ノワール調のサイバーパンク・ホラー『The Mind’s Eclipse』開発中。人工視覚を得た研究者と女性型AIが、失われた記憶を求めて異星の都を巡る

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第504回目は『The Mind’s Eclipse』を紹介する。

西暦2352年。著名な医学研究者であった主人公ジョナサン・キャンベルは、とある廃病院の一室で目覚める。そこは地球大気圏内の環境を再現するドームに包まれた、木星の第2衛星エウロパ上の居住ステーション内部。民間研究機関COREが建設しようとした、理想郷の成れの果てだ。眠りから覚めたジョナサンは記憶を失っており、自分が何者なのか、自身の身に何が起きたのか、分からずにいる。ただ両目に異変を感じるのみ。どういうわけか、眼球のインプラント手術を受けた痕跡があるのだ。義眼により仮想的に映し出された視覚を頼りに、あたりを見渡すジョナサン。すると「ECH035536」、通称「L」と名乗る女性型AIが、彼の人工器官を通して語りかけてきた。皮肉めいた台詞を吐く「L」は、施設内の酸素が残り45分で枯渇してしまうことをジョナサンに告げる。

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本作は手書きのモノクロイラストで描かれる、白黒つけられないキャラクターたちの物語。ビジュアルノベル用のゲームエンジン「Ren’Py」を採用したノワール調のサイバーパンク・ホラーであり、プレイヤーは画面上のオブジェクトをポイント&クリックで調べながら話を進める。インベントリー機能があり、溶接されたエレベーターをこじ開けるための器具、扉を開けるためのセキュリティカード、無酸素空間で活動するための宇宙服といったアイテムを集め、マップを行き来しながら次のエリアへと向かう。道中では従業員たちが残していった会話ログ、日誌に目を通し、ときには他者のニューラル・チップを自身の体内に埋め込むことで記憶領域を拡張しながら、COREステーションの人々ならびにジョナサンが覚醒前に救おうとしていた家族の身に何が起きたのか、自らを真相へと導いていく。

病棟内に生存者の気配はなく、銃弾で穿たれた遺体ばかりが転がっている。その多くは、銃器を抱えた戦士たちである。つまり誰かが病院を襲撃したのだ。施設の電力はダウンしており、酸素の供給を担うバックアップ用の発電機も、誰かが意図的に停止させた模様。ジョナサンはBOSy(Biomedical Operating System)を搭載した眼球インプラントを介して、遺体や作業用ロボットたちの体内OSにアクセスし、手がかりをを探っていく。そして施設のデータベースから引き出した情報により、自身がかつてCOREに勤めていたことを知る。ただし、解析した記録はいずれも数年から数十年前のもの。昏睡状態に陥っていた空白期間中に、状況が一変したようだ。

悲劇の残骸

ジョナサンと行動を共にする「L」が再起動されたのは最近になってからだそうで、従業員・患者の行方は分からないという。ただ、壁や床には「AIを信用するな」「COSy(CORE Operating System)に気をつけろ」といった不穏なメッセージが刻み込まれている。彼女の言葉を鵜呑みにしてよいのかは分からない。そもそも義眼の人工視覚に頼るジョナサンと、「L」が見ている世界は同じなのだろうか。そしてCOREの住民が信奉していた「Eclipse」の訪れとは、一体。

皮肉なジョークが続くが、主人公を助けようとしてくれているのは確か

ナノテクノロジーに支配された世界で、自らのアイデンティティを探るジョナサン。病棟脱出後は「L」とともに閑散とした居住区やスラム街を歩み、人々の暮らしの残片を目の当たりにする。異星の住民たちの食生活(3Dプリントステーキやフードキューブ)、VRや五感拡張体験に溺れる快楽主義者、ファッションの延長線としての人体改造。BOSyインプラントの違法除去を望む住民と、それを阻止すべく働きかけるCORE関係者たち。さらには、人類解放を謳った「Eclipse」プロジェクトに反抗するプロテスト団体の痕跡も。サイバネティクス技術が発達したこの世界で、人々はインプラント手術の義務化に抵抗を覚え、治療法が見つからない大病や、住民を密かに監視するCOSyのネットワークに脅かされながら生活を送っていた。

このように本作は、前衛的ながら鬱屈とした世界観を構築しつつ、現実を超越した集合精神、精神のエクリプス(蝕)について思考を巡らせる、サイバーパンクとして堅実な姿勢を見せた一作となっている。生と死のサイクルから解放されることは、はたして人間に幸福をもたらすのだろうか、そのとき人は人でいられるのか、つまるところ人間らしさとは何なのか、という問いもつきまとう。

エウロパ名物フードキューブ。一粒で世界各国の美食を堪能
現実は白黒、仮想現実はフルカラーで表現

謎が謎を呼ぶ『The Mind’s Eclipse』の対象プラットフォームはWindows/Mac/Linux。Steamストアページはオープン済みで、itch.ioからは冒頭エリアを体験できる無料デモ版がダウンロード可能。開発を手がけるのはインディーデベロッパーのMind’s Eclipse Interactiveであり、製品版の発売日は2018年1月25日を予定している(日本語は非対応)。

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