VivendiのUbisoft株式保有率が25%を超える。30%に到達すれば株式公開買付けを実行可能


フランスの巨大メディア企業Vivendiは12月7日、Ubisoft株式の保有率が25%を越えたことを発表した。具体的には株式資本の25.15%、議決権の22.92%をVivendiが占めている。株式保有率が30%に達すれば、フランスの法律上Vivendiは株式公開買付けを実行できる。

Vivendiがフランス金融市場庁(Autorité des Marchés Financiers)に提出した今後半年間の計画書では、引き続き市況に応じたUbisoft株式の購入を検討していると述べている。またUbisoftの取締役会の構成が、Vivendiの保有する議決権の割合を正しく反映するよう、役員の再選任を望んでいる。ただしUbisoftを自社の支配下に置くことや、企業買収のための公開買付けは検討しておらず、両社に取って有益な関係を築くことを望んでいるという。どこまでを文面通りに受け取るかは悩ましいところだろう。

Vivendiが初めてUbisoft株式を取得したのは2015年10月。当時の持分は6.6%にとどまっていたが、今年6月には20%、11月には24%を超えるなど着実に影響力を強めつつある。今年6月にはUbisoft傘下のモバイルゲーム開発会社Gameloftに対する敵対的買収に成功し、Ubisoftに買収を仕掛けるのも時間の問題とされている。こうしたVivendiの動きに対し、Ubisoft側は今年9月に開催された株主総会で自社株式の3.2%を買い戻しており、両社の長期に渡る攻防戦は途絶えることなく続いている。なお9月の株主総会ではUbisoft CEOのYves Guillemot氏およびUbisoft Motion PicturesのCEO Gerard Guillemot氏が取締役員に再選している。Vivendiからの候補は選任されていない。

Yves Guillemot氏は今年6月、Vivendiによる敵対的買収に備え、他社との合併も計画の中に入っていると語っていた(参考記事:CNBC)。それだけVivendiによる買収は避けたいということだろう。同記事によるとGuillemot氏は、Vivendiのビジネス手法はゲーム業界にそぐわないとも述べている。この姿勢は一貫したものであり、gameindustry.bizが入手したUbisoftの社内メールでもGuillemot氏は同様のメッセージを従業員に向けて発している。今年9月の株主総会前には、Ubisoftがカナダ・ケベック州政府に協力を求めていたことからも、VivendiがUbisoftの経営に関与することは何としても阻止したい意向であることが窺える。

なおVivendiは決してゲーム業界と無縁であったわけではない。かつてはBlizzard EntertainmentとActivisionを合併させたActivision Blizzardを傘下に置いていた過去がある。Activision Blizzardは2013年、Vivendiから自社株を買い受けることで独立。Vivendiが最終的にActivision Blizzardの全株式(4150万株)を売却したのは今年1月。常にゲーム業界とは近い距離に位置していたことが分かる。Vivendiが実際に敵対的買収を仕掛けるのかは不明だが、Guillemot氏が9月の株主総会前に「彼らが株式を売却するまで我々が安心することはありません」と語っていたように(参考記事:gameindustry.biz)、今後も両社をとりまく話題は尽きないだろう。