ノーマン・リーダスが『Death Stranding』のコンセプトに言及。ソーシャルメディア以降の世界にて、他者との接触を取り戻していく試み

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『Death Stranding』にて主人公サムを演じる俳優ノーマン・リーダスが、B&H Photography Podcastに出演し、本作のコンセプトに言及した。B&H Photo Videoは撮影機材の小売業者。ノーマン・リーダスが写真家としても知られていることから(2013年には写真集「The sun’s coming up… like a big bald head」が出版されている)、ゲストとして招かれた。ゲームとはあまり関係のないPodcastではあるが、ノーマン・リーダスにインタビューする上で『Death Stranding』はいまや外せないトピックなのだろう。主に写真について語らう中、小島秀夫監督がゲームに落としこもうとしている新奇なアイデアに対する興奮をあらわにした(該当箇所はPodcastの41分55秒から)。

リーダス氏「ゲームのコンセプトは、“皆殺しにして勝負に勝つ!”みたいなものではなく、いろいろな事柄をつなげるという全く逆のアプローチをとっていて、とても衝撃的だよ。ソーシャルメディアの要素が絡んでいたり、とにかく時代の先を行っているんだ。いまの世の中、あまりにも多くのゲームが、あまりにも多くのミレニアル世代の文化が、閉じた空間の中で孤立してしまっている。他者との交流が、物理的な接触が断たれてしまっている。本作はそうした接触が失われたあとで、つながりを取り戻そうとする試みなんだ」
 

※「The Game Awards 2017」で公開されたトレイラー

小島秀夫監督は「東京ゲームショウ 2016」にて、『Death Stranding』にはこれまでのゲームとは全く違ったオンライン要素が含まれていると発言している。また作品の発表当初から安部公房の短編「なわ」を引き合いに出し、棒ではなく縄を使って人や世界とどう繋がるか、ということを問いかけていた。ノーマン・リーダスの言葉は、そうした小島秀夫監督およびコジマプロダクションから発信されてきた情報との一貫性が見られる。ソーシャルメディア以降の現代社会という観点から作品を捉えている点は、とくに興味深い。

2015年に発売された『メタルギアソリッドV』では、プレイヤーが参加しているサーバ上で、すべての核兵器が廃棄されたときだけ発生する「核廃絶」エンディングというものが仕込まれていた(公式サイト)。相当数のプレイヤーが、共通の目標に向かって動かないと実現できない厳しい条件となっていた。また2014年に配信されたインタラクティブ・ティザー『P.T.』では、謎解きのヒントが複数の言語に分けて提示されていた。世界中のプレイヤーが知恵を寄せ合うことで解いてもらおうという、つくり手の意図が込められていたのだ。

このように、ゲームの外にいるプレイヤー同士をつなげる試みというのは、近年の小島監督作品では一貫して見られる傾向となっている。『Death Stranding』においても、トレイラーが公開されるたびにコミュニティ上で意見が交わされている(関連記事)。人々をつなげる「縄」のゲームは、ある意味もう始まっているのだ。

PlayStation Storeから削除され、幻の作品となった『P.T.』

『Death Stranding』の具体的な発売時期は発表されていないものの、小島監督は上述した「東京ゲームショウ 2016」にて、「AKIRA」の設定(2019年)よりも早く発売されると発言している。コジマプロダクションが設立されたのは2015年12月。『Death Stranding』が発表された2016年6月時点では、まだゲームエンジンが確定していなかった。2016年12月になってようやく、Guerrilla Gamesの『Horizon Zero Dawn』と同じ「Decima」エンジンを採用することが公表された。まだゲームエンジンの発表から1年しか経過しておらず、2018年もしくは2019年のリリースというのは厳しいように思えるかもしれない。

だが2017年12月の「PlayStation Experience 2017」では、PlayStation 4のリード・システムアーキテクトであるMark Cerny氏が「4時間から5時間ほどプレイすれば、トレイラーの意味が理解できるようになる」と、すでにプレイアブルなビルドが出来上がっていることを示唆した。開発はかなりの好ペースで進んでいるのだろう。コジマプロダクションの実験的な試みを体験できる日は、そう遠くないのかもしれない。

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