コンソール3社、北米では例外なくレーティング取得が義務付けに。25年前に問題視された作品をパッケージ発売したことが影響か

Limited Run Gamesは9月21日、公式ブログにて「ESRB Statement」と題した投稿をおこない、同社がリリースするゲームとESRBレーティングについて説明した。同社はアメリカに拠点を置くパブリッシャーで、ダウンロードのみで販売されているゲームをパッケージ化する事業をおこなっており、現在はPS4/VitaおよびPC向けのタイトルを扱っている。その社名が示すとおりすべて数量限定生産で、自社サイトでオンライン販売している。ダウンロード販売の普及が進む中、モノとして所有したいゲーマーの支持をあつめているパブリッシャーだ(関連記事)。

日本ではパッケージ版が発売されていても、海外ではダウンロード販売のみという場合が多い。日本のゲームも扱っている

ESRBはEntertainment Software Rating Boardの略で、主にアメリカとカナダで流通するゲームを審査して、そのコンテンツ内容から対象年齢を判定する民間の非営利団体だ。日本のCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)と同じような組織だという理解で間違いない。

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投稿の内容はというと、これから同社が発売するタイトルはESRBのレーティング審査を受けて、パッケージに年齢区分マークを印刷するというものだ。店頭に並ぶゲームのパッケージには、アメリカであれ日本であれ年齢区分マークが当然のように表示されているため何故いまさらと思われるかもしれないが、実はメーカー自身がオンラインのみで小規模販売する場合はレーティングを取得する必要がなかったのだ。しかし、同社はその状況に変化があったと説明している。

Limited Run Gamesによると、ESRBは今年8月末にパッケージ版のゲームを対象にしたより低価格なレーティング審査制度を新設し、これを受けてソニー・任天堂・マイクロソフトのコンソールメーカー3社は、販売されるすべてのパッケージゲームにESRBのレーティング取得を義務付けたという。同社は、これによって増加するコストは同社および契約するデベロッパー側で吸収するため、販売価格には影響はないとしている。レーティングは基本的に、最初の申請時と異なる内容になる場合はあらためて取得しなおす必要があるため、すでに販売されているゲームであっても、プラットフォームや販売形態が変わる場合は再審査となる。ただそういった場合に、コンテンツの内容に変更がないのであれば低価格で審査を受けられるといったオプションが用意されることは予想できる。

その新制度についてESRBは公には発表していないので詳細はわからないが、これまでレーティング不要だったLimited Run Gamesなどがおこなっている事業を念頭に置くものなのではないか、そう感じさせるタイミングだ。というのも、同社は8月初旬に『Night Trap: 25th Anniversary Edition』のパッケージ版を発売したのだが、1992年に発売された同作のオリジナル版は、女性への暴力を想起させるシーンが含まれていたことでアメリカ議会上院で問題視され、それがきっかけでESRBが発足したという経緯がある(同年発売の『Mortal Kombat』も同じく俎上に上がった)。

同作のダウンロード版はESRBのレーティング「Teen(13歳以上対象)」を取得しており、残虐表現などのレベルが著しく高いというわけではない。しかし同作をめぐる業界としての“教訓”もあり、公に販売する以上は例外なくコンテンツの表現内容を明示すべきだとESRBや各コンソールメーカーが判断しても不思議ではないのではないだろうか。Twitterを中心としたSNS上でも、今回の新制度の導入の背景には『Night Trap: 25th Anniversary Edition』があるのではないかと噂されている。

『Night Trap: 25th Anniversary Edition』は全編実写ドラマのアドベンチャーゲーム。ハウスパーティーに招かれた女の子たちを、不審者が拉致しようと襲ってくる場面が25年前に問題になった

レーティングの扱いは国によって異なり、法律によって取得を義務付けている国もあればそうでない国もある。民間団体が審査している日本やアメリカは後者だ。しかし、各コンソールメーカーはパブリッシャーに対し、市場に流通させるゲームにはレーティングを取得するように求めている(PC向けにはレーティングを取得していないゲームも発売されているが、これはプラットフォームを統括する存在がいないため)。

PS4やXbox One用のゲームディスクやNintendo Switch用のゲームカード、あるいはそれらの専用パッケージなどの生産は、それぞれのコンソールメーカーを通じてでしかおこなえないため、レーティングの取得はパブリッシャーにとっては事実上の義務である(未レーティングだと大手小売店に取り扱ってもらえないという側面もある)。Limited Run Gamesが販売しているPS4/Vitaタイトルも、ソニーと契約したうえで指定の工場で生産しているため、事業を続けるためには今回の変更を受け入れざるを得ない。

年齢区分マークは、せっかくのカバーアートを時に台無しにしてしまう。Limited Run Gamesなどのファンの中には、その心配がないという理由で支持していた人も多い

Limited Run Gamesのような事業をおこなっているメーカーは日本にはないためピンとこないかもしれないが、海外ではいくつか存在する。たとえばLimited Run Gamesと協力関係にあるSpecial Reserve Gamesや、今年日本進出を果たしたiam8bitやFangamer。また『Retro City Rampage』で知られるインディーデベロッパーのVblank Entertainmentも、パッケージ版を自ら制作・販売している。これらのメーカーはいずれもアメリカを拠点にしているため、今後はLimited Run Gamesと同じくESRBレーティングを取得することになる。また、ゲームのパッケージ版をリワードとして提供するKickstarterなどでのクラウドファンディングキャンペーンでも、ESRBがカバーする国から出資を受け付ける場合はレーティングの取得を求められる可能性がありそうだ。

コンソール向けのゲームはレーティングを取得することが当然という状況であるため、今回の件は業界にとっても消費者にとっても決して波紋が大きく広がるようなものではないが、ゲームのレーティングにおけるひとつの出来事として興味深い事案である。

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