欧米ゲームパブリッシャー数社は依然としてルートボックスを諦めず。ゲーム業界のマネタイズモデルの行方は

昨年の欧米のゲーム業界を騒がせた話題のひとつに、ルートボックス問題があげられる。ルートボックスとは、日本で言うところのランダム型アイテム提供方式(通称、ガチャ)と定義の似た課金形態。偶然性を利用してプレイヤーが獲得するアイテムやキャラクターの種類が決まる提供方式を指すことが多い。欧米各地でも以前よりこのルートボックスを導入するタイトルは存在していたが、基本無料のマネタイズモデルとして採用されることが多かった。昨年よりこの手法がフルプライスモデルにも積極的に導入されることが増えたことにより、反発の声が高まりつつあった(関連記事)。

それでもルートボックスを続ける

そして本格的にルートボックスが問題視されるきっかけとなったのが『Star Wars バトルフロント II』の発売だ。発売当初は、フルプライスタイトルでありながらお金を使った側が有利になるクレートシステムを導入。さらには「Star Wars」という世界的有名IPにて同システムを導入したことにより、子供にギャンブルの道へと誘うとの強い批判が各地で勃発。北米のESRBレイティングでは「Teen」(対象年齢13歳以上)、欧州のPEGIレイティングでは「16」である点も含めて、マネタイズモデルの枠を超え問題視されていた。『Star Wars バトルフロント II』は、発売初日にしてクレートシステムを停止、今もなおその機能は稼働していない(関連記事)。

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『Star Wars バトルフロント II』に限定せず、ルートボックスそのものに対する抵抗がメディアやコミュニティの中で広がっており、ルートボックスを風刺するタイトルが生まれたり(関連記事)、逆にルートボックスを導入しないことをプロモーションポイントにするタイトル出てきており(関連記事)、ルートボックスへの風当たりは強まる一方。英国賭博委員会は各社に自主規制を要請し、ベルギーの賭博委員会は諮問機関として政府に意見を提出。アメリカではハワイ州議員はルートボックスを批判し(関連記事)、ワシントン州議員もルートボックスへの調査および規制を呼びかけている(Engadget)。国や政府レベルを巻き込んだ騒動にまで拡大しているものの、ルートボックスについて数社はすぐさまルートボックスを諦めるということはないようだ。

その代表はやはり『Star Wars バトルフロント II』を発売するElectronic Artsだ。Electronic Artsは第3四半期決算報告にて、『Star Wars バトルフロント II』の販売本数が目標の1000万本に達しない700万本であったことを報告(The Wall Street JournalのSarah E. Needleman氏は、当初は900万本と報告していたが、正しくは700万本と訂正)。同社のCEOであるAndrew Wilson氏は、その不振の背景にルートボックスが強く関連していたことを認めている。

一方で『Star Wars バトルフロント II』のルートボックスサービスは現在停止中。再開することを停止当初から明かしていたが、Wilson氏は「数か月以内か、もしくは準備ができれば(ルートボックスのシステムを)再開する。」とその姿勢を崩さず。さらに多くのユーザーに批難されたことを「学習の機会(a learning opportunity)」とコメント(VG247)。あくまで今回の問題で学んだことを活かす意欲を見せており、今後も同要素を導入していくことを示唆している。

Electronic ArtsはVisceral Games閉鎖における一連の話題から、元スタッフや関係者から「Game as a Service」と呼ばれるに移行することが予想されている(関連記事)。「Game as a Service」はスクウェア・エニックスの松田洋祐社長の言葉を借りて説明すると「一度プレイしていただいたら終わりではなく、より楽しくより長くプレイしていただけるようなゲームデザイン」。Electronic Artsはリニア型の売り切りシングルプレイではなく、継続的な収益をもたらすタイトルへシフトするということだ。そうしたマネタイズモデルには当然ルートボックスが大きく関わってくる。今後の経営方針を考える上では、やはりルートボックスを外せない手札の一枚であると考えられる。

先日延期が発表された『Anthem』には、スキン型のルートボックスを導入されるだろうとアナリストは予想している

ルートボックスの導入を進めているのはElectronic Artsだけではない。最近ではUbisoftも『ディビジョン』では2017年8月に、『ゴーストリコン ワイルドランズ』では2018年1月25日の最新アップデートにてルートボックスシステムが追加された。『レインボーシックス シージ』では無償の「Alpha Pack」とは別に有償で購入する「Outbreak Collection Pack」を3月に開幕する新シーズンにて導入予定。『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』においても、現在クレートボックスを運用している。Take-Two Interactiveはルートボックスをギャンブルと定義せず(PCGamer)、それらを含めたゲーム内課金システムを採用し続けることを明かしていた(関連記事)。

またゲーム開発者を対象としたイベントGame Developers Conference 2018(GDC2018)参加者(約4000人)を対象としたアンケートでは、約11%がルートボックスを組み込んだタイトルに携わっていると回答している(PCGamer)。その収益の魅力からか、激しい反対に遭いながらもなおルートボックスを諦めないパブリッシャーもいるようだ。

とはいえ、ルートボックス自体が絶対的な悪とみなされているわけではない。前述したタイトルはいずれもコスメ(スキン)タイプのもので、ゲームプレイ自体には影響を及ぼさないものがほとんど。『オーバーウォッチ』を代表にスキンタイプのルートボックスは、企業とユーザーの両方にとってWinになる可能性を持つコンテンツでもあり、実際にコスメ型のタイトルの多くは導入と運用に成功している。ギャンブル性が高いという指摘に対しては反論できないものの、ルートボックスも導入形態により内容や満足度が大きく変化するコンテンツであり、すべては運用次第といえる。

ルートボックスを(現時点で)選ばない

またElectronic Arts、Ubisoft、Take-Two Interactiveはルートボックスの導入に熱心であるものの、これらが決して欧米を代表する声だとはいえない。Bethesda Softworksは『Wolfenstein II: The New Colossus』『サイコブレイク2』『The Elder Scrolls V: Skyrim VR』『Fallout 4 VR』といった、ルートボックスはおろかマルチプレイを導入しないシングルプレイ作品で勝負し続ける。

CD PROJEKT REDもまた現在開発中の『Cyberpunk 2077』に「Games as a Service」を組み込まれるのではというユーザーの懸念の声を否定。物語主導の巨大なシングルプレイ・オープンワールドRPGという『ウィッチャー3』が持つ要素から何も差し引かれるものはないと明言している(関連記事)。GDC2018のアンケートも、ルートボックスを組み込むタイトルに携わる開発者が「11%もいる」とも言えるし、「11%しかいない」と言うこともできる。メガパブリッシャーの動きを全体化してしまいがちであるものの、「Game as a Service」を採用しないメーカーも多いだろう。

国内企業も家庭用ゲームの大型タイトルにおいては、ルートボックスを導入する企業は目立ってみられない。昨年欧米のアワードにて数々の賞に輝いた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『ニーア:オートマタ』『ペルソナ5』はいずれもシングルプレイタイトルで、ルートボックスはなし。『モンスターハンター:ワールド』もルートボックスは採用せず、『ゼノブレイド2』や『ドラゴンボール ファイターズ』にもランダム型アイテム提供方式が組み込まれているものの、課金とは全く結びつかない無償のものだ。ソニー・インタラクティブエンタテインメントも、『Detroit Become Human』『Days Gone』を代表に2018年に大型タイトルを発売する予定だが、いずれもルートボックスを導入する気配を見せない。前述したElectronic Artsを代表として数社とは、対照的な動きであるといえる。

海外メディアのGame of The Yearを独占した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

ただ、ルートボックス問題が本格的に問題視されてから日も浅いゆえに、各社の答えを結論付けるのは尚早だろう。2018年末か、あるいは2019年末のホリデーに発売される大型タイトルに、その答えは記されていると予想できる。そういった点では10月26日に発売日が決まった、Take-Two Interactiveから世に送り出される『Red Dead Redemption 2』にはどういうマネタイズモデルが採用されるかに注目してみてもいいかもしれない。

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