『Wolfenstein II: The New Colossus』にマルチプレイが存在しない理由とは。「すべてを薄めたくなかった」

AAAクラスの大作ではユーザーベースが大きいこともあり、常に多くの要素を求められる。たとえばゲームモードはその一つだろう。オンライン越しに対戦することが一般的になって以降、オンライン対戦モードのみのゲームを出せばストーリーモードはないのかと問われ、シングルプレイのみのゲームを出せばマルチプレイはないのかと問われる。当然ながら、ゲームはそれぞれ独自の世界観を構築している。ゲーム内の世界にどういった背景があるのかを知りたがいがためにストーリーモードを遊びたいと思うことも、優れたゲームメカニクスがあればマルチプレイを作ってほしいと希望することも自然なことだ。そして、Bethesda Softworksの『Wolfenstein II: The New Colossus』も、そういった問いを投げかけられる立場にある。

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Wolfenstein II: The New Colossus』では、ナチス・ドイツが第二次世界大戦に勝利した架空の世界が描かれ、1960年代のアメリカが舞台となる。ナチスから目の敵にされる主人公のB.J.ブラスコヴィッチは本作では妻と生まれ来る子供を抱えており、祖国をナチスから解放するために古い仲間や、現地のレジスタンスと力を合わせて戦う濃密なストーリーが展開される。ゲームはというと、この時代には似つかわしくない先進的な装備を持ったナチス兵に立ち向かうハードコアなFPSだ。舞台設定やキャラクター、ゲームシステム、どれをとってもマルチプレイがあってもおかしくない内容だが、シングルプレイのストーリーモードのみのゲームである。もちろんファンからは期待する声もあるだろうが、何故マルチプレイを導入しないのだろうか。

本作の開発を担当するMachineGamesでナラティブ・デザイナーを務めるTommy Tordsson Björk氏は海外メディアPC Gamerの取材に対し、「没入感が非常に高い物語体験を生み出すなら、シングルプレイだけに集中して取り組むことが唯一の方法だ。同時にマルチプレイ要素にも手を付けるとなれば、結果的にすべてを“薄める”ことになりかねず、危険なことだ」と答えている。本作では上述したようにドラマや人間関係、暴力やユーモアなど多くの要素を擁しているが、Tordsson Björk氏は「そういったストーリー要素」すべてを前面に打ち出し、プレイヤーに誠実に伝えようと努力していると語る。開発スタッフひいては予算を増やせばマルチプレイの導入も可能なのではとも思えるが、あえてそうしないことでスタジオのアイデンテティとクオリティを保っているのだろう。

『Wolfenstein』シリーズとして振り返ってみると、過去にはマルチプレイも存在していた。しかし、MachineGamesが開発を担当するようになった前々作『Wolfenstein: The New Order』以降はシングルプレイのみである。こうした方針は、当然ながら販売元であるBethesdaの意向でもある。『Wolfenstein: The New Order』の時も同様にマルチプレイの欠落が取り沙汰されたが、同社の広報責任者Pete Hines氏は海外メディアCVGとの当時のインタビュー(Softpedia News)の中で、MachineGamesは興味深く心に訴えかけるシングルプレイ体験を生み出すことに長けていると評価している。そして、「デベロッパーがプレイヤーに届けたいと考える体験があるなら、それを実現させるべきだ」と、MachineGamesの姿勢を後押ししている。この考えは、最新作においても変わらないということだろう。

『サイコブレイク2』

近年、しばしば「シングルプレイのゲームは死んだ」といった議論が沸き起こることがあり、最近もElectronic Artsが『Dead Space』シリーズなどで知られるVisceral Gamesを閉鎖したことをきっかけに議論が再燃している(関連記事)。たしかに、マルチプレイはシングルプレイよりも拡張性が高く、マネタイズのチャンスは多い。そんな中でも『Wolfenstein』や『Fallout』、あるいは『Dishonored』や『サイコブレイク』など、シングルプレイのみのゲームをリリースし続けるBethesdaは、いまや大手パブリッシャーの中では少し特殊な存在かもしれない。

しかし、Hines氏が述べたような方針のもと優秀なデベロッパーとともにクオリティの高い体験を生み出し、そして多くの支持を集めることに成功してきたからこそ立ち位置を変えずにいられるのではないだろうか。『Wolfenstein II: The New Colossus』には、そうしたパブリッシャーとしての色をさらに濃くするような大きな期待がかかる。本作はPC/PlayStation 4/Xbox One版が11月23日に、Nintendo Switch版は2018年に発売予定だ。

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