ネオ東京の地下鉄ホームで大乱闘、マルチプレイ乱戦アクション『Hyper Jam』開発元にその魅力を訊いた


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第323回目は『Hyper Jam』を紹介する。

オーストラリアに拠点を置くインディースタジオBit Dragonが、1980年代をテーマにしたサイバーパンクなマルチプレイ乱戦アクションゲーム『Hyper Jam』をWindows向けに開発中だ。本作はSteamでの販売を目指してSteam Greenlightに登録され、十分な支持を集めてすでに通過している。

本作は最大4人までのローカル・マルチプレイに対応している。ネオ東京の地下鉄ホームやマイアミのホテル屋上などを舞台に、ロケットランチャー・クロスボウ・ハンマー・刀などの武器を使用してバトルロワイアル形式で戦う。対戦相手にダメージを与えたりコンボを重ねるとポイントを獲得でき、体力がゼロになって倒れてしまうとそのポイントは失われる。そして規定ポイントに最初に到達したプレイヤーがそのラウンドの勝者となる。

本作の最大の特徴がパワーアップ(PERK)システムだ。ラウンドが終了するごとに最下位のプレイヤーから順番にパワーアップを選択する。15種類以上のパワーアップが存在し、攻撃力の強化や体力の最大値上昇など、さまざまな効果をプレイヤーに付加することができる。パワーアップの効果は1ゲームを通してすべて維持されるため、ラウンドを重ねるごとにキャラクターはどんどん強化されていく。なお1ゲーム内のラウンド数や、使用できるパワーアップや武器の種類、回復アイテムの登場の有無などは設定で変更可能だ。

ゲーム中には4人のプレイアブルキャラクターが登場する。自らのルールに従って行動する復讐に燃えるマッチョ男MAX、夜の街に現れては人々に恐怖を与える謎の男GHOST、Fukushū一家の末裔と噂される賞金稼ぎの女暗殺者YUKI、穏和な性格だが自ら手を汚すことをいとわないマイアミのギャングVANCE。それぞれ異なる魅力を持ったキャラクターたちだが、ゲームプレイにおける初期性能に違いはない。

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本作を手がけるBit Dragonは2015年に大学の仲間が集まって設立され、本作の開発を始めたそうだ。今回、リードプログラマーRoman Maksymyschyn氏にお話をうかがった。

 

――本作は1980年代をテーマにしているということですが、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

Roman Maksymyschyn氏(以下、Maksymyschyn氏):
『Hyper Jam』は元々『Reincarnage』というタイトルで、ふたたび人間に戻るために戦うゾンビのゲームだったのです。ゲームプレイ自体は楽しいものに仕上がってきていたのですが、開発が進むにつれてこのテーマはどうもフィットしていないと感じるようになりました。そこで私たち自身が普段の生活で何を楽しんでいるのかを見つめ直すことにしました。

私たちはゲーム『Hotline Miami』や映画「Kung Fury」あるいはシンセウェイヴ音楽など1980年代をテーマにした作品の大ファンでした。そのことに気付いてすぐに、向かうべき方向性はこれだと確信したので、ゲームをいちから作り直すことにしたのです。

――マルチプレイ乱戦アクションというジャンルを採用していますが、なにか参考にしたゲームはありますか?またこのジャンルにおいて本作がユニークであると考える要素は何でしょうか。

Maksymyschyn氏:
私たちはローカル・マルチプレイのゲームが大好きで、スタジオでは『Towerfall』『Samurai Gunn』『Duck Game』などたくさんのゲームをプレイしています。これが『Hyper Jam』をデザインするにあたって何が機能するか、あるいはしないかを判断する目を鍛えることになりました。

本作がほかのゲームとは違う点を挙げるとすれば大きく二つあります。まず一つ目は効果を重ねていくことができるパワーアップ(PERK)システムです。これによってゲームをプレイするごとに異なった体験になります。

二つ目は、バトル表現の力強さにこだわっていることです。ダメージを受けたらただ体力バーが減るというのではなく、攻撃一発一発のインパクトが強力に感じられることが重要です。たとえばノックバックのアニメーションにも物理的な説得力を持たせることなどで表現しています。

002――4人のキャラクターはどれも魅力的ですが、日本人としてはYUKIとネオ東京ステージに興味を持たずにはいられません。これらはどのようにして生まれたのでしょうか。

Maksymyschyn氏:
ネオ東京ステージに関しては、さまざまなものを参考に調べているうちに、本作の未来感・サイバーパンクな一面をより強く打ち出すためには最適なロケーションになると判断しました。本作がテーマにしている1980年代の雰囲気にもすんなりフィットしたと思います。

そして、このネオ東京にはどのような人が住んでいるのだろうと思い描くうちに、YUKIというこの世界にぴったりなキャラクターができあがり、プレイアブルキャラクターとして登場させることにしたのです。

――プレイヤーが4人以下の場合、Botを入れてプレイすることはできますか?また、オンライン・マルチプレイへの対応についてはいかがでしょうか。

Maksymyschyn氏:
『Hyper Jam』は私たちの処女作です。予算が限られていますので、オンライン対応など時間のかかりそうな要素に手をつける前に、まずはゲームのコア要素をしっかりと作ることに集中しています。

ですが、オンライン対応やBot対応などは将来的にはぜひ導入したい要素です。もし本作がたくさんの支持を集めることができたら、間違いなく実現するべく検討に入るでしょうね。

――1ラウンドはだいたいどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか。またほかのゲームモードはありますか?

Maksymyschyn氏:
1ラウンドは大抵の場合はおよそ1、2分で決着がつきます。そしてデフォルト設定だと1ゲームはおよそ10分ほどで終わることになります。

現在のプロトタイプではバトルロワイアルのみですが、チームデスマッチやキングオブザヒルといったゲームモードを追加することを検討しています。できれば発売前には実装したいですね。

――キャラクターや武器、パワーアップ、あるいはステージの追加は計画していますか?個人的にはネオ東京の別のエリアも見てみたいです。

Maksymyschyn氏:
本作は後からコンテンツを追加することができるように設計しています。発売時にそれぞれどういったラインナップになるのかまだ確定していませんが、ぜひ拡張させていきたいですね。ネオ東京は美しい場所ですので、別のエリアを追加することもありうると思いますよ。

PAX Australia『Hyper Jam』ブースの様子 Image Credit: Hyper Jam Facebook
PAX Australia『Hyper Jam』ブースの様子 Image Credit: Hyper Jam Facebook

――PAX Australiaに本作を出展されていましたが、プレイヤーの反応はいかがでしたか?

Maksymyschyn氏:
PAX Risingエリア(オーストラリアとニュージーランド発のゲームがメインのエリア)への出展は今年が初めてで、本作がどのように評価されるのか少し不安でしたが、ありがたいことにプレイ待ちの列ができるほどの大盛況でした。

私たちが一生懸命に作ってきたゲームをたくさんの人たちが楽しんでくれている様子を見ることができたのは本当に素晴らしかったです。友人と協力し合ってプレイしたり、笑顔でブースを後にする姿を見たときは、私たちがゲーム開発を始めた原点を思い出しました。そしてなんとしてもこのゲームを完成させなければと、あらためて決意させてくれました。

――マイクロソフトXbox事業責任者のPhil Spencer氏もブースを訪れてプレイされていたそうですね。コンソール版の発売は視野にありますか?

Maksymyschyn氏:
信じられない光景でした。嬉しいことにPhilは私たちのゲームをとても気に入ってくれて、会場に来ていたXbox関係者全員にプレイさせていました。

コンソールでの発売についてはかなり優先度を高くしています。本作は友達同士がリビングに集まって楽しんでもらうことを想定してデザインしているので、コンソールで発売しない理由はないでしょう。

ソニーと任天堂とコンタクトを取ることは簡単ではないのですが、今も取り組んでいますので時間が解決してくれることを期待します。

――本作が日本語に対応する可能性についてはいかがでしょうか。

Maksymyschyn氏:
先程も述べたように、現在は本作のコア要素の構築に注力していますので、ローカライズに関してはまだ何も決まっていません。ですが誰もがこのゲームを楽めるようにしたいので、ぜひ対応させたいですね。

――最後になりますが、Steam Greenlight通過おめでとうございます。Steamでの発売時期はすでに決まっていますか?

Maksymyschyn氏:
ありがとう。Steam Greenlightに登録する前日はPAX Australiaの初日だったのですが、ポジティブな評価をたくさん得ることができました。本当にナーバスになっていたのですが、3日も経たないうちにSteam Greenlightを通過することができて報われた気分です。みなさん本当にありがとう!

まだ発売時期は決まっていないのですが、すべて順調に進んだら2017年の中頃には発売できるのではと考えています。また、2017年前半にはクローズドベータテストを実施するかもしれません。

――ありがとうございました。

本作の1ラウンドの所要時間は1、2分程度ということで、ハイペースにパワーアップを重ねていって派手なバトルに発展させようというゲームデザインであることがうかがえる。SNSなどで彼らに寄せられるコメントを見るとオンライン対応を望む声は少なからずあるようだが、彼らもやぶさかではない姿勢なのでいずれは実現するかもしれない。まだ開発途中であるため、ステージや武器などのボリュームを含め全体像はまだつかみにくいが、単調にならないようリプレイ性を高める発展を期待したい。