『アンチャーテッド』シリーズで銃撃された時に映る赤いエフェクトは“ダメージ”ではなく“運”だった。開発者が真の意味を明かす


トレジャーハンターとして幾多の危険な冒険を乗り越えてきた、アクション・アドベンチャーゲーム『アンチャーテッド』シリーズの主人公ネイサン・ドレイク(ネイト)について、とある秘密が開発者から明かされた。BioWareやUbisoftなどを渡り歩き、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』から開発元のNaughty Dogに加入したアニメーターのJonathan Cooper氏は7月9日、ネイトは「これまで銃弾によるダメージを一度も受けたことがない」ということを、開発チームに加わった際に学んだとツイートした。

シリーズをプレイしたことがある方なら、この発言には疑問を抱くかもしれない。実際のゲームプレイの銃撃戦で不用意にカバーから飛び出すと、プレイヤーは画面端に血のような赤い表示が出て被弾ダメージを認識するはずだからだ。しかしCooper氏によると、この被弾を示すかのような赤い表示は、実際にはネイトの“運”の消耗を表しているのだという。ほかのゲームであれば、被弾し続けるとこの赤い表示で画面が真っ赤になり、ダメージの蓄積により死に至るのが一般的だろう。『アンチャーテッド』シリーズでも一見同じように見えるが、実はネイトは多数の銃弾を運良くギリギリでかわし続けており、運が尽きてついに被弾する最後の一発で倒れるのだ。

ディレクター/ライターとして『アンチャーテッド』シリーズ初期作品の開発を率いたAmy Hennig氏もこのツイートに反応し、Cooper氏の話が事実であることを認めている。Hennig氏によると、このシステムはシリーズ当初からあるもので、開発チームがオマージュの対象にしていた映画作品の精神や雰囲気をゲームに反映させる意図があったという。

似たようなシステムは、2008年に発売されたUbisoftの『ブラザー イン アームズ ヘルズハイウェイ』でも取り入れられていた。同作では、プレイヤーが敵の視界に入るなどすると、脅威の度合いを示すために赤い表示を画面に出し、それでもなお安全な場所に退避せずにいると被弾して死に至る。発売当時プレイヤーの間では、このヘルスシステムについて議論されることもあり、赤い表示はヘルスではなく運を表しているという声も上がっていた(GameFAQs)。

『アンチャーテッド』シリーズでの“運システム”は、見方を変えれば敵はネイトの運が尽きるまであえて攻撃をミスしているとも言える。開発者側の意図として攻撃をミスさせる例はほかにもあり、たとえば『BioShock』では敵の最初の攻撃は常にミスをし、『LUFTRAUSERS』でも最序盤の敵はわざとミスショットをする。前者は不意に現れた敵に対するプレイヤーへの一種の救済措置で、後者はプレイヤーに弾を避けるのが上手いと感じさせるためという、理由は異なるがいずれもプレイヤーのゲーム体験を高めるための工夫として取り入れられている(関連記事)。

一方の『アンチャーテッド』シリーズでは、Hennig氏はオマージュ表現だとしており、危険な場面を間一髪でくぐり抜けるアクションヒーローを描くうえでこうしたシステムを取り入れたようだ。ただ、Cooper氏のツイートには多くの驚きの声が集まっていることから、あの赤い画面表示をもってプレイヤーにその意図が通じていたかどうかは微妙である。とはいえ、ネイトは何発も被弾しても少し時間を置けば回復するような超人ではなく、ただ強運の持ち主だったと説明されたことで、数々の修羅場をくぐり抜けてきたことも踏まえると、むしろ腑に落ちる結果となったのかもしれない。