コピーガード「Denuvo」はゲームのパフォーマンスに悪影響を及ぼすのか。PC版『FF15』を使った2つの検証結果が波紋を呼ぶ

今月ついに発売を迎えたPC版『ファイナルファンタジーXV』。さまざまなグラフィック設定オプションを用意し、高解像度やHDRへの対応、またModのサポートを約束するなどPC版のための積極的な取り組みが高く評価されているようだ。一方で、一部ではネガティブな意見や議論も見られる。それは本作が「Denuvo」を導入したことについてである。

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Denuvo(正式にはDenuvo Anti-tamper)は、Denuvo Software Solutionsが提供しているコピー防止技術だ。リバースエンジニアリングや実行ファイルの改ざんなどを防ぎ、SteamやOriginにおいて、ユーザーのアカウントと購入したゲームを紐付けるDRMを保護するものである。ただこのDenuvoについては、一部のゲーマーは強い拒否反応を示している。その理由の一つは、Denuvoは導入されたゲームのパフォーマンスに悪影響を及ぼしているとされていることだ。昨年、『RiME』の海賊版を配布したクラッカー集団Skidrowも、Denuvoを批判する根拠としてパフォーマンスへの影響に言及していた(関連記事)。

こうした指摘についてDenuvo社自身は否定しているが、実際のところDenuvoはゲームのパフォーマンスにどれほどの影響を与えているのか、あるいはいないのか。DuranteことPeter Thoman氏がPC版『ファイナルファンタジーXV』を使って検証をおこない、海外メディアPC Gamerに寄稿している。Durante氏は、PC版『ダークソウル』や『王様物語』など、最適化が不十分なままリリースされたゲームを独自に、あるいはメーカーに協力する形でパフォーマンスの向上に寄与してきた実績を持つ人物である(関連記事)。PC版『ファイナルファンタジーXV』には体験版が配信されており、実はこちらにはDenuvoが導入されていない(Steamストアでは、サードパーティのDRMとしてDenuvoの有無を明記している)。ただ、製品版と同じアセットを使った同じシーンをプレイすることができるため、Denuvoによる影響を計るのに最適だというわけだ。

Image Credit: PC Gamer

検証はゲーム内の3つの異なるシーンにて、Denuvoの動作に使うCPUに負荷を集中させる形で平均フレームレートを比較。実施環境など詳細はPC Gamerの記事を参照していただくとして、結論からいうと平均して5.6パーセントの違いが現れている。ただし、シーンによってDenuvo無しの体験版の方がフレームレートが高い場合もあれば、逆にDenuvoが使用されている製品版の方がフレームレートが高い場合もある。Durante氏は、この平均5.6パーセントという差は測定誤差を考慮すると僅かであり、また体験版と製品版でセーブデータの共有ができないので、厳密に言うと完全に同一のシーンで比較したわけではないことも考える必要があるとしている。こうしたことを踏まえて、Denuvoはゲーム内パフォーマンスに悪影響を及ぼしているとは言えないと結論付けている。

また、ロード時間の検証もおこなわれている。こちらも3つのシーンにて比較されており、結果的にいずれのシーンにおいてもDenuvo無しの体験版の方がロード時間が短く、平均6.7パーセントの差があった。Durante氏は、体験版と製品版では同じアセットを使用していてもコードに違いがある可能性があるため、Denuvoが実装されたことの影響であるとは断言しきれないが、僅かであれ有為な違いが見て取れると述べている。なお、検証結果の詳細はスプレッドシートにて公開されているので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

PC版『ファイナルファンタジーXV』においては、海外メディアDSOGamingが別の角度での検証をおこなっている。その検証とは、Steamで販売されている製品版と海賊版とのパフォーマンスの比較だ。同作は、Origin版の事前ダウンロードデータをもとに海賊版が発売日前から出回っていた。このバージョンには、当然ながらDenuvoは入っていない。

こちらも詳細は同サイトをご覧いただくとして、まずフレームレートの比較では、当初はどちらも同程度のパフォーマンスだったが、プレイを進めるうちに常に海賊版のフレームレートが上回る結果になったという。場面によっては30パーセントほどの違いが出ている。また、Steam版ではスタッター(カクつき)がより多く発生しており、これはストレージへのアクセスが頻繁におこなわれていることが原因であろうと指摘している。ロード時間の比較では、一番最初の起動時にSteam版が30秒かかるところ、海賊版は僅か3秒だったという。2回目の起動時にはSteam版は8秒に短縮されるが、海賊版は3秒のままで依然差がある。またゲーム内でのマップのロード時間も、海賊版の方が短かったという。

このようにDurante氏の検証とは大きく異なる結果となっている。ただDSOGamingのJohn Papadopoulos氏は、これはあくまでSteam版と海賊版との比較であって、Denuvoの有無だけによってこの結果が得られたとは結論付けていない。Steam版においては、たとえばSteam APIの動作がゲームのパフォーマンスに悪影響を与えるとされており、コミュニティではそれに対応するためのModも作成されている。Denuvo以外に要因がある可能性を捨てきれないため、Papadopoulos氏はDurante氏の検証結果を否定するものではないとしている。

ゲーム開発スタジオ運営シム『Game Dev Tycoon』では、直近のアップデートにて海賊版の脅威が加わる「Pirate Mode」が追加。DRMを開発すれば対処できるが、その代わりにファンの怒りを買うというリアルな仕様が話題となった

Denuvoが拒否される理由はパフォーマンスへの懸念だけではなく、たとえば定期的にDenuvo社のサーバーとの通信が求められることも挙げられている。もし何らかの理由でサーバーが停止した場合、Denuvoを採用しているゲームはプレイできなくなるためだ。昨年、『Batman: Arkham Knight』など複数のゲームがプレイ不可となる現象が発生した際には、Denuvoのサーバートラブルが原因だったと報じられている(DSOGaming)。これはDenuvoに限った問題ではないため、DRM全般を好まない人がDenuvoも嫌う傾向にあるようだ。

各メーカーは海賊版対策のためにDenuvoを導入しているが、結果的に不法行為をおこなう者たちのために一般のユーザーが割を喰う構図になっている。その海賊版対策にしても、Denuvoはかつては強力な効果を発揮していたものの、近年はクラックされることも珍しくなくなり、事後にDenuvoを削除するゲームもある。すでに海賊版が出回っているPC版『ファイナルファンタジーXV』についても、もうDenuvoを使用し続ける理由はないという意見がある。

今回のDurante氏の検証では、ロード時間についてはさらなる検証の余地があるものの、ゲーム内でのパフォーマンスについては、少なくとも『ファイナルファンタジーXV』においてはDenuvoの影響は認められないという結果となった。一方のDSOGamingの検証では、Denuvoの影響が疑われる結果が出た。これを受けた海外ゲーマーの反応はさまざまで、特に影響が無いのであればDenuvoが使われていても構わないという者もいれば、やはり受け入れられないと反発を続ける者もいる(reddit)。また、前提条件が異なるとはいえ、両者大きく異なる結果が出たことで困惑も広がっている。依然はっきりしない部分は残るものの、今回の2つの検証はコミュニティに一石を投じた形となったようだ。

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