心霊映像を撮影し、電子音声現象を調査する異色のホラーアドベンチャー『Sylvio 2』Steam配信開始


スウェーデンのインディーデベロッパーStroboskopは10月11日、『Sylvio 2』の配信を開始した。対象プラットフォームはWindows/Mac(Steam)で、販売価格は1480円。10月19日までのプロモーション期間中は15%オフの1258円で購入できる。

本作は2015年6月に発売された1人称視点ホラー『Sylvio』の続編。前作は「レコーダーで録音した音声を再生・逆再生して霊の声を聞く」という斬新なメカニックが注目され、一部海外メディアで取り上げられたほか、TIGA Game Industry Awardsの「ベストオリジナルゲーム賞」にノミネートされるなど、一定の評価を集めていた。今作もジャンプスケアには頼らず、不穏な空気感とサウンドデザインに支えられた、ゾクッと鳥肌が立つような、静かなる恐怖がプレイヤーを待ち受ける。

 

白い霧と黒い土

主人公Juliette Watersは、マイクとテープレコーダーを使って心霊と交信する「ゴーストレコーダー」である(声優は前作と同じくMaia Hansson Bergqvist氏)。EVP(電子音声現象)を調査する彼女は、ある日、地滑りにより地下に埋まったアパートメントの一室で目覚める。彼女がどうやってそこにたどり着いたのか、前作の事件からどれほどの時間が経過したのか、記憶はない。

地上に出ると、そこは前作の舞台でもあった「Saginaw Park」の成れの果て。水没してしまったのか、あたり一帯は見渡す限り海。前作のような赤い霧ではなく、白い濃霧に包まれている。残された陸地は石炭のような黒い土壌に覆われており、ちょうどその頂上部だけが海面から顔を出した、グロテスクな様相の小島を形成している。そして島のそばには、蒸気船が停泊している。それも、隅から隅まで錆びついた状態で。すぐにわかることだが、この世界は、そのほとんどが朽ち、錆びついている。

 

死者の声に導かれて

無線機を手に取ると、船の持主であるWalter船長が応答した。Juliettteの恋人Jonathanが彼女を探しており、Walter自身は「灯台の島」で待っていると。操縦室には座標を記したメモが残されている。Jonathanと合流するため、座標を頼りに航海をはじめるJuliette。どの島も水没しており、生存者は見当たらない。彼女を導いてくれるのは、死者の声だけだ。

行く先々で心霊の声にマイクを向け、録音したテープを再生。早送り、巻き戻し、スロー再生を使い、静寂の中に潜んだ霊たちの言葉を拾う。その声が次の目的地を示すガイドとなり、その場所で何が起きたのかを知らせるストーリーテラーとなる。ときにはビデオレコーダーで撮影することで霊とコンタクトを取り、映るはずのない存在と対話を試みる。どうしてあの人を、閉じ込めたのですか。ここで一体、なにがあったのですか。あなたは一体……。

 

「すべてお前のせいだ」

一体の霊が、そう告げる。前作が理解不能な現象に自ら飛び込み、対峙する物語だとしたら、今作は主人公Julietteが、理解不能な事態から抜け出そうと抗う物語。深淵は、いつの間にか向こうからやってきていた。はたして彼女は、恋人Jonathanと再会し、Walter船長が待つ「灯台の島」にたどり着けるのだろうか。そして「すべてお前のせいだ」という言葉は、何を意味しているのだろうか。

『Sylvio 2』は紛れもなく前作の続きであり、物語としても、作品としても、1作目に対するアンサーとして成り立っている。恐怖体験を楽しむホラーゲームとしては単体でも味わいがあるが、前作の大まかなストーリーを把握していないと、何が起きているのか、何を言っているのか、理解できないことが多い。『Sylvio』を未プレイの方は注意が必要だ。

なお前作とは異なり、心霊現象が絡んだパズルや、霊的存在との戦闘、車両の運転といった要素が諸々除外されている。操作も簡易化されており、ジャンプ移動や持ち物の変更はない。マイクを手動で構える必要もなく、自動で録音してくれる。前作で最も評価された、心霊現象のレコーディングに力を注ぎ、その他の部分は大胆にも削ぎ落とされている。ホラーアドベンチャーとして純化された、とも言えるだろう。

クリアまでの想定時間は3時間から6時間(前作は10時間から20時間)。戦闘やパズルがなくなった分、心霊との交信や、そこから紡がれる物語が凝縮されている。シリーズ完結に向かう作品であるため、物語のスレッドは絞られている。前作ほどの曖昧さはなく、使用されている英語も簡易な単語・表現が多い(日本語は非対応)。レベルデザインや操作面でのストレスは少なく、前作よりも手に取りやすい作品となっている。

 

挫折からの再起

『Sylvio』シリーズを生み出したのは、スウェーデンの個人開発者Niklas Swanberg氏。プログラミング、アート、サウンド、すべて彼ひとりで手がけている。思えば、『Sylvio 2』のリリースは長い道のりであった。2015年12月に実施されたKickstarterキャンペーンは失敗に終わり、オープンワールド形式の原案はお蔵入り。Swanberg氏はKickstarterキャンペーンの失敗を振り返り、続編タイトルのクラウドファンディングを実施することの意味を理解していなかったと反省している。そもそも1作目の存在が知られていない状態で続編のキャンペーンを行っても、出資する人がいないと。人を集めるための土台づくりができていなかったのだ。

そこでSwanberg氏は『Sylvio 2』の開発を一時中断。1作目『Sylvio』の存在をより多くの人に知ってもらうため、2016年5月に『Sylvio』のPCリマスター版を、2017年1月に海外PlayStation 4/Xbox One版をリリースした。認知度を上げるために手を打ってから、続編の開発とマーケティングにシフトしていったのだ。ただし、海外コンソール版が出てから既に9か月が経過している。続編へと繋ぐ導線としては、効果が薄れてしまったのではないかという懸念が残る。10月中旬というのはハロウィン・シーズンだけあって、ホラーゲームの新作やアップデートが集中する時期。本作がリリースされたという情報が埋もれず、ホラーゲームファンのもとに届くよう、祈るばかりである。

【UPDATE 2017/10/14 8:45】 船に関する記載に誤りがあったため(ゲーム冒頭、船に乗って「Saginaw Park」にやってきたのはJulietteではなくJonathan)、該当箇所を修正しました。