『バイオショック』新作が2K Gamesの極秘スタジオにて開発中との報道。『マフィア III』開発スタジオの内部事情調査より浮上

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海外メディアのKotakuは4月14日、独自の調査を元に『バイオショック』シリーズの新作が開発中であることを報告した。パブリッシャー2K Gamesによる公式発表ではないが、これまで豊富な情報網と地道な調査により数々のスクープを放ってきたJason Schreier記者のレポートは他社メディアからも情報源として信頼されており、IGNPCGamerGameInformerGamesutraなど海外メディアがこぞって報じている。

『バイオショック』新作のコードネームは「Parkside」。開発を担当しているのは「サンフランシスコに拠点を置く2K Gamesの極秘スタジオ」とされている。米国サンフランシスコと言えば『マフィア III』を手がけた2K Gamesの開発スタジオHanger 13の所在地でもある。そして「Parkside」の開発メンバーにはHanger 13の元スタッフも含まれているという。

なお『バイオショック』『バイオショック インフィニット』を開発したIrrational Gamesは大規模なレイオフを経て、2017年2月にGhost Story Gamesへと社名を変更。『バイオショック』フランチャイズを引っ張ってきたクリエイティブ・ディレクターKen Levine氏と共に2K Games傘下に残り、ストーリー重視の一人称視点ゲームを手がける小規模スタジオとして再スタートを切っている(関連記事)。『バイオショック』はその独特の世界観はもちろんのこと、Irrational Gamesが得意とするストーリーテリングにより支持を得てきたシリーズである。そんな彼らからバトンを引き継いだ極秘スタジオが、新作にてどのようなテーマに挑戦するのか、期待がかかる。

『バイオショック インフィニット』

『マフィア III』スタジオの苦悩も

Kotakuが情報を入手するきっかけとなったのは、『マフィア III』を手がけたHanger 13の内部事情調査である。今回の報道の本題はHanger 13であり、複数の元スタッフから仕入れた情報に含まれていたのが、『バイオショック』新作という特ダネである。本題としては『マフィア III』の開発に苦しんだ原因や、度重なるレイオフや方針変更によるモラル低下といった、同スタジオの決して明るくない内部事情に切り込む内容となっている。

『マフィア III』は2016年10月に発売されたオープンワールド型のクライムアクションゲーム。1960年代米国南部における人種差別や時代背景を扱ったナラティブは評価されたが、単調なゲームプレイやバリエーションの乏しさなどが指摘され、レビュー集積サイトMetacriticでのメタスコアは68/100点(ユーザスコアは5.8/10点)にとどまっている(Kotakuの報道によると、2K Gamesが求めていたのは80〜85点の評価)。

『マフィア III』

Kotakuによると、スタッフの多くは本作が完成するはるか前から、単調さが問題であることを認識していたとのこと。仕様変更が望ましいことを上層部に訴えかけ続けたが、開発後期に入るまで説得できず。ディレクタークラスの人員が「このままでは上手くいかない」と判断した頃には、もう後戻りできないところまで来てしまっていたという。また『マフィア III』の開発は当初2K Czechが担当しており、途中からバトンを渡されたHanger 13は、引き継いだゲームコードの解読に苦労する羽目になった。というのも、コードに残されたコメントのほとんどはチェコ語と英語が混合した言語で記されていたため、チェコ語を解さない米国Hanger 13のスタッフは読解に時間を割く必要があったそうだ。

それでもHanger 13は『マフィア III』の開発終了後、同作で学んだことを活かし、よりクオリティの高い作品が作れるという自信と意欲に満ち溢れていた。最初のうちは1970年代ラスベガスを舞台にした『マフィア IV』の計画を進めていたが、2K Gamesより自社IPに挑戦するチャンスを与えられた彼らは、「Rhapsody」と呼ばれる新規IPの構想を練り始める。1980年代ベルリンを舞台にしたスパイアクションだったとのこと。だがスタジオは2017年を通じて人員の入れ替えを経験し、いつしか「Rhapsody」は「音楽を武器に戦うスーパーヒーロー物」という、全く異なるコンセプトに様変わり。その「音楽を武器に戦う」という突飛なアイデアも、2017年の終わりにはお蔵入りとなった。元スタッフの証言によると、現時点で動いているのは「スーパーヒーロー物のアクションゲーム」という当初の野望からかけ離れたプロジェクトだという。

こうした事情もあってモラルが低下したスタッフのもとに飛び込んで来たのが、同じ2K Games傘下のスタジオが『バイオショック』新作に取り組んでいるという情報。魅力的なプロジェクトに惹かれた一部のメンバーは異動を求め始めた、という次第である。『バイオショック』新作が開発中というのは、事実であれば嬉しい報せだが、Hanger 13の現状に不満を抱えた複数の情報提供者がいたからこそ漏れたニュースなのだ。『マフィア III』の野心的なストーリーテリングからHanger 13の手腕に期待を抱いたゲーマーにとっては、不安が残る報道となった。とはいえ、『マフィア III』の主要なライター陣はHanger 13に残っており(元Lucas Artsのクリエイティブ・ディレクターHaden Blackman氏含む)、次回作でも挑戦的な物語が紡がれる可能性は十分に残されているだろう。

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