『PUBG』開発元から『荒野行動』を訴えられたNetEaseが、訴訟の棄却を求める。「バトルロイヤル独占を目指す恥知らずな試み」と吐き捨て

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韓国のゲーム開発・販売元Blueholeの子会社で、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)を手がけるPUBG Corporationが、中国の大手パブリッシャーNetEaseが販売する『荒野行動(KNIVES OUT)』および『Rules of Survival』について、著作権侵害・トレードドレス(知的財産権の一種)侵害・不正競争防止法違反だとして、アメリカでNetEaseを相手取って訴訟を起こしたことを今年4月にお伝えしたが(関連記事)、NetEase側が訴えの棄却を求めていたことが明らかになった。海外メディアGamesIndustry.bizなどが報じている。

『PUBG』は、PC/Xbox Oneおよびモバイル向けに販売中の、言わずと知れた大ヒットバトルロイヤルゲームだ。PUBG Corp.は、数々のバトルロイヤルMODを手がけてきたBrendan Greene氏と組んで同作を開発している。一方の『荒野行動』と『Rules of Survival』は、基本プレイ無料のバトルロイヤルゲームで、どちらも昨年11月にiOS/Android向けに配信。特に『荒野行動』は非常に高い人気を得ている。現在は『PUBG』もモバイル向けに展開しているが、今回提訴したのはその配信直前というタイミングだった。

『荒野行動』も『Rules of Survival』もサービス継続中

訴状にてPUBG Corp.は、NetEaseは意図的に『PUBG』を模倣することで、『荒野行動』と『Rules of Survival』はPUBG Corp.が手がけていると消費者に誤解させ、注目を集めて不当に利益を得たと主張。また、両作の宣伝活動においても『PUBG』のイメージにただ乗りしていると指摘した。その模倣として挙げられた点は以下のとおり。

・100人の個人またはチームで対戦できるなど全体的なゲームプレイ
・ゲーム開始前に参加者が集められ、操作を試すことができるエリア
・航空機から降下し、自由落下とパラシュートを使ってゲーム開始エリアを選ぶ
・メインの島といくつかの小さな島からなる四角に近い形状のマップで、グリッドが表示された衛星画像で確認できる
・コンテナの積まれた港や廃墟など、マップ内に作られた環境
・六角形をした二階建ての塔や、一部の住居など、特定の建物の形状や内部の構造
・登場する銃器の種類やデザイン(色使い)、またダメージ量やアタッチメントの種類
・近接武器やグレネードの種類やそのデザイン
・近接武器のフライパンや圧力鍋の蓋(『PUBG』のアイコン的武器フライパンとの類似性)
・フライパンや圧力鍋の蓋をキャラクターのお尻を守るように保持できる
・3段階のレベルがあるヘルメットやボディアーマー
・戦闘服以外に普段着的な服装アイテムを多数用意している
・キャラクターの肩や腰部分にアイテムを保持できるスロットがある
・体力回復ドリンクや絆創膏などの、消費アイテムの種類や効果
・バギーなどの車やバイクといった車両の種類やデザイン
・航空機からの支援物資の投下、および赤い煙でその場所を知らせる
・特定エリアへの爆撃要素、およびそのエリアをマップに赤い表示で示すこと
・時間経過でゲームプレイエリアが狭まり、その境界に光る壁が表示される

なお、PUBG Corp.はこれまでに訴状を修正しているが、何かを取り下げたというわけではなく、上記各項目についてより詳細な資料を追加した形である。訴状では、それぞれの項目について『PUBG』と『荒野行動』『Rules of Survival』との比較写真を並べて類似点を指摘。PUBG Corp.は、それぞれ著作権で保護されるべき(Capyrightable)な視聴覚コンテンツであるとし、NetEaseの権利侵害を主張している。

こうした訴えに対してNetEaseは即座に声明を発表していたが(関連記事)、7月17日になって、冒頭で述べたように裁判所に棄却を求めた。NetEaseは、PUBG Corp.の訴えはビデオゲームにおけるバトルロイヤルジャンルの独占を目指す恥知らずな試み(shameless attempt)だとし、また正当な競争を阻害する行為であると述べる。そして、PUBG Corp.が指摘した模倣については、まずゲームのメカニクスやルールは著作権保護の対象にはならないと反論。ここには最後の一人になるまで殺し合うことや、プレイエリアの縮小なども含まれる。その根拠のひとつとして、カプコンの『デッドライジング』が、映画「Dawn of the Dead(邦題:ゾンビ)」の著作権を侵害しているとして訴えられ、そして棄却された2008年の判例を示している。

ゲーム開始前の待機エリアで操作できる類似点についてはチュートリアルに過ぎず、プレイヤーにゲームのルールを教えることは著作権保護の対象にはならないとコメント。ゲーム開始時の航空機からの降下については、島にプレイヤーを投入する手段に過ぎず、パラシュートを使うことはそこから自然と生まれたアイデアだと主張。そのほか、各種装備品や車両などのデザインの類似点については、実際に存在するものや日常的に使用されるものは著作権保護の対象ではないとし、さらにPUBG Corp.が「見た目や雰囲気(look and feel)」という言葉を用いて類似性を指摘している点についても、『PUBG』はダークだがNetEaseのゲームはどちらも明るいトーンで、見た目や雰囲気は明らかに違うと主張している。

サブマシンガンのデザインの類似性についてNetEaseは、どちらも著作権の切れた実在の銃に基づいており、訴えは無効だと主張

そのほか、NetEaseが鶏や鶏肉料理のイラストを使って両作の宣伝していることについて、PUBG Corp.は『PUBG』の勝利メッセージとしてゲーマーに広く知られた「Winner Winner Chicken Dinner」のイメージを利用していると主張。この言葉も、ゲーム内のほかの要素と組み合わせる形で著作権保護可能だとしたが、これに対してNetEaseは、このような短いフレーズは保護対象にはならないと反論している。NetEaseは、同じジャンルの2つの作品を比較する際には、単に似ているというだけでなく、バーチャル・アイデンティティの類似を高度な基準をもって証明する必要があるが、PUBG Corp.は今回の訴状にて、クリエイティブ表現における十分な類似性を示すことができていないと断じた。なお、NetEaseはこうした反論のひとつひとつに、過去の判例からの引用を参考資料として添えている。詳しい訴状を確認したい方は、こちらを参考にしてほしい(リンク先PDF)。

『フォートナイト』

PUBG Corp.は今年5月、同じくバトルロイヤルゲームである『フォートナイト』についても、著作権侵害だとして韓国にて訴訟を起こし、そしてのちに訴えが取り下げられたことが大きな話題となった(関連記事)。こちらの裁判の詳細は分かっていないが、『PUBG』の知的財産権を保護することが目的だったとされており、NetEaseとの訴訟と類似点は少なくなさそうだ。

PUBG Corp.は今回の訴訟にて、「Battle Royale」という言葉こそ使っていないものの、バトルロイヤルゲームによく見られる表現の数々について著作権で保護されるべきだと主張している。しかし一方のNetEaseは、PUBG Corp.は『PUBG』内のそれらの表現について実際に著作権を獲得できていない現状から、広く浸透したバトルロイヤルジャンルにおける普遍的な表現は、保護対象になるべきではないと反論。『PUBG』が火をつけたバトルロイヤルジャンルには数多の作品が参入しており、裁判の行方と同時に、このNetEaseの主張に対してどのような判断が下されるのかにも注目があつまる。

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