度重なる延期の末、9月に発売決定した『Cuphead』。ボス戦のみというゲームデザインを変更した背景は、ファンの声と開発者の大きな決断

先月開催されたE3 2017でStudioMDHRは、『Cuphead』を9月29日に発売すると発表した。E3 2014で初めて披露された本作は、CupheadとMugmanという、マグカップの頭をしたキャラクターが主人公の協力プレイ対応アクションゲームだ。活き活きとしたアニメーションや、古いブラウン管を通して見ているようなビジュアルは、「ポパイ」など1930年代のカートゥーンアニメから影響を受けたもので、その表現の完成度の高さから一躍注目作のひとつとなった。

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一方、本作は当初は2015年発売予定としていたが、延期を繰り返してファンをやきもきさせていた。この間、本作の開発状況はどのようなものだったのか、同スタジオの設立者であり本作のリードデザイナーChad Moldenhauer氏が海外メディアGamesRadar+の取材に応えている。

Chad Moldenhauer氏とJared Moldenhauer氏

StudioMDHRは、Chad Moldenhauer氏とJared Moldenhauer氏の兄弟が設立したスタジオだ。処女作となる本作の開発は2010年から始まり、兄弟のほかにJake Clark氏がアニメーション担当としてチームに加わっていた。2010年からとなると、E3で発表した段階ですでに4年もの歳月が経っていたわけだが、もともと週末にだけあつまって開発を進めていた小規模なプロジェクトだった。予算も限られていたため、あまり風呂敷を広げ過ぎないよう常に注意を払っていたそうで、ゲームの内容もいくつかの武器を駆使して何体かのボスと戦うという、いわば短いボスラッシュモードだけのゲームだった。しかし、2015年にE3などにプレイアブル出展したことによって、同スタジオは大きな決断を迫られることになる。

本作のデモをプレイしたゲーマーの反応は概ね好評だったそうだが、ボス戦のみというゲームデザインについて物足りなさを感じる人も中にはいたという。つまり、ザコ敵などを倒しながらアクションを駆使してステージを進み、そしてボスにたどり着くという、従来のゲームなら当たり前のように存在する要素を求める声だ。Chad氏らも、もともとはそのようなゲームにしたかったそうだが、小さなスタジオであるが故にあえて抑えてきたのは前述したとおり。しかしChad氏らは、自分たちが夢に描いていたゲームをゲーマーから求められている状況に心を動かされたという。

そういったゲーマーの声に応えるため、Chad氏らは一念発起する。開発に専念するためMoldenhauer兄弟は仕事を辞め、家を抵当に入れて開発資金を捻出し、チームの規模を20人にまで拡大していった。その時点でUnityと組み合わせて使う独自のゲームエンジンはほぼ完成しており、あとはステージのスクロールに対応するだけだった。ただし、本作の開発においてもっとも手がかかるのはアートワークだ。

ボスの海賊が口笛を吹くアニメーション。全51コマすべて手描きで描かれている。Image Credit: StudioMDHR

1930年代のアニメーションをゲームに落とし込むことを大きな特徴としている本作では、当時のアニメ制作と同じように鉛筆とインク、水彩絵の具を用いて、登場する全キャラクターのアニメーションのひとコマひとコマをすべて手描きで描いている。現代的なテクニックやソフトウェアを使用しないこともこだわりの一つで、ひとコマ前の絵をコピーして次の動きをつけるといったこともせず、すべていちから描くという徹底ぶりだ。そのため作業は膨大なものとなり、ひとつ新たなアクションを追加するにも事前に入念な計画を立てる必要があったという。また、長いステージを横スクロールしていくようにゲームデザインが変更されたので、シームレスかつマルチスクロールする背景もすべて水彩で描きなおされている。ゲームを拡張したことによる作業量の増加は外からはなかなか想像しにくいが、こうした話を聞くと度重なる延期も納得だろう。

こういったビジュアル面が注目をあつめる一方で、Chad氏らはキャラクターの動きやボタンを押した時のレスポンスなど、アクションゲームとしての手触りこそがもっとも大事な要素だと語る。そのため、『Gunstar Heroes』など同じようなジャンルのゲームを手本に研究を重ねたという。その上で歯ごたえのあるステージ構成や、画面を覆い尽くすような巨大なボスとの激しいバトルなどをデザインしていったそうだ。

『Cuphead』は9月29日にSteam/Windows 10/Xbox One向けに発売予定。日本語に対応して国内でも発売予定で、Windows 10/Xbox One向けには予約受け付けが開始している。価格は2350円(税込)。なお本作は2人協力プレイ対応だが、発売時点ではオフラインのみの対応となる。StudioMDHRによると、将来的にオンラインにも対応するかどうか今後検討するとしている。

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