YouTubeゲーム部門責任者、任天堂に対してYouTuberへの歩み寄りを求める。ライブ配信への対応をめぐりコメント

YouTubeのゲーム部門責任者であるRyan Wyatt氏が、Polygonのインタビューにて任天堂に対しYouTuberに歩み寄るよう助言している。任天堂は他社と同様にYouTubeにてトレイラーを公開し、時に広告を出展しているなど同プラットフォームにおいて積極的な展開を見せている。一方で、任天堂のゲームをYouTubeで配信する投稿者とは、基本的には一線を引き距離を置いている部分がある。

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まず任天堂が同プラットフォームにおいて「ニンテンドークリエイターズプログラム」なるものを展開していることを説明しておく必要がある。通常は、ゲーム実況動画を投稿することは、非公式のグレー行為と見られるリスクを抱えている。「ニンテンドークリエイターズプログラム」に同プログラムの対象タイトルの動画投稿の申請をおこない、投稿の許可が降り、無事に投稿された映像は、公認のゲーム実況動画となる。動画にて発生する広告利益の配分は、投稿者が60%で任天堂が40%。またチャンネル単位での申請をおこなえば、任天堂タイトルとは関連しない動画も含め、広告収入の70%が投稿者に、30%に任天堂に流れる。利益の一部は会社に流れるものの、公認動画という形となり削除される可能性もないわけだ。

一方でこの「ニンテンドークリエイターズプログラム」に加入していなければ、任天堂のコンテンツを含む投稿においては、著作権を侵害しているとされグレーゾーンとなる。加入せずとも同社のタイトルの動画の投稿はでき、収益化については「不適切なものを除き、動画ごとに許諾の判断がされます。」と利用ガイドには記載されている。収益化されるケースも、収益化されないケースも報告され、まさしくその動画によるようだ。ただ、同社のタイトルの作品を遊び投稿して“安心して”収益を得たいならば同プログラムに加入することが推奨される。公認が得られる一方で、動画単位で申請するならばやや煩雑な手続きが必須で、収益を一部が失われるという側面もある。

配信対象のタイトルリスト。人気タイトルはほとんど網羅している。

今回の問題は同プログラムの延長線にある。というのは、任天堂は今年9月には、「ニンテンドークリエイターズプログラム」においては、YouTubeのライブ配信には対応しないことを発表している。つまり前述したように、チャンネル単位で申請しプログラムに加入した投稿者は、そのチャンネルで任天堂タイトルのライブ配信ができない。プログラムに加入した、任天堂タイトルのライブ配信を望むユーザーは別にチャンネルを作ることが求められる。ライブ配信は、編集が可能な投稿型の動画に比べて動的なものであり、ストリーマーの人種差別のトラブルなどもライブ配信で発生している。こうしたトラブルを危惧しライブ配信を避けたとされている。

そうしたライブ配信の対応を踏まえ、YouTubeのRyan Wyatt氏は任天堂に対し敬意を抱きつつ、歩み寄りの促しを示唆するコメントを出している。

彼ら(任天堂)はどのようにクリエイティブなコミュニティに関わり、収益を得るかについて、時間をかけて熟考しています。一方でYouTuberは任天堂のコンテンツをライブ配信することで、私達の非広告製品(おそらく視聴者からのファンディング)によって収益を上げることができます。任天堂に聞いたほうがよいと思う質問ですが、投稿者達とやっていくための、もっといいやり方があると私は思います。投稿者にとって収益化の問題はシリアスなもので、私達も改善していきたんです。

Wyatt氏はプラットフォーム側の人間として、企業と投稿者の関係の改善を求めるのは自然なことだろう。ただ任天堂は、YouTubeに対して全面的に距離を置いているわけではない。たとえば、国内における有名YouTuberヒカキン氏やはじめしゃちょー氏が所属する大手事務所UUUMは、同社の著作権取り扱いに関する包括的許諾を得ている。つまり、同事務所に所属している投稿者は、任天堂タイトルに関する動画投稿の許諾を個別にとる必要がなくなったということだ。事務所単位で許諾されているので、個人で細かな手続きをする必要がなくなった。

ライブ配信に関しては、実況を主にする動画投稿サイトであるOPENREC.tvもまた任天堂の著作権取り扱いに関する包括的許諾を得ている。同プラットフォームクリエイターズプログラムに参加していれば、指定タイトルを実況することで収益を得ることができる。つまり、ライブ配信そのものを敬遠しているわけではないことがわかる。

ゲーム専門の動画投稿サイトOPENREC.tv。『スプラトゥーン』シリーズのプレイ動画が多く投稿されている。

そう考えると、なぜYouTubeのライブ配信が非対応になったのか、謎が深まる。ただ、OPENREC.tvよりもはるかに規模の大きいYouTubeにて、事故性の高いライブ配信を公認することのリスクを考えた可能性がある。最近ではメディアやYouTuber向けのレビュー用ROMが発売前に流出するなど、実際にYouTuberとの関わりのなかでトラブルが発生している事実は見逃せない(関連記事)。管轄外での事故を未然に防ぐための意味合いがあることが予想できる。

YouTubeのライブ配信はTwitchの人気には遠く及ばないながら、サービス開始からYouTubeライブ配信はうなぎのぼりにユーザーを増やしており、プログラムに加入したユーザーからライブ配信ができないことに不満を表する声が今後も増えることだろう。このまま非対応を続けるのか、「ニンテンドークリエイターズプログラム」のような新たなプログラムをライブ配信向けに考案するのか。ゲーム実況の配信に対する任天堂の次なる一手に注目が集まる。