音を通して花を愛撫しオーガズムに導く音楽ゲーム『Luxuria Superbia』

 

毎週誰かの心を震わせるかもしれないインディーゲームをピックアップしていく【Indie of the Week】。寒波が国内各地を白銀色の世界に染めあげた2月第2週目は『Luxuria Superbia』を取り上げます。今年1月後半にも Steam でのリリースが実現した同作。国内メディアらがあまり詳しく取り上げていないことで逆に興味が湧いたものの、ゲームを体験してみるとそれも納得。同作は 「音を通して愛撫するゲーム」で、もしプレイしていたとしても普通のサイトではまともに紹介できないであろうアダルトな一品でした。

さて先月紹介した無形アクションゲーム『Mushroom 11』と同様に Independent Games Festival 2014のファイナリストに選出。革新部門に当たる Nuovo Award に選出された『Luxuria Superbia』は、ベルギーのスタジオ Tale of Tales によって開発されました。Tale of Tales は国内では赤ずきんちゃんを題材にした『The Path』や、老婆が灰色の世界を揺蕩う(たゆたう)『The Graveyard』の開発元としても有名で、一言で表すならば一般的な枠にとらわれないアート全振りなゲームを輩出しているスタジオです。

さて筆者と言えば前述の2作は適当にしかプレイしたことありませんが、水口哲也氏の『Rez』や2013年にPC版リリースの『Dyad』、または『Dear Esther』よりも『Proteusu』 が面白いと考えている音の世界の信奉者であり、『Lixuria Superibia』に興味をもったのもそのルートでした。結論から言えば同作は「官能音楽ゲーム」でありはてしなく淫靡。昨年スマートフォン向けにリ リースされた際、無知な自分が気付かなかったことを大きく悔やんでいます。

 


音を介して花をオーガズムへ導く

 

『Luxuria Superibia』はダイヤル操作で「Garden(庭)」に存在する花を選択し、その花の中の世界を音を介して突き進んでいくという、花との擬似セッ クスを音を通して楽しむタイトルです。プレイヤーは花を突き進む中で各レーンに設置された「幼い芽」をタッチし、それぞれのレーンを着色させつつオーガズ ムに達することを目指します。各芽は触れることで音を鳴り響かせ、また色付きが濃くなるほどにBGMは盛り上がり、甘い吐息が両耳から漏れ聞こえてきま す。

実際の「それ」と同じように、ただ幼い芽をタッチし続ければ良いというわけではなく、『Luxuria Superibia』では各レーンの着色が過剰にいき過ぎないよう力加減を調整しつつ、スコアが上昇した後に一気に花をオーガズムへ導く必要があります。 画面左上部に表示された3つのリングは快楽の段階を示唆しており、プレイヤーは適度に芽に触れつつこの3つのリングを満たしてから、タッチ操作を一気に ヒートアップさせ頂点を迎えるのです。

 

左上部に見えるリングを満たす度に花の中の世界は激しく収縮し達する。 画面上には甘い言葉、両耳には徐々に盛り上がっていくミュージックと溶けた吐息が投げかけられる
左上部に見えるリングを満たす度に花の中の世界は激しく収縮し達する。

画面上には甘い言葉、両耳には徐々に盛り上がっていくミュージックと溶けた吐息が投げかけられる

 

 

白色で表示された「冷たい芽」に触れると各レーンに付いた色が消え去り「冷める」という戦略性を有する以外は、基本的に『Luxuria Superibia』は困難なチャレンジ性を有する難易度の高いゲームでは無く、その世界観と音楽、そして特有のプレイフィールを満喫する作品となってい ます。着色するにつれ盛り上がっていく音色と吐息、プレイヤーが甘い操作感に酔いしれているとそれに呼応して蠢く花の内。オーガズムに相当する各レベルの 最終パートは、相手を快楽に導くセックスと同等の満足感が得られるでしょう。たとえ現実世界で誰かをイかせたことがなくとも。

なお最終ステージは『Rez』のArea 5にも相当するような興奮と色彩感を放っており、1週するだけならばおよそ1時間にも満たずプレイは終了するものの、数ドルを支払ってクリアすれば十分な 多幸感と満足感を得られるのではないでしょうか。筆者はPC版よりも直接触れる感覚を堪能できるスマートフォン版でのプレイをオススメします。2014年 が始まって1ヶ月と少し、個人的には(PC版リリースという無理なくくりではあるものの)早速今年の Top 10に入るゲームが登場したという感じで、興味がない人も童貞ゲーマーもぜひ触れてみてほしいタイトルです。

 

 


初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。