『Paladins』バトルロイヤルモード「Battlegrounds」発表。独自アイデアを盛り込んだ後発タイトルは「バトロワ」に新たな風を吹き込めるか


Hi-Rez Studiosは1月4日に開催された「Hi-Rez Expo 2018」の基調演説にて、基本プレイ無料のチーム対戦型FPS『Paladins: Champions of the Realm』(以下、Paladins)に最大100人同時対戦型のバトルロイヤルモード「Paladins: Battlegrounds」を追加することを発表した。実装時期は2018年内を予定。既存のコンテンツと同様、基本プレイ無料のモードとして遊べるようになる。

『Paladins』は2016年9月にWindows/Mac向けの早期アクセス配信が、2017年3月にはPlayStation 4/Xbox One向けのオープンベータテストが開始された5対5のヒーローシューターである。大規模なバトルロイヤル形式のゲームモードというのは、同ジャンルのタイトルにとっては初の試み。Epic Gamesの『Fortnite Battle Royale』が「建設要素」を加えることで独自性を発揮したのに対し、「Paladins: Battlegrounds」は操作するチャンピオン(ヒーロー)毎に異なる固有アビリティを駆使して戦わせることで、バトルロイヤル・ジャンルの歴史に新たな1ページを刻もうとしている。

マップサイズは『Paladins』における通常マップの300倍以上。プレイヤーは時間の経過とともに狭まるプレイエリアにとどまりつつ、48箇所以上の探索ポイントから物資を集め、ツェッペリン飛行船から投下されるレジェンダリー装備入りのエアドロップを求めて死闘を繰り広げる。そして最後の生き残りとなったチームが勝利を手にする。基調演説では「チーム戦」であるという点が強調されており、ソロではなく、チャンピオン同士のシナジー効果を存分に発揮できる5人チーム体制で勝負に挑むことになりそうだ。

チャンピオンごとに異なる武器・アビリティを活用することが「Paladins: Battlegrounds」の特性だとすれば、マッチ中には何を収集することになるのか、気になるところである。他のバトルロイヤルゲームのように手ぶらでスタートし、マップを探索しながら個体別の武器・防具・アビリティを拾い集めていく形になるのだろうか。このあたりの詳細は続報に期待したい。なお、よく比較対象とされる『オーバーウォッチ』とは異なり、『Paladins』には乗用の生物が登場する。今回公開されたトレイラーでも乗馬中のチャンピオンの姿が映っており、新モードでも移動手段として活用できるようだ。

『Paladins』の次回大型アップデートでは新種のマウント用動物「Battle Cats」が追加される

『オーバーウォッチ』のクローンと揶揄されながらも頭角を現し、『PUBG』後の世界を生き延びるべく次なる一手を見せた『Paladins』。「Paladins: Battlegrounds」というゲームモード名に関しては、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』との類似性から「PABG」という略称を狙ったのではないかと勘ぐってしまうかもしれない。だがHi-Rez Studiosによると、「Battlegrounds」という名称は『PUBG』から着想を得たものではないとのこと(DualShockers)。また「Hi-Rez Expo 2018」の基調演説によると、今回のバトルロイヤルモードは過去にお蔵入りとなったサバイバルモードを改良し、復活させたものだという。

ちなみに『Paladins』では、1月11日(コンソール版は1月18日)の大型アップデートにて、新しい「チームデスマッチ」モード、新マップ「Trade District」、新チャンピオン「Moji」、マウント用キャラクター「Battle Cats」などが追加される予定だ(バトルロイヤルモードは2018年内に実装)。

 

2018年、バトロワ後発組の動きに注目

アップデートを重ねるごとに独自性を強めていく『Fortnite Battle Royale』。12月には敵が思わず踊り出してしまう新武器「Boogie Bomb」が追加された

2017年はバトルロイヤルというジャンルが再発見された年であった。その筆頭格はPUBG Corp.が開発する『PUBG』であり、後続作品ながら独自のトッピングを加えることで累計プレイヤー数3000万人越えを達成した『Fortnite Battle Royale』である。

そもそもバトルロイヤル、もしくは「ハンガー・ゲーム」形式のゲームモードというのは、『マインクラフト』や『Garry’s Mod』のModとして徐々に形成されていったものであった。そうした「ハンガー・ゲーム」インスパイアドModが乱立するなか、『Arma 2』『Arma 3』のバトルロイヤルModを通じて「空中からの降下スタート」「プレイエリアの概念」など現在主流となっているバトルロイヤルの原型、「ルールの組み合わせ」を確立させたことこそ、PlayerUnknownとして知られるBrendan Greene氏の功績であろう。そうした意味で、Greene氏はバトルロイヤル・ジャンルの生みの親として認識されはじめている。

そしてGreene氏はMod時代から『H1Z1』『PUBG』を経て、「PlayerUnknownモデル」のバトルロイヤルをメインストリーム化することに成功。その副産物というべきか、かつて『オーバーウォッチ』がヒットを飛ばした際クローンと思わしき作品が散見されたように、中国では『PUBG』のフォロワー作品が続々と誕生している。そうした現状を受けてか、Greene氏はジャンルの発展を願い、他のデベロッパーには完全なる模倣作品ではなく、独自性のあるバトルロイヤルゲームを生み出して欲しいとの言葉を残している(BBC)。

12月に最大同時接続ユーザ数300万人越えを達成した『PUBG』

クローン作品の乱立はGreene氏およびPUBG Corp.にとって懸念すべき事象だろう。ただクローンばかりではなく、今回のHi-Rez Studiosの発表のように、独自性を見出そうとする作品も発表されはじめている。ヒーロー選択型のバトルロイヤルという新境地に挑戦する「Paladins: Battlegrounds」のほか、トッピングではなく「大盛り」で差別化を図ろうとする最大400人同時対戦対応のサバイバルMMO『Project X(仮)』、テンセントが手がける環境破壊要素を特徴とした『EUROPA』などが例としてあげられる。2018年以降は、既存のバトルロイヤル・フォーミュラに新たな配合成分を加えることで、どのような化学反応が起きるのか、という実験的な試みが続くことだろう。

一方、少人数で争う「ハンガー・ゲーム」寄りの作品群としては、極寒地サバイバル色の強い『The Darwin Project』、セルシェーディングの3Dグラフィックが印象的な『Crazy Justice』、ボイスチャットによるプレイヤー同士のコミュニケーションを推奨する『SOS』などが発表されており、「PlayerUnknownモデル」とは別途、独自の進化を遂げていく可能性を秘めている。これまで「ハンガー・ゲーム」寄りのバトルロイヤルとして知られてきた『The Culling』がアップデート停止を発表したこともあり(関連記事)、今後はそうした野心的な作品がバトンを引き継ぐことになりそうだ。

『Crazy Justice』

新作に限らずとも、『Grand Theft Auto V』の「Motor Wars」、『Warface』の短期決戦型バトルロイヤルモード、『Dying Light』のPvP/PvEハイブリッド「Bad Blood」といった既存タイトルの新規コンテンツ/DLCという形でバトルロイヤルを取り入れる作品が続々と登場。Modシーンでも『Grand Theft Auto: San Andreas』の「PUBG Mod」、『Counter-Strike: Global Offensive』の「Go 4 The Kill」Modなど、PlayerUnknownモデルが浸透しつつある。2018年もバトルロイヤル・ジャンルはひとつのトレンドとして躍進を見せてくれそうだ。