『System Shock』のフルリメイクプロジェクトが一時中断。1億円以上の資金を得たことで、コンセプトが変わり予算が膨れ上がる

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Nightdive Studiosは2月17日、『System Shock』のリメイクプロジェクトを中断すると発表した。同スタジオは、Looking Glass Technologiesが開発し、1994年に発売されたアクションRPG『System Shock』をフルリメイクすることを目指して、2016年にKickstarterキャンペーンを実施。初期目標金額を大きく上回る約135万ドル(約1億4400万円)を集めることに成功し、さらに公式サイト経由でも多くの資金を集めている。

Nightdive StudiosのCEO Stephen Kick氏は、「Sometimes You Need To Take a Step Back In Order To Take Two Steps Forward(二歩進むためには、時に一歩戻ることも必要だ)」と題した投稿をおこない、今回の決断に至った経緯を出資者に説明している。その中でKick氏は、「もしかしたら我々は成功しすぎたのかもしれない。そして焦点を見失ってしまったのかもしれない」と述べている。目標を上回る多額の資金を手にしたことによって、当初想い描いていた以上のものを作ろうと欲が出てしまったようだ。

本作の開発では、ゲームエンジンにはもともとUnityを使用していたが、ただ作りなおしただけの作品ではなく、まったく新しい作品であると感じられる仕上がりにすべくUnreal Engineに変更した。Unreal Engineは開発チームにフィットし、それを採用したこと自体には後悔はないとKick氏は述べるが、ここからオリジナル版『System Shock』が持っていたコアコンセプトからの遊離が始まったという。開発プランが拡大していくとともに開発チームは入れ替えられ、そして自分たちが何をやっているのかを見失っていく。そうしている内に、予算は膨れ上がっていったそうだ。皮肉なことに、やりたいことがどんどんと増えていき、その開発にのめり込めばのめり込むほど、オリジナル版『System Shock』のコアコンセプトの素晴らしさに気付かされることになったとKick氏は振り返る。

Kick氏は、『System Shock』を蘇らせるために設立したNightdive Studiosの代表として、素晴らしいゲームに仕上げるために正しいと思ったすべてのことをやってきたが、誤った道をたどっていたことが明らかになったと述べている。そして、もともとのビジョンに立ち戻るためには、その道を評価しなおす必要があり、プロジェクトを中断してチームは休息を取ることを決断したという。ただし、これはプロジェクトの終わりを意味するものではないと強調している。Kick氏は、資金提供してくれるパブリッシャーを探していたことにも触れているが、現在の財務状況や今後の見通しについて語ることはなく、出資者にただ理解を求めている。なお、現時点ではNightdive Studiosは返金の申請を受け付けておらず、公式サイトでは出資の募集も継続している。

*今年1月には開発の進捗状況を伝える動画が公開されていた。

『System Shock』は、AIに支配された未来の宇宙ステーションを舞台に、主人公のハッカーが戦う一人称視点のアクションRPGだ。そのRPG要素や物語重視のゲームデザインなどは高く評価されたものの、売り上げに恵まれることはなかった。1999年には続編となる『System Shock 2』がリリースされ、現在ではシリーズの権利を獲得したNightdive StudiosによりSteamやGOG.comなどで販売されている。

なお、オリジナル版の開発元であるLooking Glass Technologies(2000年に閉鎖)の代表Paul Neurath氏が設立したOtherSide Entertainmentでは、シリーズ新作となる『System Shock 3』が開発中だ。同作は権利元であるNightdive Studiosとの提携により制作されているが、OtherSide Entertainmentは、今回のリメイク版『System Shock』の開発中断の影響はまったくなく、開発は順調に進んでいると報告している。

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