コピープロテクトDenuvoの目標は“発売直後”のゲームの売上を守ること。プロテクトは、いずれは破られるものであるとDenuvo社は認識


PCゲーム向けコピーガードDenuvo Anti-Tamper(以下、Denuvo)を開発するDenuvo社のセールスディレクターElmar Fischer氏は、Gameindustry.bizの取材に応じ、Denuvoにまつわる現状を報告した。その中でFischer氏は、今年の2月にオランダのセキュリティ会社Irdetoに買収され、会社規模を大幅に拡大したことを踏まえつつ、Denuvo社の目標はあくまでゲームの発売直後の売上を守ることであるとコメントした。恒久的にクラックされないことがベストとしながら、そうしたことはゲーム業界では起こりえないと語った。

Denuvoは、2017年から浮き沈みの激しい時期を幾度も経験している。最強とうたわれたプロテクトを搭載したタイトルが、発売直後からクラックされる事例が相次いだからだ。『バイオハザード7』においては5日間でクラックされ、『RIME』も5日間でプロテクトを突破された。単にプロテクトが突破されるだけでなく、Denuvoを導入したタイトルにおける動作不良などが報告され始めた。前出の『RIME』や『ソニックマニア』などはDenuvoによりパフォーマンスが低下しているという疑惑が生まれ、DRMとしてもともとPCゲーマーから快く受け入れられていなかったDenuvoは、さらに忌み嫌われる傾向が強まっていき、現在ではDenuvoの導入の有無がしばしニュースになるほど、特定ユーザーはアレルギーを感じているようだ。

今年4月には『鉄拳7』のプロデューサーである原田勝弘氏が、PC版のフレームレートが特定環境時に下落する件について「(2018年4月時点では)設定を変えても解決しない。Anti-Tamperミドルウェアによる暗号化プログラムの影響だ。もうじき修正されると聞いている」とコメントしており、暗にDenuvoの導入が絡んでいることを示唆していた。一方Denuvo社のFischer氏は、この『鉄拳7』の問題については、「ゲームの複雑さに依拠したもの」であるとコメントしている。一方で、『ファイナルファンタジーXV』で疑われていたDenuvoによるパフォーマンスの低下については、ModderであるDurante氏の検証によると影響は見られないとされている。Denuvo自体にもさまざまなバージョンが存在することもあり、パフォーマンスへの影響が認められたり、あるいは認められなかったりと情報が錯綜している状態だ。ただ、影響があるかもしれないという可能性が存在すること自体が、一部の正規ユーザーにとって受け入れがたいものなのだろう。

ゲーマーから批判を受けながら、いまでも突破報告が相次いでいるDenuvo。“突破されるか”ではなく“いつまで守れるか”の文脈で語られることが多くなったが、Denuvo社自ら、同社の目標はクラックからゲームを守るのではなく、発売直後の売上を守ることであるとはっきり断言した。発売直後のタイトルを一定期間クラックから守ることで、不正入手をしようとしているユーザーにゲームを買うように促すことがDenuvoの目標であるようだ。海賊版を入手するようなユーザーは有料でゲームを購入しない傾向があるとしつつも、人々はしっかりとセキュリティ対策が施された製品であればお金を出したいと、多かれ少なかれ思っているはずであるとも述べている。

逆風の多いDenuvoであるが、先日クラッカー集団のリーダーが逮捕されたことも影響してか、ゲームがクラックされているか記録するデータベースサイトCrackWatch でも、まだプロテクトを破られていないタイトルが増えてきている。他のDRMと比較すると、直近のDenuvoの“割られていない”作品数は圧倒的に多く、ある意味では氏の言葉を裏付ける結果であるだろう。一方で、『Two Point Hospital』のように発売前にしてクラックされるDenuvo導入タイトルも少なくない(DSOG)。ゲームメーカーとDenuvo社のクラッカーとの戦いは、まだまだ続きそうだ。