太陽のない灰の地で他人を信じられるか?地図の無いオープンワールドアクションRPG『Ashen』

 

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。ついに始まったE3 2015。あなたは大作ゲームの情報ばかりを見て、素晴らしい作品たちが登場しているのを見逃してはいないだろうか。今週はコーナー名を一時的に「E3 Indie Pick(2015)」に変更し、E3 2015にてスポットライトが当てられたインディーゲームたちを紹介してゆこう。

第5回目は、MicrosoftのプレスカンファレンスにてID@Xboxタイトルの1つとしてPCおよびXbox One向けのリリースが発表された『Ashen』をピックアップする。公式サイトなどでは本作の詳細はまだ語られていないが、海外メディアKill Screenのインタビューからそのディテールを知ることができる。

太陽の存在しない灰の世界

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地図のないオープンワールドゲーム

『Ashen』はオープンワールド型のアクションRPGだ。『Ashen』の世界には太陽が存在せず、人間が持つランタンか、山から吹き出た赤々と光る灰だけが地上に光を届けている。すべてを喰らう「Gnaw」と呼ばれる闇の存在が、海底から『Ashen』の地を狙うなか、プレイヤーは世界を探索する冒険家となって、「Home」と呼ばれる場所へとたどり着かなければならない。

『Ashen』にて1つのキーポイントとなるのが「周囲の環境の把握」だ。ゲーム内にはワールドマップが存在せず、プレイヤーは特徴的な形の岩や大きな木など「ランドマーク」を発見して記憶し、いま自分がいる位置を把握しなければならない。「ランドマーク」は死亡時に復活するチェックポイントともなるため、広大な『Ashen』の世界を探索するには絶対に必要なのだ。

またプレイキャラクターには戦闘時に消費する「スタミナ」の概念が存在している。スタミナは重要な要素であり、これを回復するには水筒から水を飲む必要がある。そして水筒に水を入れるには、川や湖など水源の位置を知っておかなければならないというわけだ。

『Ashen』の戦闘は『DARK SOULS』に影響を受けており、その世界は死に満ちた過酷な世界だ。水切れでスタミナを失い人喰い族や巨大なクリーチャーなどに倒されれば、装備していないアイテムはすべて失われ、チェックポイントへと戻される。周囲の環境を探索することと、ゲームプレイで優位に立つことがリンクしている点は興味深い。

ほかのプレイヤーを信じるべきか信じないべきか

また『Ashen』最大の特徴が、『Journey』と『DayZ』のスタイルをミックスしたようなオンラインマルチプレイヤーが搭載されている点だ。プレイヤーは『Journey』のようにゲームを遊んでいるさなかに自動的にオンラインへと接続され、ほかのプレイヤーと出会うことになる。ここで徒党を組んで戦うのかどうかは自由で、またプレイヤーは簡単にほかのプレイヤーを信じてはいけないのだという。ほかのプレイヤーは“別の目的”で冒険している可能性があり、また一部の冒険には相棒を見捨てる必要があるようなものも存在している。

このオンラインマルチプレイヤーデザインについては、E3 2015に合わせて公開されたトレイラーを見るのが一番わかりやすいだろう。2人の冒険者が偶然出会い共に冒険するが、最終的には片方の冒険者は不測の事態でピンチに陥り、見捨てられる。『DayZ』のようなお互いを信じるべきか、信じないべきかの奇妙な人間関係が、『Ashen』でも築かれるようである。

また『Ashen』では拠点となる町が存在し、この町に他のプレイヤーを連れてくることで、NPCとして定住させることができるシステムも存在する。NPCとなった他プレイヤーは、過去に冒険してきたエリアの情報を与えたり、あるいは鍛冶屋になって武器の製造を手助けしてくれたりするのだという。一方で彼らが町のNPCたちを殺害してしまう可能性もあるということで、不断の関係は常に続くようだ。

『Ashen』はPC/Xbox One向けにリリース予定。野心あるプロジェクトとなっているが、どのような形で完成するのか、今後の情報に期待したい。


初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。