『PUBG』開発元が、『荒野行動』『Rules of Survival』を著作権侵害として提訴しストアからの削除を求める。数多くの共通点を列挙し告発


韓国のゲーム開発・販売元Blueholeの子会社で、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)を手がけるPUBG Corporationが、中国の大手パブリッシャーNetEaseを相手取り、アメリカ・北カリフォルニアの合衆国地方裁判所にて訴訟を起こしていたことが、4月5日明らかになった。海外メディアTorrentFreakなどが報じている。

訴状によるとPUBG Corp.は、NetEaseが販売しているモバイルゲーム『荒野行動(KNIVES OUT)』および『Rules of Survival』が『PUBG』に酷似しているとして、著作権侵害・トレードドレス(知的財産権の一種)侵害・不正競争防止法違反を訴えている。『荒野行動』と『Rules of Survival』は、どちらも基本プレイ無料のモバイル向けバトルロイヤルゲームとして昨年末から世界中で配信されており、特に『荒野行動』は、日本でもiOSのApp StoreやAndroidのGoogle Playストアにてカテゴリランキングのトップに表示されることのあるほど高い人気を得ている。

https://www.youtube.com/watch?v=XJUEGqDj-eg

*『荒野行動』の紹介トレイラー

PUBG Corp.は訴状で、『PUBG』は世界的に知られるクリエイターのBrendan Greene氏との協力のもと開発され、2017年3月にSteamにて早期アクセス販売を開始。それから現在までにPC版は1200万本以上、Xbox One版は500万人以上のユーザーが遊ぶ大ヒット作品となっていることを説明。そして、『荒野行動』と『Rules of Survival』が『PUBG』を模倣したとする点をそれぞれ挙げている。両作に対しては大部分において同じ主張がおこなわれており、要点は以下のとおりだ(どちらかの作品には当てはまらない項目もある)。

・100人の個人またはチームで対戦できるなど全体的なゲームプレイ
・ゲーム開始前に参加者が集められ、操作を試すことができるエリア
・航空機から降下し、自由落下とパラシュートを使ってゲーム開始エリアを選ぶ
・メインの島といくつかの小さな島からなる四角に近い形状のマップで、グリッドが表示された衛星画像で確認できる
・コンテナの積まれた港や廃墟など、マップ内に作られた環境
・六角形をした二階建ての塔や、一部の住居など、特定の建物の形状や内部の構造
・登場する銃器の種類やデザイン(色使い)、またダメージ量やアタッチメントの種類
・近接武器やグレネードの種類やそのデザイン
・近接武器のフライパンや圧力鍋の蓋(『PUBG』のアイコン的武器フライパンとの類似性)
・フライパンや圧力鍋の蓋をキャラクターのお尻を守るように保持できる
・3段階のレベルがあるヘルメットやボディアーマー
・戦闘服以外に普段着的な服装アイテムを多数用意している
・キャラクターの肩や腰部分にアイテムを保持できるスロットがある
・体力回復ドリンクや絆創膏などの、消費アイテムの種類や効果
・バギーなどの車やバイクといった車両の種類やデザイン
・航空機からの支援物資の投下、および赤い煙でその場所を知らせる
・特定エリアへの爆撃要素、およびそのエリアをマップに赤い表示で示すこと
・時間経過でゲームプレイエリアが狭まり、その境界に光る壁が表示される

また、マーケティングや宣伝において『荒野行動』と『Rules of Survival』は、たとえば公式Facebookへの投稿で「Chicken」や「Chicken Dinner」という言葉やイメージを何回も使用している。『PUBG』では勝利プレイヤーには「Winner Winner Chicken Dinner」(日本版では「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」)と表示されるため、PUBG Corp.は『PUBG』のイメージを無断で利用していると主張している。そのほか、上で挙げた圧力鍋の蓋や、サイドカーの付いたバイクの画像も投稿しており、これらも『PUBG』のイメージにただ乗りしたものであるとしている。こうした類似性や宣伝により、両作はユーザーから「PUBG on Mobile」や「Mobile PUBG」などと呼ばれ、あたかもPUBG Corp.が両作を開発しているかのように、消費者を混乱させることに繋がっているというのがPUBG Corp.の主張である。

PUBG Corp.は今年1月、App Storeを運営するAppleに対して、両作におけるNetEaseによるこうした権利侵害を申し立てた。しかし、Appleから通知を受けたNetEaseは権利侵害を否定し、両作の販売停止やゲーム内容の修正を拒否。その後も両社間での協議は続けられたが進展を見ることはなく、PUBG Corp.は4月2日に提訴に踏み切ったという。PUBG Corp.は訴状にて、『荒野行動』と『Rules of Survival』およびNetEaseのほかの『PUBG』類似ゲームの各ストアからの削除、そして損害賠償金として各ゲームにつき15万ドル(約1600万円)の支払いなどをNetEaseに求めている。

Blueholeは昨年、Epic Gamesが『フォートナイト(Fortnite Battle Royale)』をリリースした際に、『PUBG』との類似性について懸念を表明したことがあった(関連記事)。ただ、それはEpic Gamesが、『PUBG』が使用するゲームエンジンUnreal Engineの提供元という立場だという事実を念頭に置いたものだった。『フォートナイト』は独自要素も多く持っているためか、あるいは両社間で解決をみたのか、これまでのところ大きな問題には発展していない。

しかし今回の件では、PUBG Corp.は著作権侵害などとしてさまざまな具体例を挙げ、明らかな模倣であると主張している。『PUBG』はPC/Xbox One版に加え、今年2月からはiOS/Android版のオープンベータテストを始めており、同じストアに並ぶ直接の競争相手という立場になったことが、今回訴訟に踏み切るきっかけになったのかもしれない。もし仮にPUBG Corp.の主張が認められれば、ユーザー数2億人を突破している『荒野行動』と、同1億人超の『Rules of Survival』はゲームの大幅な修正、もしくは販売終了に追い込まれるだろう。逆に主張が認められなかった場合は、模倣作がさらに溢れることに繋がるかもしれない。両社が和解しない限り大きな影響は避けられそうになく、裁判の行方には注目が集まる。