ユーモアと狂気に満ちたDevolver Digitalの世界。拍手喝采、鮮血飛び散るセンセーショナルなE3発表会まとめ

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Devolver Digitalは6月12日、「E3 2017」の開催にあわせてプレスカンファレンス「Big Fancy Press Conference 2017」を実施した。開催前にはTwitterの公式アカウントにて「新作発表なし」「収益化モデルの発表連発」というデンジャラスな香り漂う事前告知によりファンの期待を煽っていたDevolver。そして待ちに待った当日、彼らが手がける過激でバイオレントな作品群に負けないくらい、いや、それ以上にクレイジーでサイケデリックなビデオ・カンファレンスに踏み切ってくれた。

配信開始とともに登壇したのは、「チーフ・シナジー・オフィサー」という、胡散臭いビジネスマンがそれっぽい単語を適当に並べたような肩書きのNina Struthers女史(女優Mahria Zook氏が演じている)。いつまでたっても拍手が鳴りやまない浮かれた様子の観客席に向かって「お前らプロのジャーナリストだろ、静かにしろよ」と怒鳴り散らし、「Start with a bang」という定型句通りリボルバー銃でバンバンと空砲を鳴らすことでセンセーショナルなDevolver劇の幕を開けた。

この意味もなく手の込んだパフォーマンスに、子連れのファミリー層もスーツ姿のビジネスマンも大喜び。どうやら今回のカンファレンスは、2015年に亡くなった(ことにされている)Dave Lang氏(インディースタジオIron Galaxy のCPO) のメモリアル・コンベンション・センターで開催されているようなのだが(そういう設定)、とくに敬意を表すわけでもなく、あっさりと本題に突入する。

お茶目な愛されキャラとして有名なLang氏(実世界では存命)

序盤からなにやら興奮気味なNinaさん。彼女の演説は、カメラを小刻みに切り替える過剰な演出と、「最高に」「とんでもなく」といった単語を連呼することで誇張しようとしているけれど、実のところ中身が空っぽなフレーズの繋ぎ合わせでスタートする。おや、そんなカンファレンス、どこかで見たことある気がするぞ。そして彼女はこう語る。「今夜は特別な夜になるわ。皆さんにお見せしたいものが、知らせたいことが沢山あるの。その多くは皆さんの頭がぶっとぶようなイカした内容だし、その一部はあなたの親戚を怖がらせることでしょう。(中略)そして、そのどれもこれもが、皆さんが汗水たらして稼いだ金を、私たちに差し出してもらうために考え出された巧妙な手口なのです!」。ここで壮大な拍手と歓声が飛び交い、いかにも純粋無垢そうな観客たちが興奮の渦に巻き込まれる。

ゲーマーたちのピュアな笑顔が眩しい

「Devolver Digitalファンの皆様、ビデオゲームの未来を目撃する心の準備は良いでしょうか」。そう、カンファレンスのキャッチフレーズは「Tomorrow’s unethical bussiness practices today!(未来の非倫理的なビジネス・プラクティスを、今すぐ実現する)」である。期待が膨らむばかりだ。さて、客席を十分に沸かせたところで、新作『Ruiner』のトレイラーが流れる。最小限の情報開示にとどめた、泣けるほど短いトレイラーだ。これもまた、プレスカンファレンスあるあるの一つと言えるだろう。

この短く曖昧なトレイラーで観客を「Get hyped!」させた後は、Nina氏からステージを託されたMilo Lowrie氏による、無駄に情熱的で、ハンドジェスチャーの激しいスピーチとともにDevolverの新商品が発表された。「大好きなゲームにありったけの金を突っ込みたいけれど、それを実現する手段がない。そんなギャップに悩まされたことはないだろうか」。そう語るLowrie氏。Devolverの斬新な新発明「Devolver Digital Screen Pay」を使えば、なんと画面に向かって札束を投げつけるだけで入金が完了するという。とんでもない優れものだ。その効果は絶大で、実演のためにステージに呼ばれた観客が、興奮のあまりスクリーンに近づきすぎて、腕ごともぎ取られてしまう始末だ。ステージ外の観客はもちろん拍手喝采。

新登場のDevolver Digital Screen Pay
金を突っ込んで痛い目にあうゲーマー
これには家族連れも大喜び

続いて発表されたのは、Early Access(早期アクセス)を超える新たなプログラム「Devolver Digital’s Earliest Access」だ。これは未完成のコンテンツを突貫工事で世に送り出す画期的なプログラム。早期よりも早期にアクセスできる最早期アクセスにより、Devolver Digitalは新しいタイトルをこれまでにないスピードで消費者のもとに届けることができる。どれくらい早いかって?開発者の頭の中にアイデアが浮かびさえすれば、それはもうれっきとした商品なのだ。未完成のゲームを購入できるEarly Accessが人気なら、未着手プロジェクトという最高にEarlyなEarliest Accessならもっとウケるというわけだ。素晴らしい、革新的だ。このEarliest Accessプログラムはすでに始動しているとのことで、プログラム利用者の一人としてグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏がビデオ出演した。

なんらかのミスコミュニケーションがあった模様。残念

カンファレンスのトリとして発表されたのは、これまた斬新な新発明「Devolver Comment Created Content」。ゲーマーであれば、ゲームをプレイしながら「なんでこんな仕様なんだ」「俺だったらここを直すのに」といった苦言を呈した経験が一度か二度はあるだろう。では、そうしたゲームに対する苦情や思いつきが、実際のゲームに影響を及ぼすとしたらどうだろうか。

そう、この新発明を使えばフォーラムに書き込まれた仕様もない、ゲーム開発の実情なんて知る由もない一般消費者のいい加減な提案・批判がリアルタイムでゲームに反映されるってわけだ。ゲームが難しすぎるって?そう書き込めばいいのさ。気に入らない機能があるって?それもコメントひとつで消せる。「失恋をテーマにした最大16人オンライン対戦のデスマッチ型プラットフォーム・アクションゲーム」が欲しいって?それも可能だ。「Noob」だらけのサーバで、プレイヤーがゲームの方向性を左右する世界。さらにイカしたことに、こいつはもう一般公開済みで、有名どころのフォーラム・投稿サイトではもう採用されているときたからビックリ。すごすぎる、スタンディングオベーションものじゃないか。泡を吹いてぶっ倒れてしまいそうだ。

「今日お見せした内容はほんの始まりに過ぎない」。そう力強く語るNina氏の鼻から流れる鮮血と、目元からにじみ出る涙。「ゲーム業界の未来は、未来は未来は未来は未来は……」。

かわいい

Nina女史の口から最後の言葉が語られることはなかったが、彼女のメッセージは言うまでもなく明らかであろう。

最終的には頭が破裂してしまうNina女史であった
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