『FTL』開発元が手がけるターン制シミュレーション『Into the Breach』配信開始。迫りくる絶望感と闘う詰将棋、魅力も変わらず


インディースタジオSubset Gamesは本日2月28日、『Into the Breach』をSteam/GOG向けに発売した。価格は1520円。『Into the Breach』はターンベースで進行するシミュレーションゲームだ。同作を手がけるSubset Gamesは、PC/モバイルでリリースされヒットを記録した宇宙ローグライク『FTL: Faster Than Light』の開発元である。

『Into the Breach』の舞台となるは荒廃した地球だ。地中より繁殖を続ける巨大怪獣Vekの侵攻により、人類は文明消滅の危機に瀕していた。プレイヤーは未来の世界から人類の希望ともいえるロボットを操作し、Vekを消し去ることで世界を救わなければならない。ランダム生成させるマップにて、最善の一手を選びながら人類に光をもたらすのだ。本作は日本語には対応していないが、ゲームシステムがシンプルかつガイドやチュートリアルが親切なので、それほど心配はいらないだろう。

戦闘システムはシンプルだ。本作はターン制が採用されており、味方と敵のターンが交互に回っていく。プレイヤー味方ユニットを動かし地中から湧き続けるVekを倒し、街を守り続ける。街が壊されてしまうとロボットの給電量が減っていき、ゼロになるとゲームオーバー。ステージによってそれぞれ異なる条件が存在するが、Vekを倒し、街を守るというのが基本行動となる。本作においてはVekが次のターン何をするかが可視できる。Vekがどの街を攻撃しようとするのか、いつどこに波がくるのか、どこに新たなVekが出現するのかが見えるわけだ。それらを把握して阻止しつつ、敵をうまく叩くのが目標となる。

地形も目まぐるしく変化する

未来に起こることがすべて見えていれば、対策は簡単に思えるかもしれない。しかしながら本作はそう単純ではない、自機ユニットは3体に対しVekは3体以上わらわらと湧いてくる。一匹ずつ殲滅していると到底間に合わない。要所を抑えた防衛と、ユニットや地形の特性を利用して街を守るのだ。

システム自体はオーソドックスながら、前述した徹底した“見える化”と、敵の増殖による絶望感が本作の恐ろしい点でもあり魅力でもあるだろう。自軍ユニットは多種多様で、近接のみ、遠距離射撃、複数マス射撃など特性はさまざま。さらに地形でいうと、森は燃えると上にいるユニットにダメージを与え、水に落とせば地上のVekユニットは即死する。そして守るべきは自ユニットというより、むしろマップに点在する街だ。状況を読み特性を考え的確に判断を下さなければ、絶望の淵から脱することはできない。敵の情報はすべて開示されているが、プレイヤーは膨大な選択肢から正しい選択を選ぶ必要がある。戦闘においては基本的にランダム性が排除されているので、かなり詰将棋色が濃い。

プレイヤーは各エリアを攻略していくことになるが、エリアで受けた街の被害は持ち越される。電力がギリギリの状態でクリアすれば、次のエリアでもギリギリスタートだ。ひとつのミスがその後のゲームプレイに影響を及ぼし続ける、非常にハードコアなデザインとなっているだろう。電力が切れた際には生き残っているクルーの中からひとり(経験値もそのまま)を保持しつつ、やり直すことになるので、一定の救済措置は存在する。また出撃ユニットは固定されているが、ゲーム中に得たコインを使えば、新たなユニットセットを選ぶことができる。やりこめば多くの要素がアンロックされていく。

敵も守るべきものもとにかく多い。難易度ノーマルは『FTL』と同様にハードレベルだろう

『Into the Breach』は6年の時を経て発売されたSubset Gamesの新作である。世界観やシステムは形を変えているが、その魅力は色あせていない印象だ。シンプルで奥深い戦略性と、容赦のない難易度もそのまま。派手さはないがプレイヤーの心理を巧みに刺激する熱いシナリオや、Sci-Fi世界を形成する美しい音楽も健在。ただ本作では、運の絡む要素はいくつか存在するものの、『FTL: Faster Than Light』よりは運よりもプレイヤーの知識と判断に強く依拠するゲームデザインとなっている印象だ。こうした変化もしくは進化はあるものの、根幹的な魅力は変わらない。

いくら消せども生まれ続ける火。低下する電力。なくなる酸素。死んでいくクルー。ジャンルは変わっても、『FTL: Faster Than Light』で体験したあの独特の絶望感が、『Into the Breach』には詰まっているだろう。