『AKIBA’S BEAT』の北米版、「KKK」と書かれた看板が修正へ。ローカライズ担当者は不服を表明

XSEED GamesのThomas Lipschultz氏は4月26日、『AKIBA’S BEAT(アキバズビート)』の北米発売を5月16日に控え、日本版からのローカライズ面における変更点を公式フォーラムに投稿した。XSEED Gamesはマーベラスの傘下にあるパブリッシャーで、同社のタイトルに限らず日本のゲームを北米向けにローカライズして販売している。

『AKIBA’S BEAT』はアクワイアが手がけたアクションRPGで、国内ではPlayStation 4版が昨年発売され、先週27日にはPlayStation Vita版も発売された。精巧に再現された秋葉原の街を舞台に、永遠に繰り返される日曜日と、その中で起こる妄想による異変が描かれている。

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日本版からの変更点はさまざまあったそうだが、その中でも特記すべきものとしていくつかのキャラクターの名前と、街の看板の文字が挙げられている。それは作業上の都合で漢字の読みを事前に知らされず結果誤読していたものや(たとえば「娘田」を「にゃんだ」と読めず「むすめだ」とした)、開発途中で変更された文字が、北米版のマスターアップに間に合わなかったものなどがある。そして、そういった変更の中のひとつが議論を呼んでいる。

パロディであふれた本作の秋葉原の街

それはゲーム内の街中に掲げられている「KKK witches」という看板だ。本作は秋葉原の街を再現しているものの、実在の店舗名などは登場せず、似た雰囲気の名前をあてたパロディになっている(たとえば「ソフマップ」は「ホスマップ」に)。そしてこの「KKK witches」は、スイッチの製造・販売メーカーNKKスイッチズ株式会社の看板「NKK switches」のパロディだ。Lipschultz氏によると、この「KKK witches」という看板は北米版では「ACQ witches」に変更されるとのこと(ACQ はアクワイアの英語表記から。なお発売中の日本版に影響はない)。

問題視されたのは「KKK」の部分だ。KKKといえば、公然とヘイトスピーチをおこなうことで知られているアメリカの白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」が想起されるためだ。「KKK witches」だと「KKKが魔法をかける」とでも訳されるのだろうか。Lipschultz氏はローカライズ担当者としてこの看板を見つけた際、率直に面白いと感じたそうだ。しかし同僚にそう話してみたところ、同意する者はいなかったという。むしろプレイヤーの気分を害す可能性や、販売店がそういった議論を嫌って本作を取り扱わない可能性から修正されるべきだという意見が返ってきた。XSEED Gamesは取り急ぎアクワイアに「KKK」がアメリカで何を意味する言葉なのかを説明したところ、アクワイアはその看板がクー・クラックス・クランと関連して受け止められるとは思ってもみなかったとし、次のビルドで「ACQ witches」へと自ら修正したという。

海外版『閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-』

Lipschultz氏は長年XSEED Gamesでローカライズを担当し、海外PlayStation.Blogでの同社タイトルの紹介も任されているベテランだ。仕事で日本に住んでいたこともあるそうで、フォーラムへの投稿から日本文化への理解が深いことが伝わってくる。彼が問題の看板を発見したときに「面白い」と感じたのも、日本では英語の使い方が間違ったおかしな看板などが多く、それもまた日本を表現する一部分だと感じていたからだ。ゲーム内にはほかにもそのような看板があり、その中で「KKK witches」という看板があったところで、笑いこそすれ一体誰が気分を害するのだ、と彼は語る。もちろん「Join the KKK(KKKに加入しよう)」などといった内容であれば修正もやむなしだが、ただ「KKK」とあるだけで修正を求めることにLipschultz氏は反対だった。もともと彼はローカライズにおける規制(Censorship)を嫌っており、セクシーな描写で知られる『閃乱カグラ Burst -紅蓮の少女達-』のローカライズを手がけた際には、会社の判断で“若すぎる”少女たちの年齢がプロフィールから削除されたことに反発していた。芸術は、誰かの気分を害するかもしれないなどという理由で規制されるべきでないという考えだ。

今回の「KKK witches」の修正とLipschultz氏の説明に対しては、修正する必要はなかったと彼に賛同する意見もあれば、ビジネス上の理由で修正したことは理解できるとする人もいる。また、アクワイアが意図した本来のパロディを無視してクー・クラックス・クランと結びつけ、(全体として意味をなさない前提で)それが面白いと感じて修正すべきでないと主張した彼に反発する声もある。Lipschultz氏も、販売店に配慮したビジネス的な判断には理解を示しているが、ローカライズの観点からは受け入れられないという立場だ。しかし、これもまた独りよがりだとの反発を招いている。

結局Lipschultz氏は不本意に修正されたため、本作のクレジットから自身の名前を外すよう会社に求め、了承されたという。ただし同社のポリシーとして、一度抜けると将来発売するゲームにもクレジットされないことになるとのこと。奇妙なポリシーだが、Lipschultz氏はそれでもかまわないとし、今後は“ニンジャ・ローカライザー”として影から規制と戦っていくと語っている。

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