1999年にかけてソニーが開催していたゲームクリエイターオーディション)だったんですが、なにか「ゲームでやらかしてやるぞ」っていう空気に満ちあふれていました。いまでもゲームってそういうもんだ、ってずっと思っているんです。インディーゲームという肩書でこのような「やらかしてやるぞ」という想いの強い、いわばトガったゲームも再注目されてきているところもあると思うのですが。今考えると当時にすでにソニーさんは、あたらしいゲームファンの獲得のために”ココ”への挑戦をずいぶんと続けていたんだなぁと感服しますね。

その後、ゲームはリッチ化、テクノロジー中心に発展していくなかで、僕は独立して今の会社を創設しました。ゲームの受託の仕事をしながら、海外からこの「なにかやらかしてやるぞ」っていう匂いを強く感じたんですよね。日本の家庭用ゲームはどうこう、と言われるなかでおかまいなしに続々と市場にブチ込んでくる海外のエッジのきいたゲーム。僕は日本でもこのムーブメントは必ずくると思ってすぐに企画書を作って大ボラを吹いてまわりました(笑)

当然、ソニーの担当者にもお話するのですが、最初のうちは「本当に?」と様子見気味でした。けど、『風ノ旅ビト』という少数精鋭で創られたトガったゲームがPSNのDLランキング上位に食いこんだあたりから、業界とその関係者の潮目が変わったように思えましたね。すくなからずやっていく価値はあるだろうと。

ちょうどそのタイミングくらいで、AGM(アクティブゲーミングメディア)の担当者さんがやってくるんです。最初は、ゲームの翻訳の営業にいらっしゃったんですが、今こんなことを始めましてと見せてもらった、まだできたてのPLAYISMを見せてもらって……

See also: Indie Stream

そしたら面白い面白い! 僕もまさに大ボラを吹き始めたところだったから、これは一緒に大ボラを吹きまくるしかないと(笑) そこから、濃厚におつきあいさせていただいて。ソニーの担当者にも紹介させていただいて、それからIndie Streamができたり。TGSもインディーゲームを推進してくれたりして、ワッと広がっていった感じですね。もちろんBitSummitの存在も大きい!みんな共犯者ですよ。後に引けませんね(笑)

 

――すくなくとも、いかにもインディーゲーム的な、アブストラクトなグラフィックスのゲームがはやりつつあるのは感じます。

「インディーゲーム」はもちろんわかりやすいカテゴライズなんですけど、個人的にはもう次のステップに行っていると考えています。先日ファミ通さんにラショウさんとお邪魔させていただいたんですけどね、そのとき編集者の方とお話して。「結局お客さんからしたら楽しいかどうか」が重要でそう感じてもらえるかが一番大事ですよねぇ、って話になりまして。私も強く共感しました。紙面をにぎわしている色とりどりのゲームを調べたらじつはインディーゲームだった、というような状況はファンのかたにもあたらしいコンソールゲームのつきあいかたを提供できている気がしています。面白いでしょう?

 

――ビビッドな色使いと造形の、目と脳を刺激されるような。

『パラッパラッパー』のロドニーさん(注: Rodney Alan Greenblat氏。同作を手がけたイラストレーター)の絵もね、当時のゲーム界としては新鮮でした。この世界観を中心に置いたゲーム自体のオリジナリティーも半端なかったと思います。

やっぱりこのゲームも今でいうインディーゲーム系というか。ソニーさんはそのときから、面白そうなゲームをくみ上げ、容認する文化があったのかな。ソニー・ミュージックさんの音楽作りからのDNAがSCEさんにも受け継がれていたのかわかりませんが、とにかく型にはまらない挑戦的で革新的なゲームにあふれていた。僕にとってはゲームの黄金時代ですね。また挑戦的で革新的なゲームがたくさん売れる時代が戻ってくる事を願っています。

 

――インディゲームのインパクトとは、映像面が中心でしょうか?

もちろん絵は重要ですよね。企画書でも、文章だけではみんなほとんど見ないですしね(笑) でも、それは視覚的な印象の問題で、本当はゲームのコンセプトがもっとも大事な気がします。最近だと個人的にはスパイク・チュンソフトさんの『ブラザーズ 2人の息子の物語』が気になりますね。エンタメ全体で親子ものが多くあふれた中、兄弟で冒険するというコンセプトの視点をゲームの中心に持ち込んだキャッチーな作品!

 

――心象風景について突っこんだタイトルはピグミースタジオさんからは出ていない印象があります。しかし、そうしたものをテーマにした作品を作ってみたいというお気持ちはありますか?

そうですねえ……そうですねえ。そういえばそういう作品、ないですよね(笑)

 

――どちらかというとゴッドゲーム的というか、神視点なものが多いようにお見受けします。

あの手のもの(注: 上述の「絆」をテーマとしたようなタイトル)って大好きなんですけどね。RTSやSLGに寄っているのは確か…今後、きっと出しますよ。きっとね(笑)

あっ! そういえば! 年末発売予定の『LA-MULANA PORTABLE(仮)』!! あれは昔遊んだレトロなガチアクションの雰囲気がするでしょ? 彼らは「レトロアクション」だと思って創っていませんが、その手のゲームが好きな層にきちんと届けたいですね。ガチアクションのファンには、ヌルいと感じるようなアクションが散見されるこのご時世。ピンポイントのファンに、直球ど真ん中でズドーンと出したいですね。「ニッチだけど面白い」を届けたい!

 

――ニーズの高まりもあります。とくに海外では2D Platformerというくくりのゲームがたくさん出ていて、Steamをひらけばランキングの上位にその手のタイトルがいくつかあったりします。日本でもつぎに波がくるかもしれません。

ニッチだれど面白いものはどんどん入れていきたいです。他のメーカーさんがやりたがらないところをですね。でも、そこにピグミーの役割があるんじゃないかと(笑) 結果的にお客さんが色んなゲームを通じてこの手のコンセプトのゲームに「面白かった、ならこれもやってみよう、あれもやってみよう」となって少しでもニッチが広がってくれると嬉しいですね。

 

pygmy-14

 

――日本ではあいかわらず「インディーゲーム」カテゴライズの存在感が強いですが、いまSteamでゲームを買うと普通に”Indie”(独立系開発会社)のタグがついている作品がランキング上位に複数入っていたりしています。若干”時差”があるのかもしれませんが、日本海外と同じような流れになる可能性もあるでしょう。

まだまだ海外中心に盛り上がっている感がありますからね。日本でもありえます!

 

――ということは、今実際に手がけていらっしゃるVitaはもちろんのこと、PS4にも大きな期待をよせられているということでしょうか?

そうですね。PSMから現在Vitaを中心に展開中なのですが、今後はPS4もふくめてやっていきたいですね。ともあれ、Vitaは持ち運べるのがよいですよ。『LA-MULANA PORTABLE(仮)』もそういう点では相性が良いです。

だからってスマホの事をどうこういう気はありませんよ。僕も手軽に使って遊んでますし、便利さ快適さ触り心地すべて最高です。ただ、なんかアクションゲームとかでフラストレーションがたまる時無いですか?アナログコントローラをガチャガチャとする快感を味わえないことに対して。

僕は、年末発売する予定の『LA-MULANA PORTABLE(仮)』を「コントローラゲー」と呼んで、スマホのゲームを「さすりゲー」と呼んでて。そのことを「コントローラゲーとさすりゲーの聖戦」だとメディアの人に煽っています。(笑) だからね、しっかりとアナログコントローラを使ったゲームも面白いよ!という事実を確立するという点でも『LA-MULANA PORTABLE(仮)』が売れることには意味があると思っています。

 

――『パズドラ』に勝つという意味がある?(笑)

いや、セールスで勝つなんて1ミリも思わない(笑)やっぱりコントローラーゲームというのはこういうものだよ、ガチアクション気持ちいいでしょ、とみなさんに再認識してもらいたい。

 

――ちょうど最近物理コントローラーの良さ・ゲーマーの慣れ・押下する快感などを、バーチャルパッドが上回るのは難しいのではないか、という記事を公開したところでした。ようするに、押している感じがしないのです。

 

pygmy-3

 


中編へ続きます(7月16日公開予定)。

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog