UE4向け独自ツールとGoogleマップを使い、オープンワールドなイスタンブールの街の一部を6時間で再現。『The Sinking City』開発チームがテスト


ウクライナに拠点を置くインディースタジオFrogwaresは9月28日、探索型アクション・アドベンチャーゲーム『The Sinking City』の開発で使用しているツール「City Generator」の新たなデモ映像を公開した。このツールは、オープンワールドマップの制作にかかる期間の短縮を目的に、同スタジオがUnreal Engine 4用に独自に開発したもので、その名のとおり街の構築に使用するためのものである。今回の映像ではその実力をテストするために、トルコ・イスタンブールの街を8時間以内で再現することに挑戦している。

街のマップを制作するには、たいていの場合は道路に沿ってそれぞれの建物などを手作業で配置していくことになる。ただ、オープンワールドゲームの広大な街を作る場合、それでは膨大な日数がかかってしまう。そこでCity Generatorでは、建物の配置を自動化させる手法を取っている。まず街の道路をグリッドで引き、街の構成を決める。そして、どの通りがどのようなエリア(住宅街や工業地帯など)なのかを指定すると、あらかじめ用意しておいた建物のアセットが、それぞれのエリアに合わせて自動的に配置されていく仕組みだ。アセットのバリエーション制作もこのツール内でおこなえる。最終的には、思い描く街の姿に近づけるために、個別に建物の入れ替えや修正を手作業でおこなうことになるが、まず仮の街を短期間で制作できるという点がこのツールの強みだ。

今回イスタンブールの街を再現するにあたっては、まずファティ地区の中の0.57平方kmの小さなエリアからテストしている。利用するのはGoogleマップだ。その航空写真をテクスチャとしてUnreal Engine 4に取り込み、City Generator上でファティ地区の道路をなぞるようにして道路のグリッドを引きエリア指定をおこなう。そして、メインストリートや裏道などに合わせて道路の幅を調整し、さらに地形の高低を付けるなど細かい調整をおこない完了すれば、マップが自動生成されていく。マップを生成した後からも調整は可能だ。映像ではそのあと、再現する街のエリアをさらに拡大させていき、6時間ほど経過したところでテストを終了。イスタンブール全体を再現するには時間が足らなかったようだが、開発元FrogwaresはCity Generatorの実力を計るには十分な結果だったとしている。

今回披露されたCity Generatorのテストでは『The Sinking City』用のアセットが使用されたため、浸水被害に遭う陰鬱な雰囲気のファティ地区マップが出来上がったが、実際の街に合わせたアセットを用意すれば、より近い見た目のマップに仕上げることができたことだろう。開発元のFrogwaresは、『The Sinking City』をリリースした後にこのCity Generatorを無料で一般に公開する計画だ(どのような形式で提供するかは未定)。事前に建物のアセットを制作あるいは購入しておく必要はあるが、Unreal Engine 4ユーザーであれば今回披露されたような形でマップを生成でき、もちろんその後キャラクターやクエスト、シナリオなどを組み込んでゲームに仕上げることができる。また今回のデモでは、アーキテクトデザイナーのKaterina Frolova氏ひとりで作業をおこない、数時間で広大なマップを完成させた点も注目だろう。制作期間を短縮できるということはコスト減に繋がるため、小規模なインディースタジオにとって魅力的なツールとなるかもしれない。

『The Sinking City』は、PC/PlayStation 4/Xbox One向けに2019年3月21日に発売予定。作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが手がけた「クトゥルフ神話」の世界観から着想を得る本作は、1920年代のアメリカ・マサチューセッツ州に位置する架空の街オークモントが舞台となる。この街は謎の水位上昇に見舞われており、調査に訪れた主人公の私立探偵が、数々の奇怪な事件を追いながら真実に迫る(関連記事)。