ダンジョン探索型シューター『Enter the Gungeon』 BitSummitで味わった、射撃と回避が生み出す高揚感

 

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆくIndie Pick。7月11日から7月12日にかけて、京都ではインディーゲームの祭典「BitSummit 2015」が開催された。それに併せてIndie Pickは「BitSummi 2015特集」とし、編集部がプレイした興味深いタイトルをピックアップしていく。第3回目は、ダンジョン探索型シューター『Enter the Gungeon』を紹介する。

 

Enter the Gungeon

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Enter the Gungeon』は、シューティングとダンジョンクローラーをミックスした作品である。デベロッパーは、元EA Mythicのスタッフによって設立されたDodge Roll Games。コアなゲーマーの方であれば、トレイラーを見ただけでパブリッシャー名が頭に思い浮かぶのではないだろうか。Devolver Digitalである。リリース時期は2016年、対応プラットフォームはPlayStation 4/Windows/Mac/Linuxを予定しているという。

Indie MEGABOOTHエリアのDodge Rollブースに立っていたのは、スタジオ創設者であるDave Crooks氏。影響を受けたタイトルについてたずねると、Dave Crooks氏は『The Binding of Isaac』の名をあげた。そして、作品内容はもちろんのこと、開発を手がけたTeam Meatにも感銘を受けたと語った。4人(フルタイムで働いている人数)でゲームを開発しているDodge Roll Gamesは、自分たちよりもさらに少ない2人で『Super Meat Boy』を大成功させたTeam Meatに勇気をもらい、挑戦しようという気持ちになったという。

 

Gun+Dungeon=Gungeon

Gun+Dungeon=Gungeon
Gun+Dungeon=Gungeon

本作のタイトルにある「Gungeon」とは、GunとDungeonを組み合わせた言葉である。そのままゲーム内容を表しているのだが、コンセプトが先ではなくタイトルが先に決まったという。そして、開発メンバーが『Dungeons & Dragons』や「Bullet Hell(弾幕シューティング)」が大好きということもあって、ぴったりだったというわけだ。シンプルなタイトルだけでゲーム内容がイメージできるというのは素晴らしい。見た目が弾丸の敵だけでなく、ダンジョン内は銃に関連するデザインが目立っており、たとえば離れた場所にワープするポイントはリボルバーのシリンダーをモチーフにするなど、細かいところにもこだわりが感じられた。

ゲーム内容は冒頭で述べたとおり、シューティングとダンジョンクローラーが混ざり合っている。ダンジョンクローラーといえば、剣と魔法でモンスターを倒すゲームが一般的かもしれないが、本作の攻撃手段は銃器である。キャラクターの強さは、所持している銃や装備、そしてプレイヤースキルに強く依存する。宝箱などから手に入る銃は約200種類、ダンジョン内に登場する商人からコインを使って購入できるアイテムは100種類ほど登場するという。

初期装備の銃はそれほど威力が高いものではなく、マガジンの弾数も少なめで頻繁にリロードしなければならず、数発撃っては逃げるという動作を繰り返すことになる。しかし宝箱の中から強力な銃を手に入れることができれば、状況は一転し爽快さが増す。ただし、初期の銃以外は弾数に限りがあるので、無駄に乱射してしまわぬよう気をつけなければならない。どのような銃が登場するのか、興味のある方はトレーラーを見ていただきたい。トレイラーの28秒あたりから確認できる複数のミサイルの軌道を描く煙や、ネオンのように発光するレーザービームのうねりは見事である。ダンジョン内のライティングにも注目してほしい。じつは『Enter the Gungeon』は3Dで作られており、それを2Dに見せているのだという。この作業は開発で最も苦労したことだとDave Crooks氏は語った。

 

最大の魅力は“Dodge Roll”

トレーラーからは伝わらないであろう操作方法を紹介しておく。会場ではPS4コントローラーが用意されていた。まず左スティックで移動し、右スティックを使えば照準の向きを変更できる。これはどちらも360度に対応している。×は調べる・買う・テーブルを倒す、□は弾のリロード、○はローリング、△は銃の持ち替えだ。L1にもローリングが割り当てられており、L2を押せばダンジョンのマップが表示され、そしてメインとなる攻撃はR1、敵を弾き飛ばすボムなどの装備アイテムを使用するにはR2を押す。

「テーブルを倒す」だけでなく「ローリング」もプレイヤースキルが活きる。
「テーブルを倒す」だけでなく「ローリング」もプレイヤースキルが活きる。

上記した操作方法のなかで、おそらく気になるのは「テーブルを倒す(トレイラーの34秒あたり)」と「ローリング」だろう。「テーブルを倒す」は海外映画の銃撃シーンでよくある、テーブルを盾にする行動である。開発者が弾幕シューティング好きということもあり敵が放つ弾の数は多く、避ける操作に気をとられることが多いため、わざわざテーブルを利用するという機会は少ない。ただやっかいなことに、敵もテーブルを倒してこちらの攻撃から身を隠そうとするのだ。これによってゲームの難度はほどよく高くなっており、プレイヤーの腕前が活きる仕組みになっている。

「ローリング」は前転して攻撃を避ける、つまり“Dodge Roll”である。開発スタジオの名前にもなっているこの動きは、『Enter the Gungeon』においてとても重要であり、敵の攻撃を回避するだけでなく、落下ポイントを跳び越える際にも使用する。ゲームの序盤ではそれほど攻撃が激しくないため活用するシーンは少ないのだが、先に進むにつれL1か○ボタンを押す回数が増えていく。上下左右への移動だけではなく、「ローリング」を取り入れたことで、ダンジョン探索ゲームとは思えないスピーディな戦闘を堪能できるのだ。

Dave Crooks氏に『Enter the Gungeon』の最大の魅力についてたずねると、“Dodge Roll”という答えが返ってきた。通常の移動では避けきれないほどの弾がプレイヤーめがけて飛んでくる状況では、「ローリング」をタイミングよく繰り出して避けなければならない。この状況が連続して続くと、まるでリズムゲームを遊んでいるような感覚になり、極度に高揚した気分になるのだという。Dave Crooks氏は「ほかに似たようなゲームがあるかもしれないけど」と前置きしながら、「この要素だけは絶対に負けない自信がある」と力強く語った。たしかに実際に遊んでみるとそのとおりで、「ローリング」に慣れるほど一般的なアクションゲームでは得られない興奮を味わえた。ぎりぎりのタイミングでの回避を連続して成功させると、誰だって気分が高まるはずだ。そういったゲームが好きならば、今後注目すべきタイトルのひとつといえるだろう。ちなみに「Gungeon」はスラングでもあり、その言葉を調べれば本作の魅力を理解しやすくなるかもしれない。

登場するキャラクターはどれもかわいらしく、年齢問わず遊べるゲームであると感じた。ゴア表現はなく、ブースでは子供たちが楽しそうに遊ぶ姿を何度か確認できた。

 

BitSummitに来場したゲーマーはレベルが高い

Dave Crooks氏は『Enter the Gungeon』を6回ほどショーに出展したことがあり、なかでもBitSummitのゲーマーはプレイヤーレベルが高いと感じたそうだ。すこしだけ遊び方を教えると、または何も説明しなくとも、ほとんどのプレイヤーが次々とダンジョン奥深くに進んでいったことに驚いたと笑顔で語ってくれた。疲れもあってか少々ナチュラルハイだったが、ゲーム内容と同じくとても明るい方だった。

日本語に対応するかどうか聞いたところ、「もちろんできれば対応したいけど、ゲーム内のすべてのテキストがまだ完成していない状態だから、今はなんとも言えないよ」という回答だった。『Enter the Gungeon』は2016年にPlayStation 4/Windows/Mac/Linux向けに発売が予定されている。会場ではシングルプレイのみだったが、最終的にはローカルマルチプレイヤーに対応するという。