美しきピアノの旋律で「雪の地獄」を描く2Dアクションアドベンチャー『Pinstripe』、散弾銃を片手に父親が”神”から娘を取り戻す物語


発売前や発表されたばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第232回目はアクションアドベンチャーゲーム『Pinstripe』をピックアップする。

『Pinstripe』は、神を名乗る謎の人物にさらわれた娘「Bo」を助け出すため、主人公である父親の「Teddy」が地獄へとおもむくアクションアドベンチャーゲームだ。本作における地獄とは、一般的にイメージされる赤い炎に包まれた煉獄だけを指すわけではなく、凍えるような寒さの地獄などもまた物語の舞台になるのだという。Teddyはショットガンを片手に未知のモンスターを撃退し、パズルを解き、奇妙でクセのあるキャラクターたちの助けを借りつつ、地獄の奥深くへと進んでいく。地獄をさまよう中で、Teddyは自身の知られざる数々の過去を目の当たりにし、“自分は父親に値するのか”という問題と直面する。単なる雰囲気だけに頼った作品では無く、キャラの内面も深く掘り下げられるようだ。

開発を担当しているのはThomas Brush氏。Brush氏はすでに『Pinstripe』を4年以上ひとりで開発し続けているのだという。氏は大学時代から『Coma』や『Skinny』といったFlashゲームを開発してきた実績を持つ。これらのゲームは独特な雰囲気が高い評価を呼び、さまざまな賞を受賞した。本作もBrush氏が大学時代から開発を進めていたようだが、氏は卒業と同時に会社へ就職。そののち結婚し、家庭を持つ身となった。仕事に出る前の朝や深夜など、空いた時間をゲーム開発に注ぎ込んでいるようだ。現在の開発進行度は60%。会社を退社し、新たな開発メンバーを迎え入れ、2016年夏の発売にむけて急ピッチで開発を進められるよう、現在はKickstarterにてクラウドファンディングを実施している。

Brush氏は、シンプルな操作でありながらも雰囲気やストーリーに没入できるゲームを当初から目指し、『Pinstripe』の開発を続けてきたと語る。地獄を探索するというのが本作のテーマだが、あくまで子どものような気持ちで楽しくプレイできるという。さらになんといっても、美しい音楽だ。これまでの作品でも好評を博していたBrush氏自身が作曲する音楽は、『Pinstripe』の地獄の世界にはかなくも美しい彩りを与えている。クラシックピアノを多く用いたその音楽は、本作を作り上げるうえで鍵となる要素であると氏は語っている。SoundCloudではゲーム中に使われる楽曲の一部を公開中だ。

Brush氏がこれまで開発してきた4年間は決して順風満帆ではなかったようで、「ゲームが完成する前に他人に大言壮語を吐かない方がいい」「ひとりでのゲーム開発は孤独で苦しい」といった心中をGamastraのコラムで告白しているので、そちらもチェックしてみてほしい。

ちなみに本作はKickstarterの目標額である2800ドルを開始1週間待たずして突破し、23日17時現在では6000ドル以上のファンディングに成功している。リリース時期は前述のように2016年夏、対象プラットフォームはPC/Mac/Linuxが予定されている。