『ノーマンズスカイ』の大型“無料”アップデートは、開発元に巨額の利益をもたらした。調査会社が予想する推定収益は26億円

 

Hello Gamesは、2018年7月24日に『No Man’s Sky(ノーマンズスカイ)』の大型無料アップデート「NEXT」を実施した。マルチプレイを導入すると共に、コンテンツの追加および改修をはかる無料アップデートは、多くの人々に受け入れられ、Steamレビューの評価を変える大きなきっかけになった(関連記事)。既存ユーザーの信頼を回復させるテコ入れのひとつとなったが、この大型“無料”アップデートは、開発元に大きな利益をもたらしていたようだ。

調査会社SuperDataの月間報告によると、7月の『ノーマンズスカイ』の推定収益は2400万ドル(約26億円)にものぼるとのこと。この数字は、PCおよびPlayStation 4、そして新たにリリースされたXbox One版を合計したもの。また全プラットフォームにおけるアクティブユーザーは、200万人以上にもおよんだという。「NEXT」アップデートを実施した週である7月27日に、本作のディレクターであるSean Murray氏が「発売から2年経って、PC、PS4、Xbox One(おそらく合計)で世界一遊ばれるゲームになるとは思いませんでした!」と語っているように、相当な数のプレイヤーが遊んでいたことが考えられる。

7月においては、アメリカのPlayStation Storeの月間チャートでも『ノーマンズスカイ』は3位にランクインし、ヨーロッパの同ストアのチャートでも4位にランクイン。既存ユーザーだけでなく、新たなユーザーを多く獲得していたことがわかる。そして、こうした売り上げは、アップデートにあわせて実施されていたセールによって押し上げられていたことが予想できる。本作は、定価が約6000円と高めであり、半額セールが実施されたとしても3000円。強気な価格設定もまた、大きな収益を呼び込む一因になっているといえるかもしれない。いずれにせよ、Hello Gamesにビッグマネーが転がり込んできていることは間違いなさそうだ。

『ノーマンズスカイ』は、2016年8月にPCおよびPlayStation 4向けに発売された宇宙アドベンチャーゲームだ。宇宙飛行士であるプレイヤーは、謎の声に導かれ、宇宙の中心を目指して数々の惑星を渡り歩く。本作の舞台は広大な大宇宙。数々の惑星と宇宙がシームレスにつながっており、ローディングなしで惑星と宇宙を行き来できる。惑星は1800京以上存在しており、それぞれの惑星には全く異なる生命体が生息しており、気候も惑星によって異なる。

美しいグラフィックと野心的なコンセプトにより、発売前から大きな期待を集めていたが、いざ発売された後は、価格の高さとそれに見合うコンテンツが存在しないと批判を受けていた。具体的には、どの惑星も代わり映えがなく、イベント(ハプニング)の欠如、お金や素材を集める動機の欠如など。要するに、宇宙の旅は刺激がなく、やりこんでお金を稼いだとしても、たいした使い道がなかったわけだ。またマルチプレイが存在していないにも関わらず、Murray氏が、マルチプレイが存在しないとの明言を避けていたことによりファンの心象は悪化。批判は徐々にエスカレートし、Steamレビューは赤く染まり「不評」に定着。さらには、大規模な返金騒動に発展し、批判の嵐が巻き起こっていた(関連記事)。

Hello Gamesは、これまで積極的に露出していたメディアへの顔出しを控え、ひたすら黙々とアップデートをし続けた。建築要素を導入する「Foundation」、乗り物を導入し建築要素を拡張する「Pathfinder」、ミッションやストーリーを拡大する「Atlas Rises」。三度の無料アップデートにより、課題は徐々に解消されて、そして「NEXT」アップデートのマルチプレイ実装により、新たな遊び方が導入された。度重なるアップデートによって評価は持ち直しはじめ、先月にはSteamレビューステータスが「賛否両論」へと変化した。

こちらのアップデートはいずれも無料であり、Hello Gamesの開発資金を憂慮する声もあったが、無料アップデートによって作品の評価が上がり、ゲームがさらに売れたことにより、開発元が潤沢な利益を得ていること明らかになった。一連の無料アップデートは、ユーザーも開発元も幸せになれる、win-winな取り組みであったといえそうだ。

「NEXT」アップデートから1か月が経過し、Steamのプレイヤー数は一時期に比べると落ち着きつつあるが、それでも1万人以上のプレイヤーが日々遊んでいる(Steam Charts)。8月に入ってからも頻繁にアップデートが入っているほか、今後はコミュニティの声を聞く週間アップデートプログラムの実施が計画されている。一度地の底まで落ちてしまったHello Gamesが見せた復活劇は、失敗点と成功点ともにゲームを開発・運営する上での重要なヒントになるかもしれない。