36年ぶりに蘇った戦略的穴掘りアクションゲーム『宇宙最大の地底最大の作戦』 その神髄に迫る!

 

『宇宙最大の地底最大の作戦』
マインドウェア代表・市川幹人氏インタビュー

1987年「M.N.M Software」社として創立。X1やX68000といったマイコンをはじめ、メガドライブにもソフトウェアを供給。1995年に有限会社マインドウェアに社名変更し、現在では『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争 SP』(iOS/Android)や、前代未聞の超ワイドシューティングゲーム『Super Chain Crusher Horizon』をSteamなどで配信中。
1987年「M.N.M Software」社として創立。X1やX68000といったマイコンをはじめ、メガドライブにもソフトウェアを供給。1995年に有限会社マインドウェアに社名変更し、現在では『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争 SP』(iOS/Android)や、前代未聞の超ワイドシューティングゲーム『Super Chain Crusher Horizon』をSteamなどで配信中。

――市川さんは当時『地底最大の作戦』はご存じだったのでしょうか?

市川氏
ずっとやりたかったんだけど、はじめて遊んだのは有志の人が「プチコン」(※)で移植されたものだったんですよ。寝る間も惜しむほど面白かったけど、いろいろといいたいことはある感じでしたね。当時の8bitパソコンを知っている人で、このゲームを知らない人ってかなり少数じゃないかな?

(※)「SMILEBASIC」という独自BASICを内蔵したニンテンドーDSiウェアで、ユーザーはゲームのプログラムを行なうことができる。現在はニンテンドー3DS向けに『プチコン3号』がリリースされている。

――「ここに手を加えたいな」と思われた一番のポイントってどこでしょうか?

市川氏
まずプレイヤーとヘビのグラフィックですね。やっぱりヘビが一定方向しか向いてないっていうのが気になりました。左を向いてる絵のまま右に移動されるっていうのがものすごいわかりにくいんですよね。人間ってけっこう勝手で、約束されてないのに左を向いてるから左に行くっていうことをやっぱりインターフェースとして捉えてるんですよね。なので「SNAKE FLIP」を搭載しました。次に思ったのがダイヤとハートを組み込むことですね。毎回違うゲーム展開にするにはもっと盛り上げるフィーチャーをつけることなので、それをどうしようかっていうときに、地中に埋まってるっていうアイディアが浮かんだんです。掘って探索してる感じに親和性があるんじゃないかなと。

――市川さんといえば『マーズ』を制作された経緯から、X1版を作られようと思われたことはなかったのでしょうか?

市川氏

僕は最初MZユーザーだったんですけど、X1のころはすでにプログラマーのバイトをしていたので、売れる機種でやらないといけなかったんですね。そのときは『地底最大の作戦』を含めたオールドゲームに対しての意欲があまりなく、前に向かっていこうという感じだったんです。あと、X1版の『地底最大の作戦』は機種が発売されて早々に存在していたというのが大きな要因としてはあるかもしれませんね。

――やられた瞬間に「ちくしょう!」って思えるのはゲームらしさがありますよね。

市川氏
基地へ一直線に通じている穴、左右どちらに動くのかわからないヘビしかいないのに無限のゲーム展開があるというのも偉大なところですよね。ヘビをどれだけ穴に落としていくかっていうところもありますし、10匹以上捕獲するとヘビの凶暴化が始まるので、それを考えたうえで序盤からどういうふうに地形を作っていくところかっていう戦略性もありますからね。

――ビデオゲームのジャンルにおいて「穴掘りアクション」として早々に登場した一作だとお聞きしましたが、他作品と異なるところは具体的にどこにあるでしょうか?

市川氏
なにをもってサンドボックス型のゲームと定義するかといえば、閉空間でありつつプレイヤーの行動に創造性があってこちらから何かをやっていくことで、なおかつパターンゲームみたいな要素をゲーム側から用意しないっていうのがありますよね? それを満たしている最初の作品が『地底最大の作戦』で、単によく出来ているなというより「すげえな!」と思いますね。

――アレンジモードは、MZ-700版で本来やるべきことが実装された完成系という感じでしょうか?

市川氏
そうですね。「当時あったら最高だったのに!」みたいな。MZ-700は1982年に発売されているのですが、MZ-80版が掲載されたのが1980年。なので、あのころだとけっこう前に感じてしまうんですよね。このアレンジモードはMZ-700版といえども2016年に作られているから、もはやいろんなゲームを遊んで山ほどの答えを見てから作っているので、ぜんぜん別枠なんですよね。いまだとどうしても量とか見た目ばかりの話になっているので、これを作った有田さんから「うんうん」と言ってもらえるような――いわば仕事としてパワーをかけてゲームを作れるから、物量ではなくて発想としてすごいっていうのを考えてあげないといけないのかなって。ちゃんとリスペクトがあるような何かをよく考えて作らなくてはいけなくて、それはなんでしょうかと追及したからこうなりましたっていうところですね。

――本作を出されようと思われた時点で3モード搭載されることは考えていたのでしょうか?


市川氏

そうですね。最初はもっとフィールドを縦に広げるとか、キャラクターのサイズをいまの4分の1ぐらいに縮めてロールアップ・ロールダウンでズームイン・ズームアウトできて500人ぐらいを一気に操作できるようにとかいろんな構想をしていたのですが、そのなかでみんなに面白さが伝わって、なおかつ長いゲームにならないほうがいいなと思ったんですよね。起承転結っていうのを何度も味わえて「もう一回」と遊べるようなものですね。結局ゲームの寿命っていうのはエンディングを迎えるのではなく“飽きるまで”なので、遊んでいる途中であろうが飽きたら終わりなんですよね。そうするにはいろんな展開があって、次はどんなふうになるんだろうって気になって「もう一回」って遊びたくなるようなものが大事なことなんです。移植やアレンジであるにもかかわらず、新たな軸を加えることが必須であると思ったので、大変でしたけど「やるぞ!」という感じでしたね。

――スペシャルモードのサウンド作曲をされている古代さんにオファーをかけられたのはいつごろなのでしょうか?

市川氏
今年の2月か3月ですね。僕は正式なオファーをする前に「こういうのがありますよ」というのを前フリとして用意してから「正式にやることになりました」みたいな、何段階か触りから入っていくところがあるんです。心の準備をしていただくという意味合いもありますね。古代さんはその段階でだいたい「こんなのが流れると嬉しいんだろうな」っていう考えをお持ちになられているので、曲を作りにいくというよりは頭にだいたいある感じになってからドサッといくみたいなほうがいいのではないかと思って。古代さんもいろいろと作曲されているなかでも一晩に何曲も作られる方なので、PCの前に座ってゼロから構想されてるということはほぼないんですよね。生意気になってしまうけど、僕は古代さんに監督として指定したことは「気持ちよくやっていただく」。古代さんが浮かびやすくやっていただくようにすることが一番大事な仕事でしたね。

――ステージクリア型ではないのでBGMのオーダーは大変だったのではないでしょうか?

市川氏
すぎやまこういちさんが『ドラゴンクエスト』の作曲をされた際、どうやって飽きない曲を作るかというのを考えるのは大変だったけど面白かったというエピソードを聞いていたので、そういうの、「何度聞いても飽きなくて、キャッチーで耳に残り、少ないチャンネルで、ゲームの雰囲気にフィットしてて……」という感じで古代さんにお願いしたら「市川くん、それが一番難しいんだよ」と言われまして(笑)。テンションをあげて「いくぜ!」と思わせるような、いわゆる古代節と呼ばれる楽曲群も世界中から絶賛され、素晴らしいのですが、『イース』の街のBGMや『ソーサリアン』のオープニングといった素晴らしい曲も書かれるので、メロディーメーカー的なところでもその才能を発揮というよりは真似できない凄みを感じるんですよね。『世界樹の迷宮』等で古代さんの曲を楽しまれてる世代の方にも聴いていただきたいですね。3音しか鳴らないという制限で発揮される作曲家の本当の力やセンス、ずっと聴いていてもプレイヤーを飽きさせずにテンションを上げる……改めて古代さんはすごい人なんだなというのを実感しました。

――グラフィックを担当されている小野さんをご指名された経緯はなんだったのでしょうか?

市川氏
小野さんとは違うゲームでご一緒にお仕事したいと思い、一昨年に知り合ったんです。それとは別に本作を初めて遊んでもらったのですが、ものすごく気に入っていただけたんですね。そこでグラフィックをお願いしたのが経緯になります。小野さんから「ドットしかできませんよ」と言われたのですが、1キャラ3色でもぜんぜんOK。大事なのは世界観が伝わることで魅力的かつ面白くなることだったので、それさえできていれば大丈夫かなと。それ以上の注文はないですね。注文しづらかったということはなく、リテイクのお願いも何度かさせていただきました。でも、小野さんはすごいクリエイティブに「昔にゲームを作っていたような気分でやれたよ」と仰っていただけたので嬉しかったですね。

――初めて遊ばれる方とこれまでに遊んだことがある方に向けてそれぞれ一言いただけますでしょうか?

市川氏
初めて遊ぶ人には80年代アーケード想定アレンジのスペシャルモードからMZ-700を想定したアレンジモード、原作のMZ-80モードをそれぞれ見ていただきたいですね。初のサンドボックス型ゲームであるということだけではなく、同ジャンルの他作品に比べて抜群に勝負が早いので「面白いってなんだろう?」っていうところを感じていただきたいなと。量が多いのと奥が深いのって違うんですよね。単純と簡単っていうと「シンプル」で略されてしまうんですが、このゲームはイージーではないけどシンプルではなんですよ。昔から遊ばれている方にとって、いまのゲームって昔あったものの未来とはちょっと違う道に進んじゃってるなと思うんですが“昔の未来(オールドフューチャー)”っていうことで、今のゲームとは違うということをわかっていただけると嬉しいですね。

――本質としての面白さに気づいていただけるかどうかですね。


市川氏

そうですね。それぞれのモードを通じて「いろんな面白い」ということを素直に感じで楽しんでいただきたいなと思います。中毒性やハマるという意味では毎回いろんなゲーム展開があるので「ちくしょう、もう一回!」っていうのはありますね。いま出ている多くのゲームにはそれがないんじゃないかなって思うんですよ。いっぱい食べてるのになかなかお腹いっぱいにさせてくれない感じですね(笑)。

有限会社マインドウェア
http://pinball.co.jp/

『宇宙最大の地底最大の作戦』
http://www.pinball.co.jp/games/CosmicCavern/

Steam Greenlight「Cosmic Cavern 3671 宇宙最大の地底最大の作戦」
http://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=699794047


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1989年生まれ。UNDERSELL ltd.所属。ビデオゲームとピンボールをこよなく愛するゲームライター。新旧問わない温故知新のゲーム精神をモットーに、時代によって変化していくゲームセンターの「いま」を見つめています。