「感情」が勝負を決めるRPG『Sacred Fire』開発中。戦いは心理戦だ、武器や防具は意味を持たない異色作


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第418回目は『Sacred Fire』を紹介する。

『Sacred Fire』は「人間心理」に焦点を当てたRPGだ。本作では武器や防具といった一般的なRPGに登場するアイテムは意味を持たない。本作では「感情」が強さにも弱点にもなる。怒りは攻撃を上昇させるが、防御力と命中率を低下させる。恐怖心があれば弱腰になるが、敵の判断力をにぶらせることができる。『Sacred Fire』の世界では「感情」と、感情をつかさどる「性格」が戦闘の鍵を握るのだ。

舞台となるのはカレドニアの歴史をベースとした架空国家。圧倒的な国力を誇るローマはカレドニアを侵略しつつある。一度は停戦したものの、ローマが攻撃を再開したことで人々は怯え、その隙に強欲な女王「Morrigan」が国の掌握を狙っている。戦争を終わらせるために結束するか、ローマに復讐するかはプレイヤー次第だ。

プレイヤーは自分でキャラクターを形成することになる。職種のほかに特性や性格的傾向を設定することで個性が生まれる。こうした個性は、目に見えない内面がすべてではない。
自分のキャラクターをか弱い外観にすれば同情を買いやすくなる。美しく設定すれば、人々が友好的に接してくるが、嫉妬されやすくなる。強面に設定すれば敵の恐怖心が芽生えやすくなる。自キャラクターをどういう人物にするかと同時に、相手にどういう風に映るかも考慮する必要がある。

ゲームには大きく分けてふたつのフェイズがあり、「ストーリーフェイズ」ではシナリオを進めて選択肢を選ぶ。会話を通じて意志が弱まったり、臆病さが強まったりするなど心が変化していき、キャラクターの性格が形成される。もうひとつが「フォートフェイズ」で、ここで政治や戦略についての決断をくだす。このフェイズでは敗北した際に植え付けられたトラウマ的記憶を除去したり、羨望や偏見といった厄介な感情を制御したりすることもできる。

戦闘はターンベースとなっており、ターンごとに行動とともに“目的”を選択する。選べる行動は「生き残る」「挑発」「威圧」「名声を得る」など幅広い。戦闘では常に感情が変化しており、感情の調節が重要になる。本作にはダメージの概念はないが、HPの概念が存在するので、そうした数字にも気を配らなければならない。目的を選択しなければポイントが温存される。ポイントが一定まで溜まれば、パニック状態を治療することができたり、特殊な攻撃を繰り出せたり、物語に新たな展開をもたらす行動を選択することができるという。交渉も重要な選択肢で、被害なく戦いを終わらせることも、恐怖心を植え付けることも可能。いずれにせよ、心理的な駆け引きが戦いを左右する。

『Sacred Fire』には個性豊かなキャラクターが存在する。腕っぷしの強い大男「Wid」や思慮深いが謎の多い女性「Clair」、敵国ローマの人間でありながらプレイヤーを助ける「Marcus」など、一癖も二癖もあり、それぞれ性格が異なっている。コミュニケーションの取り方次第で彼らは敵にも味方にもなる。気を付けなければいけないのは、裏切られる可能性が常に存在することだろう。

開発を手がけるのはAndrej Vojtas氏を中心とした少人数のPoetic Studio。Vojtas氏はAAAタイトルでゲームデザインや脚本の執筆を担当してきたベテラン。『The Witcher』シリーズで「ゲラルト」を演じるDoug Cockle氏がナレーターとして参加するなど、ストーリーテリングのスペシャリストが結集している。

現在Kickstarterキャンペーンが実施されており、1か月以上を残し目標額の5万ドルに到達している。今後金額が伸びればさらに自キャラクターの詳細なカスタマイズや、新たなボイスが追加されるとのこと。

対応プラットフォームはPC。PC版のリリース後にはPlayStation 4とXbox Oneでの発売も予定されている。