2015年以降に注目を浴びるかもしれない 未来の名作インディーゲーム5選

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最前線のインディーゲームを紹介してゆく週刊連載Indie of the Week。未来の名作たちを紹介してきた2014年も、終わりが近づきつつある。2015年は、Dennaton Gamesの『Hotline Miami 2: Wrong Number』を皮切りに、Hello Gamesの宇宙自動生成ゲーム『No Man's Sky』、さらには2013年Kickstarterで成功を収めた『Hyper Light Drifter』などが発売される予定だ。しかしこれら注目作ばかりではなく、2015年以降もインディーゲームは星の数ほど登場する。筆者の心を、そして読者の心も震わせるかもしれない、未来の名作たち5本をあらためてチェックする。

 


音の砂遊び

 

 

現在アルファテスト中の『Muse』は、筆者がもっとも注目しているリズムゲームだ。開発を手がけるのはCurrent Circus。グラフィックスを見ると『Rez』や『Child of Eden』を想起させるが、同作は自由度の高いオープンワールド型"音楽探索ゲーム"である。『Rez』などをタイミングに合わせて手拍子する作品だと表現すれば、『Muse』は探索しながら音に触れ、音楽を構築する作品だといえる。

舞台となるのは「MusicZone」と名付けられた広大な3D空間。プレイヤーは360度自由に動きまわり、空間の中を泳ぐ9種類の"ミュージカルクリーチャー"を集めてゆく。クリーチャーはそれぞれがバスやキックなどの音を有しており、集めることで自動的にメロディラインが生成される仕組みだ。高品質の音源を搭載した自動生成オーディオエンジンにより、ながらプレイでもそれっぽい曲ができあがるのである。

この"それっぽい"で留まるのが『Muse』最大の特徴である。クリーチャーを再構築したり、Voice Randomizerを通り抜けて音のパレットを転調させたりと、プレイヤーはそれっぽい曲から"いい曲"にするためブラッシュアップを続ける。音に触れて遊びたいという好奇心を満たしてくれる『Muse』は、音の砂遊び場といったところだろうか。独創的かつ自由度の高いリズムゲームであり、完成が待ち遠しい作品だ。

紹介記事: 『Muse』オープンワールド・サンドボックス・リズムゲーム

 


香港ノワール・ガンアクション

 

The Hong Kong Massacre』は、開発スタジオVreski Gamesが2014年2月にTIGForumsにて発表したタイトルだ。ジャンルは見下ろし型のガンアクション。わかりやすい類似作を挙げるならば『Hotline Miami』だが、『The Hong Kong Massacre』の風味は香港ノワールである。ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』が好きなら、真っ先にトレイラーをチェックすべきだ。

ゲームの目的は、ロシアン・マフィアを皆殺しにするのではなく、トライアド(香港におけるマフィアや暴力団)のヘッドを抹殺すること。プレイヤーは香港各地で戦いを繰り広げつつ情報を入手し、ターゲットを少しずつ追い詰めてゆく。『Hotline Miami』に勝るとも劣らない過激なガンアクションが『The Hong Kong Massacre』の持ち味ではあるが、暴力への欲求を解き放つ処刑アニメーションなどはない。血みどろの戦いに花を添えるかのような、香港ノワールお馴染みのスローモーション演出は美しい。

筆者がもっとも期待するインディーゲームであると同時に、残念ながら2014年2月の発表から大きな続報がないタイトルでもある。肝心のバレットタイムについての詳細は明かされておらず、作品が完成にこぎつけるかも不明だ。しかし、2012年の『Hotline Miami』に続いて、バイオレンスジャンルの新星になる可能性を秘めている。

紹介記事: 『The Hong Kong Massacre』 香港ノワールを添えた『Hotline Miami』

 


失敗すら楽しいゴッドジェンガ

 

現在ベータテストが実施中の『Fate Tectonics』は、筆者がもっとも注目しているパズルゲームだ。説明を聞くと複雑に思えるかもしれないが、その軸にあるのは『ジェンガ』などの"バランスゲーム"と、『ポピュラス』のような"ゴッドゲーム"である。1つ1つのパーツから世界を積み上げてゆき、バランスが崩れると一気に崩壊してしまう。バランスゲームの繊細さと豪快さを、ゴッドゲームの要素とともに楽しむことができる。

ゲームの舞台となるのは、まだ世界が創造されていない無の漆黒空間だ。プレイヤーは神々とともに、草原や川などで構成されたタイルを配置し、大地と海を創りあげてゆく。隣接する地形と異なるタイルを置くと強度が低下し、タイルは繋がることなく剥がれ落ちてしまう。一箇所でタイルが剥がれ落ちると、周囲のタイルの強度も低下してしまうため、一気に連鎖して世界が崩落する危険性がある。

失敗しても面白いパズルゲームであるのが『Fate Tectonics』の特徴だ。Monthly Indieで紹介したように、アーティストのRosemary Brennan氏が手がけるドットビジュアルは、見事なアニメーションであなたの世界が一挙に崩れゆく様子を描いてくれる。それを見て去来するのは、賽の河原で延々と石を積みあげる無力感ではない。自分の乗せたピースで『ジェンガ』が一気に崩れ落ち、思わず笑ってしまうような爽快な失敗感である。

紹介記事: バランスパズルゴッドゲーム『Fate Tectonics』世界崩壊の美学

 


家政婦から見る戦争アドベンチャー

 

死期が迫った老婆の孤独を見る『The Graveyard』や、赤ずきんちゃんをテーマに描いた『The Path』など、一味違う作品を生み出し続けている開発スタジオTale of Tales。もし同スタジオが戦争をテーマにした新作を手がけたなら、いったいどのようなゲームが生まれるのだろうか。『Sunset』は、主人公が英雄や兵士ではない戦争アドベンチャーゲームだ。一般市民の生存戦争を描いた『This War of Mine』は記憶に新しいが、同作はより傍観的であり、主人公はただのハウスキーパー、家政婦である。

時代設定は1972年。舞台となるのは南アメリカの架空都市。プレイヤーはハウスキーパーのAngela Burnesとなり、芸術を愛する裕福な男Gabriel Ortegaの部屋を清掃する。毎週、日が落ちる1時間前に高級マンションへ向かい、一人称視点でアパートの一室を清掃する。銃弾が飛び交う戦場は登場せず、戦闘要素やパズルすらも存在しない。ハウスキーパーの日々の仕事を体験して、戦争を見届けることになる。

『Half-Life 2』や『Call of Duty 4: Modern Warfare』、『Crysis 2』などの戦争ゲームを見て、「NPCは日々どのような生活を過ごしているのだろうか?」と思い始めたのが、『Sunset』の着想になったという。Tale of Talesの過去作とは異なりファンタジーな作品ではないが、いったいどのような仕掛けを用意してくるのか、2015年の発売が待ち遠しい。

紹介記事: E3カンファレンスのインディーシーン、Microsoftとパリティ

 


人民の陳情に応える政務シミュレーション

 

Brave At Nightが開発中の『Yes, Your Grace』は、入国管理ゲーム『Papers, Please』などに影響を受けている作品だ。年の瀬にKickstarterにて集めた額は7192ポンド(約134万円)止まり。ほかの成功プロジェクトと比較すると、それほど大きな注目を集めているわけではない。影響元と挙げている『Papers, Please』の二番煎じに終わる可能性もあるだろう。しかし『FTL: Faster Than Light』のような、一見地味ながらも素晴らしいインディーゲームの"匂い"も放っている。

『Yes, Your Grace』は、王の政務にスポットを当てたシミュレーションゲームだ。プレイヤーは王国Davernの王Erykとなり、危機を迎えつつある王国Davernを導いてゆく。食料や資源を生産し、それぞれの村や生産拠点に配分する。徴兵して兵力を蓄え、鉄工場で装備を強化し、他国との戦争に備える。外交、策略、モンスターの襲来、食料不足、一揆の発生……様々な政務と苦難が、プレイヤーを待ちうけている。

本作のメイン要素は、人民たちへの対応である。『Papers, Please』のように、日々行列を成してやってくる人民たちが、次々とプレイヤーである王に無理難題を押し付けてくるのだ。兵力や資源が限られているなか、いかにして彼らの欲求を叶えるのか、あるいはその願いを切り捨てるか。日々の何気ないやり取りや決断が、王国Davernの物語を生み出してゆく。ゲームデザインの根幹は影響元とまったく同じだが、それが王と人民になるとどうなるのか、興味深い。

紹介記事: 『Yes, Your Grace』人民の要求を捌く 王の政務シミュレーションゲーム

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。